ヒロイン視点
夕方頃に買い物を済ませて帰ってきたけど……。
兄さんの様子が変……。
珍しく自分の部屋じゃなく、リビングにいて……。
私のことをチラチラ見てくる……。
(別にやらしい視線じゃなくて……戸惑い? 何か聞きたいことでもあるのかな?)
「兄さん、何か用?」
「い、いや! なんでもない!」
「そ、そう?」
(とても、そうは見えないけど……目が泳いでいるし)
「まだご飯できないよ?」
「へっ?」
「お腹が空いたんじゃないの?」
「そ、そうなんだよ! な、何か食べようかな!」
「ダメよ、そんなことしたら夕飯が食べられないわ」
「そ、そうだよな! 俺——ちょっと走ってくる!」
「に、兄さん!?」
兄さんは慌てて、家から出て行った……。
「な、なんだろ? 友達がきたって言ってたけど……何かあったのかな?」
(確か、鈴木俊哉君だったよね……?)
「あれ? そういえば、初めて同じクラスになったけど……何処かで聞いたような?」
(何処で聞いたんだろ? ……思い出せないや)
その後、兄さんが帰ってきて……。
夕飯を食べたけど、相変わらず様子は変だった。
(ずっと挙動不審というか……心ここに在らずって感じかな?)
「兄さん、聞いてる?明日、理沙がくるからね?」
「……うん? あ、ああ、わかってる。じゃあ、俺は朝から出掛るよ」
「ごめんなさい、兄さん」
「いやいや、お互い様だよ。ご、ご馳走さまでした!」
そう言って、自分の部屋に帰ってしまう。
(……私、何かしちゃったかな? 好きかもしれないのがバレたとか?)
「ど、どうしよう? ……明日、理沙に相談してみようかな」
◇
翌朝……。
「兄さん、夕飯はカレーで良い?」
「ああ、良いよ。無理しなくて良いからね?」
(ほっ……いつもの優しい兄さんだわ。これなら相談しなくても良いかも)
「うん、そうするね」
「じゃあ、行ってきます」
「行ってらっしゃい」
兄さんを見送ると同時に……ラインがくる。
『ヤッホー! 今から行って良いー?』
『良いわよ』
『アイサー!』
(相変わらず、軽いというか元気というか……だからこそ、救われる部分はあるけどね)
そして、三十分くらい待つと……。
「お邪魔しまーす!」
「いらっしゃい」
「うわぁ……綺麗なお家だね!」
「私もそう思う。未だに……夢なんじゃないかって」
(兄さんと父さんには言ってないけど……お母さんとは、最初に話した。こんな良い家に住めるなんてって……私達は、普通のマンションすら住めなかったから)
「ありがたいね!」
「ええ、本当にそう思う」
「あのアパートじゃ、高校生の女の子一人じゃ危ないから心配だったもん」
「ふふ、よく泊まりに来てくれたよね?」
「そりゃね、色々と心配だったし」
そんな会話をしつつ、部屋に案内する。
「そういえば、篠崎さんっていうんだ?」
「ええ、私は変えてないけど……」
「まあ、女子は面倒だしね。それじゃ、男子の方が篠崎……篠崎?」
何やら、理沙が首を傾げている。
「どうかした?」
「どっかで聞いたことあるような……うーん……思い出せないなぁ」
(あれ? 中学も違うし、校舎も違うから知らないと思うけど……)
「き、気になるの?」
「へっ? ……あっ! そういうんじゃないよ! 大丈夫だよ〜とったりしないから」
「そ、そんなこと……うぅー……」
「あらま〜……一つだけわかったけど」
「な、なに?」
それまでのおふざけが一転して、急に真面目な表情になる。
「静香、アンタ……多分、彼のこと好きだよ」
「……へっ? な、なんで?」
「だって、見たことない顔してるもん」
「そ、そうなの?」
「うん。私に気になるのって聞いたとき……凄いエロい顔してた」
「ふえっ!? な、なに言うのよ!?」
(そ、そうなの!? そんな顔してるの!?)
「冗談だよ〜ただ、物凄く可愛い顔してたよ」
「も、もう! ……やっぱり、そうなのかなぁ?」
「私はそう思うけど……あとは、二人でいるところを見たいけど」
(ど、どうしよう? 兄さんがいるときに、家にあげるのはハードル高いし……あっ)
「じ、実は……兄さんと同じところでバイトも始めてて……」
「えっ!? 初耳だよ!!」
「ご、ごめんなさい。その……続けられるかわからなかったから」
「あぁーなるほど……うん、それはそうかも。てことは……」
「ええ、続けられそうなの」
(兄さんがいるし、店長さんも良い人だし、女の人も優しいし)
「そっか、そっか……良かったね。バイトはしたいって言ってたもんね。何処でやってるの?」
「ら、ラーメン屋さん……」
「……はい? 可愛いカフェとかじゃなくて?」
「え、ええ……」
「意外……男多くない?」
私は、その店について軽く説明をする。
「なるほど……女性従業員も多いし、変なのは出禁にしてくれるなら安心だね」
「ええ、みんなも言ってたわ」
「じゃあ、今度食べに行くね!」
「う、うん……頑張る」
すると、真面目な顔が崩れて……。
「ふふふ……この私が静香に相応しいか確かめてやるのさ!」
「ちょっと!?」
「えい! このお胸は私のだ!」
「きゃっ!? ち、違うわよ!」
いつものように飛びかかってくる理沙とじゃれあい……思う。
心配してくれる友達がいるって幸せなことなんだなって。




