とある宿屋の物語1
書き貯めてから投稿する予定だったのに、間違えて投稿してしまった粗忽ものです。
めちゃくちゃ出だしの途中なのに次は早くても明日以降です。
本当に申し訳ないてす…。
おれ、いぬ、
こいつ、おれのご主人。
耳の後ろ痒いのにとどかない。
ご主人がかいてくれた。
おれ、ご主人好き!
ここはある街の宿屋兼食事処。
きれい好きで力持ちな大将とおおらかで料理のうまい女将さんが営んでいる。
それから看板「犬」。
「じゃあ、行ってくる」
「はーい、気を付けてね!」
今日は大将は「犬」を連れて、街から大将の足で2時間程の森に狩りに行く。
ちょうど泊まり客が早朝に出発した商人達で一旦途切れたからだ。
「明日には帰るが、気を付けろよ。アインに声は掛けてくが。」
アインはふたりの幼馴染でこの街の冒険者ギルドのマスターだ。
若い時は、あとふたりと、5人でこの大陸のあちこちに行ったものだ。
冒険者とはいわゆる便利屋だ。
害獣の駆除や希少素材の収集から薬草の採取や農家の収穫の手伝いに子守まで様々な仕事がある。
それを一括で受け付けて、各冒険者に采配するのは冒険者ギルドの仕事だ。
冒険者個人に依頼することも可能だが、ギルドを通したほうが達成までフォローしてくれるので確実だ。
冒険者にとっても初めて行く場所のギルドでもそれまでの実績に応じて仕事を割り振ってもらえるし、依頼契約のトラブルも避けられる。
昼時、ギルドマスターのアインが律儀に昼食がてら様子を見に来た。
今日のメニューはチキンソテーのサンドイッチと野菜スープ。
チキンソテーは魚醤とはちみつを混ぜたもので味付けされていて、サンドイッチにかぶりつくと肉汁がじゅわっと出て皮目はパリッと焼かれているため香ばしい。
旅をした仲間のひとりが教えてくれた調理方法で、彼は照り焼きと呼んでいた。
確かに表面は照りが出て、なんとも食欲をそそる。
彼の故郷では使う調味料は魚醤ではないらしく、いつかはその調味料を再現したいといつも言っていた。
「ここで食事すると、ギルドで食べる出前が食べられなくなるな…」
普段は受け付けていないのだが、様子を見るために抜けてきてくれたアインのせいでギルドに詰めることになったサブマスターの為にサンドイッチを包んでもたせて、何かあったらすぐ知らせてくれと言うアインをギルドに帰らせた。
夜になったら依頼帰りの街の冒険者たちや近所の鍛冶場の職人などの常連達が酒を飲みながら食事をしに来る、大将が居なくても問題ないだろう。
もうすぐ閉門の時間になっても新しい宿泊者は来ていない。
今日は食堂の営業だけで良さそうだな、と思ったところに行商人と思しき二人連れが現れた。
やたらと大きな行李を背負った大男と目つきの悪い小男。
このご人相じゃ商人としてやっていくのは難しそうだな…と思いながら女将は二人に声をかける。
「お泊りですか?お食事ならしばらくそこで待ってもらいますけど」
二人は明日までの宿泊希望とのこと。
なんでも馬車を預けた先でここの宿を教えられたらしい。
今日はひとりだから泊まり客を回さないでほしいと伝えるのを忘れたようだ。
来てしまったものは仕方ない、女将はこの二人組を部屋に案内することにした。
「もういける?」
そこに当番上がりらしい衛兵たちがやってきた。
「大丈夫ですよ、ちょっと座って待っといてください。このお客さんたち案内してくるんで。」
そう言って二人組の方を向くと二人はもう階段の方に向かっている、
「どこが部屋だ?勝手に行くから鍵をくれ」
二人組はかなりのせっかちのようだ。
慌てて鍵を掴んであとを追いかけて2階に上がってすぐの部屋を使ってほしいと伝える。
ついでに食事はどうするか聞いたが二人はそそくさと上に上がってしまった。
「ありゃ、気を使わせてしまったかな」
そういう衛兵の声を聞いて、ああなるほど、その可能性もあるなと思い直した女将は2階に向けて食事がいるなら降りてきてほしい旨を伝えて衛兵たちの注文を取りにむかった。