第7話 異世界からの客人
「今度はなんですか。弾薬ですか、燃料ですか。燃料の方は原油を採掘できるということなので、やり方を教えたのでそちらで製造できるはずですが」
後藤は不機嫌そうな顔をしていた。
薄いシャツとズボンを履いていた。
「今日はまたおしゃれな服ですな」
とりあえず機嫌を取ろうとして、王は服を褒めた。
「これはパジャマです。寝る時に着る服ですよ。こっちの世界じゃ、午前3時で熟睡していたところだったんですよ」
後藤が不満そうに言った。
「それは、すまんすまん」
後藤は3年前に王女が事故で異世界に落ちてしまった時に、王女を呼び戻そうとして誤って召喚した一団の一人だった。
王女が異世界に行ってしまいパニックになった王は力のかぎり引き戻そうとして、誤った方向に力を使い関係ない異世界人たちをこちらに連れてきてしまったのだ。
その一団は異世界の警察の特殊部隊でSATと呼ばれるチームだった。
後藤は警察庁の役人でそのSATを視察中に一緒に召喚されたのだと言っていた。
「武器弾薬は足りている。ガソリンはこちらで生産できるようになった。後藤さんを呼んだのは、実はそちらの世界の若者を召喚しようと思ったからだ」
後藤の表情が変わった。
「まさか、魔王が復活したのですか」
「いや、違う。実は娘のアンが異世界人が好みらしいのだ。だから婿候補を何人か呼び寄せたいのだ」
「婿ですと!」
「そうだ。後藤さんを呼んだのは、いきなりそちらの世界から若者を召喚すると、誘拐だとか言われたりして問題になり、今のいい関係に亀裂ができること避けたいからだ」
「召喚されるとこっちで暮らすことになるのですか」
「婿に決まればな。候補からはずれて、帰りたいという者はそちらに帰す」
「うーん。確かにいきなり召喚され、行方不明者として捜索願が家族から警察に出されるとやっかいですな。また一度この世界に来たものが私の方の世界に帰り、この世界のことや、私と王の関係などをバラされても困りますな」
「だから、相談している。頼むよ。それにお礼のゴールドもはずむぞ」
後藤の目がキラリと光った。
異世界人はゴールドに弱い。
ゴールドはこちらではありふれた金属だ。
加工しやすく錆びないし、綺麗に輝くので装飾品に用いるが別に貴重なものではない。
だが、異世界人はこのゴールドが何よりも好きらしく、ゴールドを交換条件にすると何でもしてくれた。
今特殊部隊が使っている車輌も武器もみなゴールドと交換したものだ。
「わかりました。なんとかしましょう。しかし、陛下が要求していることは、こちらの国の国民を差し出せという大変なことだということは認識しておいてください。私の言っている意味はわかりますよね」
「もちろんだ。これまでにない量のゴールドで報いる」
「では数日ください」
「よかろう」
王は魔法陣を発動させて、後藤を異世界に戻した。