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第49話 異世界の女王 水族館に行く



「ねぇ、こわい。なんだか中が変な感じ」


「大丈夫、すぐに終わるから」


 王女は僕の手を握りしめた。


 誤解しないで欲しいが、事はまだそこまで進んでいない。


 僕は王女と2回目のデートをしているところで、スカイツリーの展望台に上がるエレベーターの中だった。


 急速に天空に向けて上昇するエレベーターの気圧の変化で王女は耳の奥の違和感を訴えてたのだ。


 エレベーターが無事に展望階に着き、外に出ると王女は驚きの声を上げた。


「なに、これ」


「すごいだろ」


 展望デッキからのパノラマの下界の眺めに王女は目を丸くしていた。


「ほら下を覗いてごらん」


 王女は足元の床がガラスになっているのを見て、「キャッ」と言って飛び退いた。


「大丈夫だよ。落ちたりはしないから」


「でもこわい」


 どうやら王女は高いところは苦手なようだった。


 僕にしがみついて離れない。


 それはそれで心地よいが、あまり怖がらせて後々のことに支障が出るのを恐れ、とりあず展望デッキを一周すると地上階に降りた。


「ふう」


 王女はソラマチに降りてきてほっとしたようだった。


「じゃあ、水族館に行こう」


 王女は動かなかった。


「どうしたの?」


「高いところにあるのならイヤ」


「大丈夫だよ。水族館はこのフロアにあるから」


 それを聞いて王女は歩きだした。


 僕は王女をすみだ水族館に連れて行った。


 さっきのスカイツリーの展望デッキとはうって変わり、王女はペンギンに大興奮だった。


 確かに可愛いと言えば可愛いが、僕にはペンギンの良さはよく分からなかった。


「ねえ、見て、お魚を食べている」


 王女は大はしゃぎだった。


 水族館はそんなに大きくなかったが、王女はペンギンの屋内プールから離れず、結局、1時間以上いた。


 僕は帰りに売店でペンギンのぬいぐるみを王女に買ってあげた。

 

「いいの? 本当に買ってくれるの」


 王女が喜びの声をあげた。


 夜、家に帰った後、僕は昨日の続きを期待して待っていたが、王女は僕の部屋に来なかった。


(具合でも悪くなったのかな)


 高所での恐怖の後遺症かと心配になり王女の寝室に行った。


 ノックしたが返事が無かった。


 ノブを回したがカギはかけていなかった。


 王女はもう寝ていた。


 ペンギンのぬいぐるみを抱きしめていた。


 僕は王女が風邪をひかないように、タオルケットを上にかけて、お休みのキスを額にした。


 そして起こさないようにそっと部屋を出た。


 今日はすっかりペンギンに王女を取られてしまった。




 そうして2日目のミッションもクリアした。


 明日はいよいよディズニーランドでのデートだった。


 そして、明日の夜は……。


 そのことを考えると眠れなくなった。


 僕は羊を数えた。


 だが数えているうちに羊の色が黒くなった。


 見るとペンギンだった。


 僕はペンギンを数え始めた。


 だが、それはもう夢の中での出来事だった。



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