第59話 辺境の村へ
「隊長、本当にこのところおかしいですよ」
「魔王が復活したのだ。おかしくても当然だろう」
「そうじゃありません。隊長は自分自身のことで何か悩んでいます」
「違う」
「嘘です。特に異世界から隊長のお婿さん候補が来てから、目に見えて隊長の様子がおかしいです」
まどかは食い下がった。
「もしかして、3年前に隊長が異世界で行方不明になった時に何かあったんですか」
「どうしてそのことを知っている」
「当たり前ですよ。だってこの車もこの銃も全部、その事件があったから私達が使うようようになったんですよ」
私が詠唱を途中で止めて、魔法が発動しかけた魔法陣の中に落ちて異世界に飛ばされ、父である王はパニックになり、私を異世界から呼び戻そうとした。
その時に誤って関係の無い警視庁のSATチームを召喚してしまった上、魔法陣の一部を壊してしまい。その修復に時間がかかり、私を異世界から呼び戻すのに1ヶ月を要してしまったのだ。
異世界から間違って召喚した警察庁の後藤と警視庁のSATチームも魔法陣の修復をしている間、こちらの世界で足止めをくい、その間に互いに協力し合う関係になり、武器や車輌の提供をしてもらうようになったのだ。
特殊部隊の隊員で異世界からの武器や装備を使うまどかはその経緯も知っていたのだ。
まどかがそこまで知っているのなら、今さら隠しても仕方なかった。
「実は異世界に1ヶ月いた時に好きな人が出来た」
「やっぱり」
「その人はいまどうしているんですか」
「分からない」
「でも、隊長なら王族として転移魔法陣を使える能力があるんだから、その人を召喚することも、その人の元に行くこともできるんじゃないですか」
「もうやった。けれども異世界のどこにもいないのだ」
「そんな馬鹿な」
「本当だ」
「魔法陣が不具合なのでは?」
「父は後藤や今回の婿候補をちゃんと召喚している。魔法陣に不具合は無い。相手が異世界にいて、その相手が定まれば、召喚できるはずだ」
「それじゃあ……」
まどかはその先は言わなかった。
私もその先は考えたくもなかった。
「隊長、着きました」
ジョンの声がした。
車が止まった。
まずオクトパスがマシンガンを手に最初に車から出た。
それに続いて私達も出た。
全員銃を構えて、警戒しながら車外に降りた。
「ひどい」
まどかがつぶやいた。
村は焼かれ廃墟になっていた。




