第78話 勇者復活の秘密
私はタケルと並んで王の謁見の間の中央にいた。
謁見の間は大臣や貴族や民衆の代表者たちで一杯だった。
タケルと私は王と王女の前に出た。
「勇者殿、アン王女、この世界のすべての者を代表して、そちたちに礼を言うぞ。よくやった」
私とタケルは頭を下げた。
割れんばかりの拍手に包まれた。
「さて、勇者殿、そなたはアンが辺境の村から救出したタケル殿なのか」
「はい。その通りです」
「魔王に火炎魔法で焼かれて死んだ後に、復活を遂げたというのだな」
「どのようにしてそうなったのかは、分かりませんが、死ぬ前は私はリザード族に舌を抜かれ、左手も斬り落とされていました。それが今このように元通りになっております」
「うむ」
だが王は少し首をかしげた。
「しかし、異世界から何人もの勇者候補を召喚したが、皆復活することがなかった。どうしてタケル殿だけが復活して勇者になったのだ」
王は横にいる相談役のアーリンに訊ねた。
「私はずっと勇者の復活の条件を文献で研究してまいりました。しかし、これという決めてはありませんでした。しかし、今やっと分かりました」
「分かったのか?」
「1000年前から、異世界から来た勇者の話は物語として語り継がれてきました。そして異世界恋愛ものが常にセットになっていました。私は、それを大衆娯楽だと思って軽視していました。そして王宮の書庫の奥底に眠る文献を研究してきました」
そこでアーリンは言葉をきった。
「でも、考えてみれば世界が滅びるかどうかの鍵となるような大事な情報を王宮の奥に眠る一冊しかない文献に委ねるでしょうか。それでは、もしも、その文献が消失したら終わりです」
「そうすると……」
「そうです。誰もが子供の頃から読み聞かされて知っている異世界勇者の物語に秘密があったのです。すなわち異世界から来た若者がこの世界の女性と恋に落ち、その愛の力が世界を救うという話です」
「なんと、異世界恋愛ものが我々に復活の条件を伝えていたというのか」
「はい。それなら失伝することがありません」
「だとすると」
「ええ、アン王女のタケル殿への愛と、タケル殿のアン王女への愛が、タケル殿を世界を救う勇者へと復活させたのです」
私はタケルを見上げた。
タケルは恥ずかしそうな顔をして頬を赤らめていた。
タケルの手を握りしめた。
「タケル、愛している」
「僕もだよ」
タケルが私にそっと言った。




