第9話 2つの太陽
(彼らは何か誤解をしている)
王は後藤がすべて説明済みで、十分に理解した上で異世界人が来るものと思っていた。
しかし、少し違うようだ。
もし、彼らが真実を知らされていないなら、彼らの反応も理解できなくはない。
後藤たちを誤って召喚してしまった時も、彼らは、自分たちが置かれた状況を理解するまで時間がかかった。
「若者たちを異世界に召喚したら、まず外を見せてあげて下さい」
そう言えば後藤は最後にそう言い残していた。
王は、単にこの世界を案内することだと思っていたが、それにとどまらない深い意味があるのかもしれない。
「諸君、こちらに来給え」
王は異世界から召喚した異世界人の若者たちを王宮のベランダに連れて行った。
ベランダの下には広場があり王都を一望できる。
王族が一般参賀をする時に用いる場所だ。
「おお、すげーな。本当の異世界の王都みたいだな」
「良く出来てるな」
「ヨーローッパにまだこんな中世の街並みがそっくり残っていたとはな」
若者たちは、ベランダからの景色に称賛の声を上げた。
「おい! あれ!?」
若者の一人が空を指さして叫んだ。
王は若者の指差す方を見た。
何も無い。
ただ太陽があるだけだ。
残りの異世界人もその方向を見て、驚愕した表情を浮かべた。
「ま、まさか、そんな……」
一人が膝をついて震えた。
(何を異世界人はそんなに驚いているのだ?)
王は、空を見上げた。
いつものように太陽が2つ輝いているだけだった。