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第43話 異世界の王女、剣道の試合に出場する。 その3



「そんな無理ですよ。彼女は古流剣術なので、型稽古しかしてないから試合なんてできません」


「いや、防具をつけて立っているだけでいい。ここまで頑張ってきた佐藤や田中や大島や神崎に試合に出てもらいたいんだ。アンさんは大将で控えているだけでいい」


「でも、防具はどうするんです」


「お前のを貸せばいい」


「無理です」


 僕は午前中の男子の部の試合に出て、面は蒸れて汗だくになっていた。


「僕の汗で臭いです。彼女がそんなものつけるわけがありません」


「いいよ」


「えっ?」


 僕はぎょっとして声の主の方を振り返った。


「だから、いいよ。私は気にしない」


「待って、この季節の剣道の防具って本当に汗で臭いんだから、絶対に無理だって」


「でも、それタケルの体から出た匂いなんでしょ」


「まあ、そうだけど……」


「なら平気。だって、私、初日からタケルの臭くて匂うのを体にかけられて慣れているから」


「ああああああああああああああああああああああああああああああああああああああああ」


 僕は耳を塞いで叫び声をあげて、彼女の発言にジャミングをかけた。


「おい。ちょっとこい」


 僕は顧問に耳たぶをつかまれて柱の奥に引張込まれた。


「お前、何か俺に話すことないか」


「いえ、何も……」


「まさか、不純異性交友とかしていないよな」


「めっそうもない」


「さっき、外交問題がどうこうと言っていたな。外国の王族にセクハラとかをしたらどうなるんだ?」


「していません」


「じゃあ、さっきのは話は何だ。嘘もたいがいにしろ。彼女を試合に出せ。そうすれば、さっきの話は聞かなかったことにしてやる」」


 ピンチだった。


「実は、彼女は僕が、オ、オナ○○をしている時に……」


「何? 聞こえないぞ」


「オ、オナラをしている時に横にいたんです」


「なんだそんなことか」


 顧問がつまらなそうな顔をした。


 セーフだ。


 なんとかごまかせた。


「それ違うよ。でも、試合なら出るよ。タケルがやっていた剣道をやってみたかったの。防具がタケルの汗で臭いのは大丈夫。だってタケルのもっと……」


 いつの間にか王女が、僕の後ろにいた。


 僕は慌てて王女の口を手で塞いだ。


(お願いだから、それは言わないでー)


 顧問はにやりと笑った。


「これで交渉成立だな」


 こうして異世界から来た王女は千葉県の高校剣道の夏の大会の団体戦に大将として出場することになった。




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