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第52話 異世界の王女 ベーコンエッグの朝食を食す


 デコピンを食らった。


「イテテ」


 目を開けると部屋はすっかり明るくなっていた。


「ねぇ、朝だよ。早くディズニーランドに行こうよ」


 アンが僕の顔を覗き込んでいた。


「そんなネグリジェをいつ買った?」


 僕は思わず言った。


 というのも、アンはピンクのすけすけのランジェリーのようなネグリジェを着ていたからだ。


「忘れたの。原宿でこれも買ってくれたじゃない」


 そう言えば、原宿のランジェリーショップで何か買った記憶がある。女の子ばかりの客の中にいるのが恥ずかしくて、会計の時だけ店に入って買ったのを思い出した。


(あの時、買ったのがこれだったのか……)


 何も着ていないアンは何度か見たが、こういうシースルーのランジェリーのようなネグリジェ姿のアンを見るのは初めてだ。


 僕は思わずアンをベッドに押し倒してしまった。


「ダメだよ。これからディズニーランドに行くんだから。遅くなっちゃう」


「でも……」


「昨日の夜にタケルがしなかったのだから、今晩までおあずけ」


 アンが舌を出して笑いながら言った。


(まさか、昨晩すぐに寝入ったのは狸寝入りだったのか)


 だが、もう7時だ。


 比較的すいている開園時に行くのであれば、もう起きて支度をしないといけない。


 僕は身を起こした。


「しょうがないな」


「それともディズニーランドは止めて、ずっと今日はここにいる?」


 アンが僕を試すように言った。


(これはトラップだ。そんなことをしたらせっかくのこれまでの高評価が台無しになる)


 僕は、立ち上がった。


「朝食は何がいい?」


「いつものがいい」


 僕は着替えるとキッチンに立った。


 冷蔵庫からベーコンと卵を取り出し、食パンをトースターに入れた。


 フライパンにベーコンを入れ、十分に火が通り、ベーコンから油が出たところで、卵を割り入れた。


 カリカリになったベーコンで卵の周りを堤防のように囲んだ。


 トーストが焼き上がった。


 その上にカリカリのベーコンで囲んだ目玉焼きを乗せた。


 冷えたトマトを切り、イタリアンドレッシングをかけてちぎったバジルの葉を添えた。


 コストコで買ったオレンジジュースをコップに注いだ。


 アンが大好きな朝定食のできあがりだ。


 パンにはバターもマーガリンも塗らない。ベーコンから落ちる油だけだ。


 それに調味料は一切使わない。


 その分、ベーコンは上質のものを使う。


 しっかりスモークされて、脂に旨味が詰まっていて、塩味が効いているものだ。


 アンはすけすけのネグリジェからティシャツに着替えてもう席についていた。


「いただきまーす」


 アンはベーコンエッグをのせたトーストにかじりついた。


 卵の黄身までいきつくと、半熟の黄身とベーコンの脂が滴り落ちた。


 アンはそれを皿で受け止めて、皿の上の黄身と脂をパンの耳で拭って食べた。


 甘いオレンジジュースを最後に飲むと満足そうな笑みを浮かべた。


「やっぱり、タケルが作るこの朝ゴハンが一番美味しい」


「毎朝作ってあげるよ」


「やった!」


「アンのために、一生作るから」


 アンは最初、言葉の意味がわからないようでキョトンとしていたが、すぐに顔を赤らめた。


「もう、馬鹿」


「あれ、いらないの?」


「そうじゃなくて、急にそんなことを言うから……」


「好きだよ」


 僕はベーコンの脂でベトベトになっているアンの唇にキスした。


「もう」


 そう言いながら、アンはキスに応えてくれた。


 唇を離すと、アンは僕の胴に抱きついた。


「約束だからね」


「何?」


「一生、私に美味しい朝ゴハンを作ること」


「ああ約束する」


「ずっと私のそばにいて」


 アンは消え入りそうな声で言った。


 僕はアンを強く抱きしめた。




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