第75話 王都決戦 その2
「タケル! 危ない」
私は思わず叫んだ。
教会の壁に激突して倒れているタケルに、魔王が魔弾を撃ったからだ。
タケルの前に円形の魔法陣がいくつも展開した。
そこに魔王の魔弾が炸裂する。
幾重にも重なって展開された魔法陣が光り輝き、魔王の魔弾はそのシールドで爆発して消えた。
それは、あの夏の日に見た花火のようだった。
魔王の攻撃が止んだ。
タケルは無事だった。
「くそう、しぶとい奴め。だが防戦一方ではワシは倒せんぞ」
魔王がタケルを挑発した。
タケルが刀の切っ先を魔王に向けた。
「ほお、刀でワシを斬るつもりか」
魔王が笑った。
「無駄なことを」
その時、タケルが動いた。
前に踏み込んだ。
魔王の手首が落ちた。
小手が決まったのだ。
「なんだ」
魔王は手首が無くなった自分の右手を見た。
今度はタケルが胴を狙った。
魔王が飛び退いた。
「すごい、魔王の手首を一撃で落とすなど、さすがは勇者様だ」
王が感嘆して言った。
「タケル、あともう一息よ」
私の声を聞いて魔王が笑った。
「まったく人間というのは愚かで、身の程知らずだな」
魔王は右手をかざした。
タケルが斬った断面から手首が生えてきた。
「ハッハッハ、剣の攻撃などワシには効かぬ」
「そんな……」
私は再び不安な気持ちになった。