第19話 一人暮らしの夏休み
「ちゃんと野菜も食べるのよ。それから勉強もしっかりして、火の元と戸締まりは確認してね」
「分かっているよ。それより飛行機の時間は大丈夫なの」
母は時計を見た。
「そうね。そろそろ行かなくちゃね」
「気をつけて行ってらっしゃい」
「本当に大丈夫?」
「遅れるよ」
母は気がかりでしょうがないという様子でしぶしぶ出かけた。
それが3時間ほど前のことだ。
僕の父は外交官だ。現在単身赴任中だ。
学校が夏休みになり、母は父の所にしばらく行くことになった。
だが、僕はこの夏休み中、剣道部の試合がある。こう見えて僕は剣道2段で主将だった。それに大学受験のための夏期講習もある。そこで、僕は日本に残り、母だけが父のいる外国にゆくことになった。
僕は母に言われたように戸締まりを確認した。
玄関のドア、窓、全て鍵がかかっている。
マンションの14階だから、基本的に玄関さえ鍵がかっていれば侵入はできない。
玄関のドアにはチェーンもかけた。
(よし、これで万全だ)
僕は自室に戻ると、念の為、自室のドアの鍵も内側からかけた。
LINEをチェックした。
母から成田に着いて搭乗手続きを終えたというLINEがあった。
そして、しばらく連絡できなくなるとあった。
(これで夏休みの始まりだ!)
初めての一人暮らしだった。
しかも、夏休みの初日だ。
僕は、二重の開放感にひたっていた。
(そろそろ始めるかな)
渉の悲劇は頭に焼き付いていた。
あれから自分の部屋でもアダルト動画を見たりしていない。
だが、今日から家に誰もいない。
僕はスマホを取り出した。
久しぶりにアダルトサイトを開いた。
(ちょっとだけ自家発電するか)
服を汚したくないので裸になると自分のベッドの上で左手にスマホを持ち発電を開始した。
そして放電間近のときにそれは起きた。
天井からの女の子が降ってきたのだ。
しかも、その女の子はほぼ全裸で僕の腹の上にまたがっていた。