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第13話 王宮舞踏会 その3



「アン王女であられます」


 ファンファーレが鳴った。


 舞踏会の会場である王宮の広間の正面の大階段をアンは一歩一歩降りた。


 広間は人で埋まっていた。


 僅かな準備の時間しかなかったはずなのに、広間は飾り付けられており、料理も飲み物も豊富にあった。


 階段の下で父である王が待っていた。


「陛下」


「おお、アン王女、今宵はひときわ美しいぞ」


 父は満足げに言った。


「さあ、紹介しよう。異世界から来られた若者たちだ」


 アンは父が示す若者たちの方を向いた。


 表情には出さなかったが失望が襲った。


(そんなことあるわけないのは分かっていた。彼が召喚されて来ているなんてことあるわけないのよ)


 父は、一人ずつ紹介したが、アンの耳にはその声は届いていなかった。


 その後、一人一人とダンスをした。


 機械人形のようにただ踊るだけだった。


 何か話しかけられたが適当に相槌を打った。


 異世界人といることは苦痛だった。


 どうしても彼のことを思い出してしまうからだ。


 アンは大勢が集まる華やかな舞踏会の中にあって孤独だった。



「隊長~。楽しんでますぅ?」


 まどかが、壁の花になっているアンのところに寄って来て言った。


「うん、まあな」


 隊員と話すとドレス姿でもつい男口調になる。


「なんだか、隊長、寂しそうです」


「そんなことない。私のためにこんな盛大な舞踏会を開いてもらっているのだ。寂しいわけがないだろう」


「隊長、誰か好きな人がいるんですか」


「なっ!」


 言葉がうまく出ない。アンはまどかを睨みつけた。


「なにを言う。そんな者、いない」


「隊長、嘘ついてますね」


「嘘でない」


「まどかには分かります」


「まどかこそどうなんだ。あの異世界人たちに興味はないのか」


「何か違う気がするんですよね~。夫候補としても、勇者候補としても」


「何が違う」


「そう言われると分からないんですけど、彼らは本当に戦士なんでしょうか」


「知らん。父が勝手に召喚した奴らだ」


「ほら、あの方たちのことを奴らとか呼ぶなんて、つい本音が出ましたね」


「もう!」


 見るとジルが異世界人と踊っていた。


 ジルは頬を紅潮させて結構いい感じになっていた。


「ジルは上手くやっているな」


「ジルさんは姐御肌だから、ああいうどこか弱い感じの男性の方が、母性本能がくすぐられていいのかも知れませんね。でも私のタイプじゃないな」


「そうなのか」


 まどかはぼんやりしているように見えて、恋愛のことになると意外にしっかりしていた。


「何か飲みます?」


「いや、いらん」


「隊長もホントに困ったちゃんですね」


 ドレスを着て女の格好をしていると、まどかとは立場が逆転してしまう。アンはなんだかやりにくかった。


 よそに目を向けると、父や大臣の後ろに控えているジョンと目があった。


 まどかと一緒に壁の花になっているアンを見て、ジョンは、どこか安堵しているような顔をしていた。


「キャー」


 その時、突然、悲鳴が上がった。


 カーテンの中から、刀を持った男が現れた。




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