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第23話 魔法発動の条件



「異世界だと?」


「ええ」


「なぜここに、いや、異世界に来た」


「事故が起きたのです」


 彼女は王家しか使うことができない異世界への転移魔法陣の使い方を17歳になったので習うことになったが、その際に失敗して事故でここに来てしまったのだと話した。


「ということは魔法が使えるのか?」


 こう見えて僕は異世界ものには詳しい。


 彼女が言っていることが本当ならば、彼女は魔法が使えるはずだ。


「私達の世界では魔法が失伝したの。先の魔王との戦争で魔法を使える者が皆殺しにあい、文献は燃やされて、施設も破壊され、唯一残ったのが異世界移転の魔法陣なの」


(出たー、ご都合主義。上手いこと言い抜けたな)


 そう思ったが僕は口には出さなかった。


「でも転移魔法で異世界に来られるなら、何かできるはずだ。全くできないなんて不自然だ」


 異世界マニアの僕の追求は甘くない。


 魔法が失伝した世界から転移魔法で来たという自己矛盾した嘘は僕には通じないことを分からせてやるつもりだった。


 彼女は恥ずかしそうに頬を赤らめて下を向いた。


「その……、小さな魔物の一匹にすらダメージを負わすことができないレベルで恥ずかしいけど……」


(えー、まさかできるのー)


 声にならない叫びを僕のインナーヴォイスが上げた。


「それって、少しは魔法ができるってこと?」


 彼女はコクリと頷いた。


「でも、その前に……」


「なにか条件があるの?」


「ええ」


(キター。ここでドラゴンの牙とか、鳳凰の巣の一部とか、入手不可能なアイテムが魔法の発動に必要だとか言って逃げる気だな)


「言ってみて」


「何か着るものを貸して」


「へぇっ?」


「この格好では、魔法を使う時に布が落ちてしまって、また裸を見られちゃう」


 赤くなって彼女は言った。


 いやいや、もう一度、アンコールと叫びたい気持ちを抑えて、僕は「それはもっともだ」と答えた。


 タンスの奥から、サイズが小さくなって着れなくなった中学生の時のティシャツとジャージを取り出してきて彼女に渡した。


 ティシャツに古い紺のジャージという王女らしからぬ姿で彼女は戻ってきた。


「じゃあ、やるわよ」


 彼女は平然と言った。


「まずは火炎系からでいい?」


 彼女の瞳は輝いていた。




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