第28話 異世界の王女、ユニクロに行く その1
「こっちだよ」
ホテルやショッピングモールが立ち並ぶ駅前で、放心したようにあたりを見ている異世界の王女の手を僕は取った。
目指すユニクロはアトレの中にあった。
僕らは新浦安駅の駅舎と一体となった駅ビルの中に入った。
2階の一番奥にユニクロはあった。
「ここだよ。上から下まで何でも揃う。好きに見て、ほしい物を選んで」
王女は目を丸くした。
「こんなにたくさん服を売っているの?」
「ああ」
向こうの世界での洋服の流通事情はどうなっているのだろうか。
「そっちの世界では違うのかい?」
王女は頷いた。
「服は採寸して一着ずつ作ってもらうから店に置いてあるのはほとんどが見本なの。だからこんな風にできあがったものがたくさんあるのは見たことがないわ」
「サイズはいろいろあるし、試着室もあるから、自分の身体に合うものを選ぶことができるよ」
「試着って?」
「試しに着てみることだよ」
そこから、僕は1時間以上買い物につきあわされた。
王女には何もかもが珍しいらしく、一つ一つを手に取っては、吟味するので時間がかかったのだ。
結局、下着から靴までとりあえず必要なものを買った。
全部で紙の手提げ袋2つ分の量になった。
支払いは、庶民的なユニクロでもかなりの高額になった。
母親から必要な時にだけ使うようにと渡されていたクレジットカードをさっそく使うはめになった。
多分、母が帰国してカードの明細を見たら、どやされるだろうなと思った。
僕は会計を終わると王女を見た。
着古したよれよれのティシャツをノーブラで着ていて、下は中学の時の体育のジャージ姿だった。
それに100均のビーチサンダルという全部僕のお古で、王女らしからぬいでたちだった。
その格好で大きく膨らんだユニクロのショッピングバッグを両手に一つずつ持っている。
見ようによっては、夏休みに家出した若者のホームレスだ。
いや、普通に見てそうだ。
(いくらなんでも、異世界の王女様にこんな格好をさせたまま駅前を歩かせるわけにはいかないな)
「すみません」
僕は店員に声をかけた。
「あのう、今買った服に試着室で着替えることはできますか」
店員は王女の姿と買った商品が詰まった袋を見た。
一度にこれだけ買う客も珍しいだろうし、王女の格好は年頃の若い女の子には、どう見ても可哀想な姿だ。
(まさか、断ったりしないよね)
僕は店員の言葉を待った。
「いいですよ」
その店員が試着室に案内してくれた。
そしてハサミを取り出すと着る服のタグを取ってくれると言った。
王女が下着を取り出し始めたので、僕は席をはずすことにして、試着コーナーの外で待つことにした。
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