第26話 異世界の王女のクエスト
「その、言いにくいんだけど……」
(何、何、なんでも言って下さい。世界を救うんですか?)
「あなたに甘えて申し訳ないけど……」
(まさか、魂を差し出せっていうのじゃないでしょうね。でも世界のためなら仕方ないか)
「何でもかまわないから言って下さい」
僕は興奮を押し殺し、できるだけクールな雰囲気で言った。
「お洋服が欲しいの」
「はあっ?」
「ごめんなさい。私は王族だけど、世間の常識だけはあるつもりなの。勝手に家に落ちてきて、おねだりするなんて失礼よね」
僕は拍子抜けした。
(まあ、そうだよね)
「でも、下着をつけてないから、このズボンがゴワゴワとあたって……」
王女がモジモジして言った。
思わずゴワゴワと当たっているもののことを想像してしまい、僕はいたく興奮してしまった。
これはすごくヤバイ状況だった。
しかも完全犯罪もできる密室に二人きりだ。
王女にはちゃんと下着をつけて、服を着てもらわないと、どんな間違いが起きるかもしれない。
このままだと、ほんの少しだけ魔法を使える変な子が17才というまだ結婚すらできない年なのに出来てしまうかもしれない。
高校生で子持ちとか絶対に勘弁してほしい。
「分かった。服を買おう」
王女の顔が輝いた。
とは言え、どこで買ったらいいのだろうと思った。
僕にはこれまで彼女がいない。
それに姉も妹もいない。
だから女性の服を一緒に買いに行った経験はない。
しかも、王女は異世界人でこちらの世界のことは知らないはずだから、王女に任せるわけにもいかない。
「うーん。困ったな」
「やっぱりダメですか」
王女が心配そうに訊いた。
「いや、そういうことじゃなくて」
(まてよ。あそこなら何でも揃うか)
「よし、出かけよう」
僕は王女をユニクロに連れてゆくことにした。




