第54話 夏の終わり(The End of Summer)
それからビッグサンダー・マウンテンやスペース・マウンテンに乗った。
アンは絶叫系のアトラクションにすっかりはまったようだ。
だが、混雑してきたので待ち時間が短いイッツ・ア・スモールワールドに並んだ。
「これはどんなアトラクションなの?」
「異世界の縮図だよ。これに乗れば、アンも異世界のすべてが分かるよ」
「楽しみ!」
適当に説明をしたのだが、アンは本当に異世界見学ということで真剣に見た。
「ねぇ、人形が歌っている! あれは絶対に魔法を使ったんでしょ?」
「そうだね。魔法かもしれないね」
確かにこの夢の国には、来園者を魔法にかけてしまうような魅力があると思った。
それは異世界から来たアンに対しても有効だった。
すいていたので入ったカリブの海賊では、アンは海賊の亡霊を本当に怖がって、僕の腕にしがみついた。
カリブの海賊のアトラクションから出ると、アンはさっきまで泣きそうになっていたのに、もうケロッとした顔をしていた。
「あれは何?」
アンが立ち止まって訊いたのは、定番のポップコーンを売っているスタンドの前だった。
「ポップコーンだよ」
「それは何? この甘い香りはあれなの」
「そうだよ。食べてみる?」
「食べたい!」
ポップコーン売り場には行列が出来ていた。
「じゃあ、その辺で待っていて、僕が買ってくるから」
アンはカチューシャなどを売っているワゴンやショップなどを見て楽しそうにしていた。
僕はキャラメル味のポップコーンを買うと、アンの元に戻った。
アンが、甘い香りがするポップコーンを抱えている僕を見つけて手を振って笑顔を見せた。
すると、アンの後ろに紫色の光りが集まり始めた。
「何だ?」
それは広がりを見せて複雑な模様になった。
「ま、まさか、魔法陣?」
僕はアンのもとに駆けた。
アンも異変に気が付いたようだ。
「嘘?」
光に包まれてゆく自分の身体を驚いたように見ている。
「アン!」
アンが魔法陣に吸い込まれてゆく。
僕はポップコーンを投げ出し、アンに手を伸ばす。
アンが消えて、魔法陣の光が閉じてゆく。
僕は閉じてゆく魔法陣に思わず飛び込んだ。
目の前でフラッシュを炊かれたような閃光がほとばしった。
身体がぐるぐる回る。
僕は遊園地のフリーフォールで地上に落ちてゆくような感覚を覚えた。
だが、そのフリーフォールはいつまでたっても地上に着かず、僕は底へ底へと落ちて行った。
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