第46話 異世界の王女 焼き肉の食べ放題にゆく
「タケル、シャワーあいたわよ」
王女はそう言いながら、バスタオルを胸のところで巻いただけの姿で、髪の毛をタオルで拭きながらリビングを歩いていた。
すっかり二人の生活に慣れて、今ではあられもない姿を僕の前にさらしても平気になっていた。
だが、そんな姿で歩かれて平気でないのは僕の方だった。
とりあえず、シャワーを浴びに風呂場に行った。
午前中の剣道の試合で汗だくだった。
僕はボディーソープをタオルに含ませて、体中に泡を塗り汗を流した。
リビングに戻ると、王女は水色のコットンのカットソーに白のパンツに着替えて僕のことを待っていた。
「ねぇ、お肉食べに行こうよ」
「ああ」
王女はもちろん約束を覚えていた。
僕は王女をスクーターの後ろに乗せると、焼き肉店に行った。
店に入ると、僕は一番高い和牛の霜降りのカルビが食べ放題のコースを頼んだ。
顧問の軍資金があるのでここの高級和牛食べ放題に来たのだ。
霜降りの和牛カルビが来ると、僕は肉を網に乗せた。
「これで焼くの?」
「そうだよ」
僕は銀色のトングで肉を裏返した。
さっと両面を炙ると王女の取り皿に盛った。
「さあ、食べてみて」
王女は肉を口に含んだ。
「なに、これ、本当にお肉が舌の上で溶けるみたい」
「だろう」
僕は肉を追加注文して、ひたすら焼いた。
ステーキハウスのシェフがカウンターの客に肉を焼いているような状態だ。
たまに少し焦げた肉を食べるくらいで、肉を焼いては王女の取皿に置いた。
王女は焼き肉がいたく気にいったようで、巣で口を開けて鳴いている雛鳥のように、口をパクパクさせて僕が肉を焼くのを待っていた。
霜降りカルビを4皿ほど焼いた後は、網を交換してもらい、タン塩を焼いた。
王女は最初は薄くスライスした牛タンを不思議そうに見ていたが、僕がタンをさっと炙り、レモン汁で食べるように言って小皿に置いたら、またたく間に食べてしまった。
「これ、お代わり」
王女の目尻が幸せのあまりにたるんでいた。
そうして、ひたすら肉を焼いて食べさせた。
その後は、サイドメニューやデザートタイムだった。
これはタッチパネルで王女に好きなものを選ばせた。
肉だけでなく何でも注文できることに王女は驚いていた。
制限時間まで僕らは食べまくった。