第47話 異世界の王女 「それはデートをしてから」と言う
「あー、美味しかった」
王女は家に帰ると部屋着に着替えて、ソファーにもたれかかっていた。
部屋着はショートパンツとキャミソールだった。
肌の露出が多いので目のやり場に困った。
ショートパンツはやや大きめのボクサーパンツと言ってもよく、見ようによっては下着そのものだ。
キャミは細い紐で吊っただけの薄いものだ。
熱帯夜で蒸し暑く、お腹がパンパンなので、ウエストを締め付けられない楽なものでなおかつ涼しい格好を王女が選んだ結果、ある意味とても刺激的なビジュアルになっていた。
僕は、王女の隣に座った。
王女が身体を寄せてきた。
埋立地の公園で花火を見ながらキスした晩から、僕らの間でキスは解禁になっていた。
僕は王女の肩に手を置き、抱き寄せた。
そして唇を重ねた。
そうやって、リビングでキスをしながら抱き合っていると僕はもう抑えきれなくなって王女のショートパンツに手を伸ばした。
その手を王女はつかむと横にやった。
「それはダメ」
僕は塩をかけられたワームのようになった。
「ごめん」
こうやって同棲をしていて、キスまで許されたからと言って調子にのりすぎたようだった。
(そうだよな。彼女は異世界の王女だ。僕とそんな関係になれるわけないよな)
僕は身体を離した。
王女は僕のことを見つめていた。
(まさか、もうキスもダメとか、私の身体には触れないでとか言わないよね)
僕はブルーな気持ちになった。
「そういうことはきちんとデートをしてから。だって私達まだ、ちゃんとしたデートをしていないでしょ」
(はぁ????)
王女は僕に見つめられて恥ずかしそうに横を向いた。
(えっ、じゃあ、デートしたら、その後はそういうことアリってことなの?)
口には出さなかったが僕は動揺した。
(この発想はもしや……)
王女が、僕が剣道の稽古や夏期講習の授業を受けている間、家でネットフリックスで恋愛ドラマを観まくっていたことを思い出した。
(あれだ。コミックとかが原作の恋愛ドラマにありがちな、3回デートしたらHに進むとか、進まないとかいうあれか。つまりはネットフリックスの影響か?)
王女が少し恥ずかしそうな仕草で僕の手を握りしめた。
(ネットフリックス様、ありがとう。異世界のお姫様をよくぞ教育してくださいました)
僕はコホンと咳をした。
「そ、そうだったね。じゃあ、デートしよう。どこに行きたい?」
「原宿でクレープが食べたい。それから水族館にも行きたいし、ディズニーランドにも行きたいな」
こうして僕は王女とちゃんとしたデートすることになった。
そしてデートの後に待ち受けているものは……。
言うまでもない。
僕は期待ではちきれそうになった。
どこがという愚問は問わないでほしい。
まずは王女を満足させるデートをするというミッションをクリアすることが先決だ。




