第65話 出撃
「まさか、異世界に来て96式に乗るとはな」
浅黒く日焼けをして精悍な顔立ちの異世界から召喚された勇者候補が言った。
「舘野さんの所属はどこですか」
「陸自の第一空挺団だ。もともとは東部方面隊だったが、今は陸上総隊所属だ」
「陸自の特殊部隊で日本版のグリーンベレーって言われているところですね」
「ああそうだ。君はどこだ」
「自分は警視庁のSAT隊員です」
「ほう、警察の特殊部隊か。それで階級は?」
「巡査部長です」
「俺は一等陸曹だ。お互い同じくらいの階級だな」
「よろしくお願いします」
「しかし、まさか本当に異世界があって魔王がいるとは思わなかったな」
「自分も驚きました」
「だがこの世界と日本とを結ぶ特殊なゲートが存在していて、この世界が魔王に乗っ取られると日本も危機になるのだとはな」
「自分もそういうのはアニメやラノベだけの話だと思っていました」
「だが、考えようによっては実戦で俺達の訓練の成果を試すいいチャンスだ」
「そうですね。日本にいたら弾の一発まで細かく管理されて、銃器を使うことなんて稀ですからね」
「それに、異世界にこれだけの装備が整っていて、しかもその大半が陸自の現役の装備なのには驚いた」
「自分もSATの装備があるのに驚きました」
「しかも撃ち放題らしいな」
「ええ」
「魔王とやらと手合わせするのが楽しみだな」
装甲車の中で、後藤の紹介で異世界から召喚された勇者候補は、そんな話をしていた。
「そろそろ、着きます。用意はいいですか」
「ああ、俺達はいつでも戦う準備はできている」
すると爆発音と大きな振動が起きた。
「どうした」
「魔王が魔弾をこの車輌に向けて撃っています」
「回避しろ、そして、適当な場所で私達を降ろせ」
「了解です」
ドーン
また爆発音がして車が揺れた。
「まさに戦争だな」
自衛隊員の舘野がつぶやいた。
ちなみに、陸自の装備の96式装甲車とは以下のようなものです。
挿絵代わりです。
https://rikuzi-chousadan.com/soubihin/soukousya/type96.html