第31話 異世界の王女、サイゼで食す その2
「美味しい」
僕が取り分けた小エビのサラダと、プチフォッカに王女は舌鼓を打った。
さすが定番の人気メニューだ。
次にエスカルゴのオーブン焼きが来た。
「これは何?」
「食べてからのお楽しみだよ」
王女はエスカルゴをフォークで突き刺すと口に運んだ。
「美味しい!」
続けて2個めを口にした。
僕はスマホでカタツムリの画像を検索した。
「これ何の料理だか分かる?」
「分からない」
「これを調理したものだよ」
僕はちょっと意地悪をして王女を驚かせようとして、カタツムリの画像を示した。
「えええええええ」
王女はひどく驚いた。
「それが、こんな味の料理になるの?」
「うん」
王女はショックを受けたようだった。
僕は少しやりすぎたかと思った。
「ごめん」
「何が?」
王女はキョトンとした顔をして話を続けた。
「それにしても、ワームがこんな味になるとはね。やっぱり異世界は奥が深いわ」
「ワーム?」
「そう。その絵にあるような生き物はこちらの世界にもいるの。よく食べるわ。でも、こっちではワームって呼んでいて、殻が無いの。それにワームは生の状態で塩をかけて、少し溶けたところを食べるんだけど、こういう風に油や香味野菜と一緒に焼いたものは初めてだわ。とっても美味しいのでびっくりしたわ」
(殻の無いカタツムリって、まさかナメクジかよ。マジか。それを生きたまま塩をかけて溶け始めたところを食べるんですか)
僕は思わず想像してしまい、吐き気をもよおした。
「どうしたの?」
「いや大丈夫」
僕はもし異世界に行くことがあっても、決してワーム料理だけは口にすまいと心に決めた。
若鶏のディアボラ風が来た。
王女は肉にナイフを入れて驚いたようだ。
「柔らかいのね」
口にして二度びっくりという顔で、目が多幸感のあまり垂れ気味になった。
「このソースが格別ね」
(わかりますか)
僕は王女に喜んでももらえて何よりだった。
「何のお肉なの」
「これは鶏肉だよ」
「鳥が、どうしてこんなに柔らかいの? 私が食べていたのはもっと固いお肉ばかりよ」
「肉はどうやって調達している。雛から育てているの?」
「育てる? 肉は狩りをして捕るものでしょ」
それで納得した。
こちらの世界でも野生の動物の肉は固い。
走り回り筋肉が締まっていて余分な脂肪が無いからだ。
そうしているうちにミラノドリアが来た。