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2-3-2

一戦目 柔術──局長 近藤勇、三番隊組長 斎藤一。

二戦目 相撲──四番隊組長 松原忠治、諸士調役兼観察 島田魁(しまだかい)

三戦目 乱戦──二番隊組長 永倉新八、各隊隊士二名。

四戦目 槍術──七番隊組長 谷三十郎、十番隊組長 原田左之助。

五戦目 剣術──副局長 土方歳三、八番隊組長 藤堂平助。

六戦目 剣術──総長 山南敬助(さんなんけいすけ)、一番隊組長 沖田総司。

七戦目 剣術──六番隊組長 井上源三郎、九番隊組長 鈴木三樹三郎。

八戦目 模擬──三番隊副組長 安芸里哉、五番隊 服部武雄(はっとりたけお)



「うわお……これはまた、錚々(そうそう)たる面々ですねえ」


「松平様の御前で、適当な仕合いなんかできるはずないだろう?」


まあ、それもそうか。と、私は素直に納得する。


と──。


「あ! 酷い! 何で私の相手、平隊士なんですかぁ!? この面子なら、出てくるのは五番隊組長の尾形さんじゃないですか!」


隣で対戦表を持つ沖田さんの腕を掴み、ガクガクと揺する。


「ちょっと……落ち着きなって──」


ばっと私の手を振り払った沖田さんは、五番隊の服部武雄という文字を指差す。


「服部さんはね、ボクや永倉くん、斎藤くんともしばらく打ち合えるほどの、隠れた腕の持ち主なんだよ。尾形さんは基本は学問を得意とする組長だからね。尾形さんは敢えて、服部さんを選出してきたってワケ」


──沖田さん達としばらく打ち合える?


「嘘くさい……」


「ホントだよ。服部さんが平隊士なのは、尾形さんの下でずっと仕えたい、という京都所司代時代からの、彼の信念ゆえ。そうじゃなかったら、腕一つでとっくに組長を任されてるよ」


「ふぅん……?」


彼がそこまで言うのなら、まあ信じよう。


その話が本当ならば、戦闘を得意としない尾形さんを相手にするよりかは確かに楽しめそうだし。


そんなことをつらつらと考えていると──、


「分かったのなら、ほら、刀取りに行くよ」


と、急に横から沖田さんに背を押され、私はつんのめるようにして、何度かたたらを踏んだ──。




私が沖田さんに連れてこられたのは、境内の片隅に積まれた、刀の山。


「え。コレ……使わなきゃいけないんですかぁ?」


「うん。稽古じゃないからね。なるべく実戦形式を取るんだけど、それでも真剣だったらほら、手練同士だと、白熱して万一ってこともあるじゃん? だから万一の際に大怪我をしないように、この刃引きした刀を使うんだよ」


私は適当に一振りの刀を拾い上げ──、


「あくまでも『大怪我』はしないってだけ、か……」


と、小声でボヤく。


いくら刃引きしていようと、多分コレで殴られたら内出血は免れないだろう。


「よく吟味して選びなよ? 服部さんは癖がある戦い方だからね。一瞬で負ける、なんてことも充分にある……というか、うん、初見での勝ちはかなり難しい」


「え……何でですか?」


彼がそこまで言うのも珍しい。


「服部さんは日本でも相当少ない、二刀流の使い手でね。普通に戦ってきた者にはあの太刀筋は厄介なものでしかないね」


沖田さんの言葉に、私は内心でほっとした。


二刀闘士──ディマカイルス。


ここではあまりいない、とのことだがローマの剣闘士には、二刀闘士はわんさかいたのだ。


ならば、対策も充分にある。


「事前に教えてくれてありがとうございましたー」


私は沖田さんへと礼を述べながら、良さげな刀を求めて、鉄臭い山を掘り返す。


「あ。もう始まるよ! 早く見つけて戻ってきなよ!」


たたっと駆けてゆく沖田さんを振り返ることもなく、私が最終的に見つけ出したのは、二振りの打刀だった──。





境内に戻ると、丁度一戦目が始まろうとしていた。


私は沖田さんに手招きされ、出場する組長達が集う一角で、彼の隣に腰を下ろす。


「一戦目から近藤さんと斎藤さんですかぁ……。何か近藤さん、ガタイ良いですし、柔術は得意そうですねえ……」


「うん。近藤さんはあの見た目通り、柔術は得意とするところだねえ」


のんびり眺めていると、試合開始の角笛が鳴った。──と思ったら、終わった。


「……は?」


私は己の目を疑い、何度も目を擦る。


逞しい近藤さんが、細身の斎藤さんへと掴み掛かり、組み合いへともつれ込む──こともなく、近藤さんがぐるんと回転し、地面に綺麗に叩き付けられたのだ。


「ははは、やっぱりかぁ。得意程度じゃ、越えられないのが才能なんだよね」


苦笑する沖田さんと、倒れた近藤さんへと無表情で手を伸ばす斎藤さんを見返し、私は「これだから天才は……」とボヤく。


常人の努力など、簡単に踏み越えて行くのだからたまったものじゃない──。




二戦目は相撲。──四番隊組長 松原忠治と諸士調役兼観察 島田魁の対戦だった。


松原さんは大薙刀を扱うのを得意とする屈強な組長なのだが、もう五十歳手前ということで、若干ではあるが、全盛期よりは体力が落ちているとのこと。


対する諸士調役兼観察の島田魁は──、


「え……あんな目立つの、ウチにいましたっけ?」


間違いなく六尺はある、縦にも横にも大きな巨漢に、私は目を瞬かせる。


「お。どうだ安芸、面白いだろ! 力さんは隊士達の見張り役……つまり表にあまり出てこない隊士だからなぁ。お前が見たことないのも仕方ねえな」


ひょいと頭上から覗き込んできた藤堂さんに、私は挨拶し──「力さん?」と首を傾げた。


「おう。力持ちだから力さんって皆から呼ばれてら。……おお、ほら見ろ、松原さんが飛んでった」


六尺大男に天才というワケでもない松原さんが相撲で勝てるはずもなく──、呆気なく四番隊組長は吹き飛んだ。


容保公に勝利を祝う褒め言葉を頂いている島田さんは、とても嬉しそうに、大きな身体を丸めるようにしてはにかんでいる。


──何だろう。ゴツいのに、少し可愛い。


何となくそう思った──。


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