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第63話 看病



「アン」


 父が私の横に来て肩に手を置いた。


「少し休んだ方がいい」


「大丈夫です」


「お前の方が身体を壊してしまう」


「……」


「なあ、アン」


「私のせいです。私が転移魔法を失敗して異世界に落ちなければ、タケルを巻き込まなければ、こんなことにはならなかった」


「お前のせいじゃない」


「いえ、私のせいです。異世界のどこにもいないのであれば、私がお父様に召喚された時に一緒にこちらの世界に来ている可能性も考えて、もっと早くにタケルを見つけていればこんな風にはならなかったはずです。私のせいです」


 私は思わず泣き出してしまった。


「この者が転移魔法でこの世界に来てしまい、放浪している間にリザード族に捕まったのは運が悪かったとしか言いようが無い。すべてが自分の責任だとして自分を責めるのはよしなさい」


 私は何も答えなかった。


 リザード族に捕らえられていたタケルを見つけると、すぐに私はタケルを王宮に連れて行き、医者を呼びあらゆる治療をさせた。


 タケルは左腕を斬り落とされ、舌を抜かれ、去勢されていた。


 医者はちゃんとした処置も消毒もしないまま切られて放置されていて、生きているのは奇蹟に近いと言った。


 だが、一度切られた腕や舌などは再生することはない。


 いくら手を尽くしても、元通りに治ることは無い。


 こんなことになったのはすべて私に原因があるのだ。


「タケル」


 私は枕元でタケルに呼びかけた。


 眠っていたタケルが目を開いた。


 私はタケルの右手を握りしめて、タケルに頬擦りした。


 ずっとタケルに会いたかった。


 だがまさか、こんな形で再会するとは夢にも思わなかった。


 私はタケルのそばを離れなかった。



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