第36話 異世界の王女、異世界転生アニメを見る その1
翌朝、午前6時過ぎに剣道部の朝稽古に行くために家を出るのを、王女は早起きして見送ってくれた。
朝稽古を終えると、その足で予備校に行き、夏期講習を受けた。
お昼過ぎに家に戻った。
僕はマックでセットメニューを買い込んで帰った。
家に帰ってみると王女がどこかに行ってしまい、いないのではないかと不安だった。
だが、王女はリビングのソファーにいた。
昼寝をしていたみたいで、眠そうな顔をして僕のことを見上げた。
買ってきたビッグマックとポテトのLサイズは、普通に美味しかったようで全部平らげた。
「芋を揚げた料理や、肉をパンではさんだ料理は私の世界にもあるけど、これは独特の味でなんだかクセになりそうね」
そいう言うと王女はストローでコーラの残りをすすった。
やはりマックは世界中で売れているだけのことはある。
異世界人にも好評だった。
朝のルーティンが終わると、午後からは自由時間だった。
本来は、その時間に学校の夏休みの宿題をやったり、夏期講習の予習復習をする時間割になっているが、これは母親向けに出した公式予定だ。
だが、夏休みの最初から真面目に学校の宿題する馬鹿はいない。
それに明日からは試合に備えて、朝稽古に加えて午後からの剣道部の練習も始まる。
自由になるのは今日だけだ。
「なにしようか」
僕は王女の方を向いて訊いてみた。
「あれ、もっと観たい」
王女はテレビを指さした。
(昨日もニュースを食い入るように見ていたな)
僕は急にあることを思いついた。
(異世界から来た本物の異世界のプリンセスに、異世界もののアニメを見せたらどんな反応をするだろう)
さっそく実行してみることにした。
スマートTVのリモコンのネットフリックスのボタンを押した。
画面にすぐにネットフリックスの赤い文字のロゴが映し出された。
僕はお気に入りのリストから定番の異世界転生もののアニメを選んだ。
「ねぇ、これ、面白いから一緒に観ようよ」
僕は王女に言った。
王女は期待で目を輝かせてテレビの前に座った。




