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第39話 異世界の王女、回転寿司に行く



 僕は王女をバイクの後ろに乗せた。


 『はま寿司』はバイクで5分ほどのところにある。


 道路は空いていて、すぐに着いた。


 駐車場にバイクを停めた。


 街道沿いによくあるスーパーやレストランなどの商業施設が隣接して並び、広い駐車場があるロードサイドの店舗だ。


 王女はもの珍しげにあたりを見た。


「あれは何?」


「野球場とテニスコートだよ」


 道路をはさんで向こう側には浦安市中央公園があった。


 中央公園は、運動場が整備されているだけじゃなくて、春には桜の名所にもなる。


 僕らは、はま寿司に入った。


 ちょうど、ボックス席が一つだけ空いており、待たないですぐに座れた。


「さっきのドラマで観たのと同じね。すごい」


 王女は、自分が観たドラマと同じ場所に来たので感動しているようだった。


 多分ドラマは実店舗でロケをしたのだろう。


 そしてこうした回転寿司のチェーンはどの店も内装は同じだ。


 どこの店舗でロケしたのか知らないが、あのドラマのロケ現場が『はま寿司』ならそっくり同じはずだ。


 だが、そんな野暮な説明はせずに、僕は王女のためにお茶を入れて、前に置いた。


「熱いから気をつけてね」


「ねえ、どうしたらいいの」


「これで注文するんだ」


 僕はタッチパネルを操作して見せた。


「面白い!」


 王女はさっそくタッチパネルを触り始めた。


 食べたいものが写真で表示されていて、それを指で触れるだけなので、王女はすぐにオーダーができるようになった。


 王女は自分のオーダした皿が回ってくると歓声を上げた。


 オーダーしたのは「炙りえびマヨ」と「えびアボガド」だった。


 僕はまぐろとサーモンを注文していた。


 王女は「えびアボガド」を口にすると、「美味しい」と喜んだ。


 初めての寿司ということで、もっとハプニングを期待していたのだが、僕が寝ている間に、ドラマでいろいろ学習したのだろうか、堂にいったものだった。


 寿司のチョイスも、とても昨日異世界から来たばかりとは思えないものだった。


 王女は続けて、鶏のから揚げと、カリカリポテト、そしてなぜか「旨だしたこ焼き」を注文した。


 鶏のから揚げとカリカリポテトでは間違いが起きるはずもない。


 王女は満足そうに食した。


「回転寿司に来て、から揚げにポテトフライとは、子供か」と突っ込みを入れたいところだが、まあ、そこには触れないでおくことにした。


 たこ焼きが来た。


 王女は笑みを浮かべて一個パクリと口に入れた。


 その後、顔をしかめた。


「甘くない」


 どうやら甘いパンケーキのような味を想像していたらしい。


 多分上にかかっているソースをチョコレートソースと勘違いしたのだろう。


「これはもういい」


 王女はたこ焼きの皿を僕に押し付けてきた。


 次は何を頼むかと思ったら、思った通りスイーツだった。


 王女はケーキやアイスを注文した。


 もうシメに入るのかと思いきや、スイーツでたこ焼きの口直しをした王女は、怒涛のごとく寿司を注文し始めた。


 まず、僕の真似をして、まぐろとサーモン、さらにたまご、はまちと定番ネタを注文した。


 卓上の調味料が気になっていたようで、いろいろ、少しづつかけて試し始めた。


 僕はそれを観察した。


 王女は一通り試したあと、レーンに流れている甘だれが気に入ったようだった。


 レーンから甘だれをごっそりつかみ取ると、その後は、はまちにもまぐろにも甘だれをたっぷりかけて食べた。


「それ美味しいの?」


 思わず訊いてしまった。


「もちろん。甘じょっぱくて美味しいー」


 王女は満面の笑みで答えた。


 でも、真似する気にはならなかった。


 とにかく、回転寿司は気に入ったたようで、帰るときには王女の前には食べた皿で塔が出来ていた。


 帰り道、バイクの後ろに乗った王女は僕の背中に甘えるようにしがみつくと「タケル、楽しかった。ありがとう」と耳元で言った。


 僕は王女のぬくもりを背中に感じながら、このままずっと走り続けていたいと思った。



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