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俺を振った女の子が義妹になった件について~すれ違う両片想い~  作者: おとら@9シリーズ商業化


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32/55

デート?

 食事を終えたら、一度ホテルに戻って商店街を歩く。


 俺たちは、親父と由美さんを二人きりにするため、別行動をとる。


「ふぅ……これで良しと」

「ふふ、そうね。二人して、私達と一緒にいようとするのよね」

「親父達も気にしなくて良いのになぁ」


(元々、二人で行かせる予定だったし……まあ、それはそれで俺の精神が死ぬけど)


「そうだね。家だと二人っきりには中々なれないもんね」

「そういうこと。だから、旅行くらいは気を使わなくて良いんだよ」

「ところで……兄さん、あれって何?」


 静香さんが指差す店の中には、とある台が置いてある。


(というか……あそこってもしかして……)


「ん? ああ、スマートボールだね」

「……すまーとぼーる?」


 静香さんが、首を傾げながら棒読みで言う……可愛いんですけど?


「あぁー……やってみる?」

「子供でもできるの? あれ、パチンコみたいだけど……」

「ププッ!? へ、平気だよ……あははっ!」

「兄さん?」


 冷たい視線が、俺に突き刺さる。


「ごめんなさい」

「むぅ……笑うことないじゃない」

「すみません」

「もう、良いわよ。ほら、いこ」


 ひとまず中に入り、席に着く。


 すると、腰の曲がったお婆さんが話しかけてくる。


「あら〜随分と若い子が来たわねぇ〜」

「こ、こんにちは」

「どうもです」

「……春馬君かい?」

「お久しぶりです、中田さん」


(道理で見覚えがあるわけだ。幼い頃、爺ちゃんに連れてってもらった店だ)


「知り合いなの?」

「どうやら、小さい頃に来たことある場所だったみたい」

「もう、八年くらい前かねぇ……あの子が、彼女を連れてくるなんて」

「か、か、彼女!?」


(なんつーことを言うんだ!?)


「そう見えますか?」

「ああ、お似合いじゃよ」

「ふふ、ありがとうございます」

「へっ?」


(ドユコト!?)


「ちょっと、まっとてえな……確か……」


 中田のお婆さんは、棚から何かを探している。

 その隙に……耳打ちをする。


「ど、どういうこと?」

「お婆さんは、色々な事情を知ってるの?」

「……知らないや。爺ちゃんが死んだことも、親が離婚したことも……」

「なら、このままが良いわよ。気を遣わせちゃダメよ」


(静香さんの言う通りだ……)


「それもそうだね。やっぱり、静香さんは優しいね」

「そ、そんなことないわ……」

「おやおや、若いもんは良いわねぇ」


 俺たちは、今更ながら接近し過ぎてたことに気づく。


「っ〜!」

「ご、ごめん!」

「う、うんん……」

「初々しいねぇ……これ、春馬君じゃけえ?」


 そこには、小さい俺と生前の爺さんがいた。


「わぁ……可愛い」

「ど、どうも……」

「そうねぇ……せっかくだから……ほら、おふたりさん」


 いつの間にか、カメラを構えた中田さんがいる。


「えっと……?」

「ねえねえ、撮ってもらおうよ」

「えっ!?」

「ここなら、誰もいないし……思い出になるかなって……お婆さんのね?」


(そ、そういう意味かぁ……びっくりした)


「そ、そうだね」

「ほら、おふたりさん、もっとくっついて」

「は、春馬君——えい!」

「はい? っ〜!?」


(なんで名前!? なんで腕を組んでるの!? うわぁ……なんだ、これ……柔らか)


「はい、チーズ……もう一枚……はい、チーズ……じゃあ、現像してくるけえ。適当に遊んでてなー」


 そう言い、中田さんは店から出て行く。


「な、何を?」

「だ、だって……恋人だって思ってるんだから」

「そ、そりゃ……そうだけど」

「なに? 私じゃ不満?」

「ええっ!?」

「ふふ、冗談よ。それで、どうやってやるの?」


(なんなんだ!? さっきから!? 何か起きてる!?)


 好きな子が甘えてきたり、好きな子が腕組んできたり……俺、死ぬのかな?

 いや、それとも、夢? いや、そうに違いない。


「そうか、俺はまだ起きてないんだ」

「兄さん? 聞いてるの?」

「イタイ!?」


 どうやら、ほっぺをつねられたようです……あれ? 痛い?


「夢じゃないのか……」

「なに言ってるの? ほら、教えて」

「あ、ああ……」


 お金を入れると、上の台からビー玉が流れてくる。


「そのレバーを引いて、球を弾くんだよ。こんな風にね」


 俺がレバーを引いてから離すと、球がピンボールのように飛んで、打ち込まれたネジに当たりながら下に落ちていく。


「十とか五とか書いてあるでしょ? それに球が入ると、その分の球が出てくるから」

「へぇ……面白そう」

「だいぶ、古いゲームだからね」


 そこからはレバーを引くスコーン言う音と、ガラガラというビー玉が流れてくる音と……。


「あぁ! もう少しだったのに!」

「むぅ……! なんで、入らないの!?」

「兄さんのは入ってるのに……」


 という、静香さんの言葉が聞こえてくる。


「ハハ……えっと、少し失礼するね」

「ふえっ!?」

「ご、ごめん! 手を触っても平気?」

「う、うん……」


(いかんいかん、俺は本物の彼氏じゃないんだって……)


 彼女の手を取り、レバーの勢いを調整する。


「このくらいで……離す」


 すると、ビー玉はネジに当たりつつも……。


「わぁ……入ったぁ!」

「こんな感じかな?」

「兄さん、ありがとう!」

「いえいえ」


(うーん……この旅行で大分印象が変わったなぁ)


 意外と子供っぽいというか……甘えん坊というか……。






 それから、結局一時間くらい遊んでいると……。


「おやおや、まだやってたのかい」

「あれ? もうこんな時間?」

「静香さん、夢中でやってたからね」

「だって、楽しいもん」

「えがったのう……ほら、写真できたえ」


 そこには、俺と静香さんのツーショット写真が撮れていた。

 俺はもちろん目を逸らしてるし、ガチガチになっているが……。

 静香さんも、上目遣いで心なしか顔が赤い気がする。

 これじゃ……まるで……。


「初々しい恋人のようじゃのう」

「ふえっ!?」

「えっ!?」

「ほほ、若い子はええの」





 その後、お礼を言って店から出る。


「「………」」

「こ、困ったわ」

「そ、そうだね」

「写真……一枚ずつ貰ったよね?」

「ああ、そうだけど……」

「……貰っても良い?」

「そりゃ、もちろん」


 俺が彼女に写真を渡すと……。


「えへへ……兄さんとの写真、大事にするね?」


 そう言って、写真を宝物のように眺めて微笑むのだった。


「そ、そう……」


 俺の心臓は熱を持ち——幸福感に包まれる。


それと同時に——鈍い痛みを伴う。


(……やめてくれ、勘違いしそうになるから)


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