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大魔王サイド~小娘からの挑戦状~

 朕は退屈していた。


 大魔王という存在になって、もう何千、いや億年を越えたかもしれない。魔界は常に朕のもとにあり、朕の働きによって成り立っていた。 

 日々忙しく、常に問題は起こり、頭の痛いことばかりだが、それはこれからも永遠のように続いていくのだろう。 

 神族のやつらは、魔界を嫌悪するわりには直接は関与してこず、地上を通して地味な嫌がらせをしてくるばかり。

 地上の生物はとても小さく、弱く、とても朕の相手になりそうなものはいなかった。


「……つまらん」

 呟いた声を聞くものはいない。

 否、聞いてはいるが、朕の言葉に異論を唱えるものはいなかった。皆、朕に忠実で、賢く、強く、そして真面目だった。ーーーゆえに、面白味にかけていた。


 最近、ふと、数百年前に朕が罰として地上に追いやった四天王の一体であるガイドルの姿を思い出した。

 あいつは強く賢いが、真面目ではなかった。そして朕に対しても生意気で、他と毛色が全然違っていた。朕はそこを気に入り、四天王において傍に遣えさせた。

 

 だが、朕の傍に置くと、その奇行が目に余った。

 放浪癖があるのか、すぐ仕事場からいなくなるし、朕の食べ物は容赦なく奪っていくし、無礼な言動も増えた。

 しまいには、朕の誕生日に嫁が作ったケーキというものにまで手を出しおった。地上のもので、魔力や生命体は入っていないが、とても美味しいものだと聞いて楽しみにしていたものを。

 それによって、朕が当時作っていたダンジョンの主として、ガイドルを地上に送ってやった。千年勤務したら魔界に戻してやると約束をして。


 最近、そんなガイドルを思い出したのは何故だろうか。ガイドルが魔界に戻るまで、あと約500年はあるというのに。


 そんな折、朕の周りに何やら薄暗いモヤのようなものが朕を囲いだした。

 吸いつけられるように何かに引っ張られ、朕の身体が歪み始めた。

「……これは……」

 朕は、すぐにわかった。

 これは召還だ。他の者が召還されていくのを見たことがあった。召還されると、その召還したものの言いなりになってしまう。

 まさか、この魔界の王を召還しようとするものがいるとは、思いもしなかった。

 神のやつらがこんなことをするとは思えない。

 では地上の者なのだろうが。

 大魔王を召還を考えるなど、ろくなものではないだろう。いつの世も、魔界のものを召還する者は必ずと言っていいほど、何かを破壊したいと願っている。国であったり人であったり。それが大魔王となれば、地上全てを壊して欲しいとでも言うつもりか。


 考えて。

 それも悪くないと思った。

 魔界のものは魔力や生命を食料とする。なので、地上の生物が一気に死んでしまったら、あとで飢えることも考えられる。ほどよく殺し、ほどよく食べる。それが大切なのだが。

 ーーーたまには、贅沢してもいいかもしれない。

 そんな考えが浮かんだ。

 朕は暇ではないが、退屈しているのだ。

 この召還の儀式。朕を召還するだけの威力はあるが、朕ならばこの召還を取り消すこともできる。

 だが、あえて、この召還の儀式に身を投じた。

 

 地上の1/3でも、壊してしまおうか。

 身体が歪み、次元を超えて移り行く中で、そんなことを考えていた。


※※※※※※※※※※※※※※※※※※


 召還され、それで生じるモヤが消えた時、朕は、地上のあまりの明るさに驚いた。

 神界は雲の上にあり、常に明るい場所と聞く。

 そして魔界はいつでも薄暗い曇り空の中にある。


 地上は、その中間くらいと想像していた。

 しかし太陽の下、目を細めずにはいられないほど光は眩しく、色が鮮やかだった。


 空は白い雲と、どこまでも高く通るような青。

 近くに見える山は濃い緑で、遠くの山は地平線と溶けるようにして佇んでいる。

 

 地面は魔界によく見かける、魔力も生命力も奪われてしまったあとの『無地場』と呼ばれるものではあった。

 ここで以前、朕と同じように召還した者がいたのだろう。近くのもののエネルギーが全て失われ、何の力もなくなったただの石は繋がって大きな岩になる。

 草は生えず、水もなく。

 ただひたすら、大きな岩と固い地面の続く、死んでしまった場所。

 魔界では、あまりの力のある者が周りのエネルギーを無駄に食い尽くすため、このような場所が点在する。


 そんな見慣れた場所のはずなのに、眩しい太陽と周りの鮮やかな景色のために、こんな地面でさえ輝いて見えるから不思議だ。


 ここが地上か。

 百聞は一見にしかずとはよく言ったものだ。


 朕は、自分でも思っていた以上に、少し浮かれてしまっていたのだろう。

 朕を召還するという輩に対する苛立ちも、薄れてしまっていた。

 地上にいて、なぜか清々しい気さえしている。


 ふと下を見ると、小さき少女がおもいきり朕を見上げて、空と同じ色の瞳で朕をしっかと見つめていた。


 輝く白銀の髪は太陽の光を浴び、唇は血を塗ったように赤い。胸元の宝石は小さいながらも紫が鮮やかで、着ている淡い黄色と黄緑の織り混ざった簡易的なドレスは、地上の人間であるくせに極上の質のものを使っている。

 地上の目映いものを全て身体に凝縮させたような少女だった。


 そしてその傍らにいる生物もまた、非常に興味深い。


 少女の左肩にいるのは、赤黒い身体に黄色の足の、鳥とも爬虫類とも言えぬ不思議な生物。その力はなぜか大部分封印されてしまっているが、神の力は失われていない。豆粒のように小さいものの、地上にいる数少ない神の僕、竜神だろう。


 そして少女の足元で踏ん張っているのは。


 ーーーー最近、夢に勝手に出てきた魔物。

 何百年か前まで朕の傍で呑気に働いていた、黄色と紫の珍妙な身体をした生物。


 ガイドル。


 以前は朕と同じくらい大きな体躯をしていたはずなのに、驚くほど小さく、そして弱くなってしまっている。

 ダンジョンの主を任せていたのに、なぜあんな姿になってしまっているのか。

 その姿にはさすがの朕も、驚いてしまった。


 それらの人物のうしろで、白い布を纏った女が立っている。金の瞳をした女だが、良くない色の気配を放つ。

 闇の住人と同じ毛色だ。

 朕を召還しようとした人物はこやつか。

 しかし、この女が召還者ではつまらなさそうだと思った。どちらかといえば、あの輝く少女の方が面白そうなのに。


【ーーー朕を呼び出したのは誰であるか】

 わずかな期待を持って、朕はそこにいるもの達に声をかけてみた。朕の言葉を直接聞くなとというこんな幸甚、滅多にないことであろう。喜びうち震えるが良い。


 白い服の女が、朕の声に平伏した。


「ーーーあなた様を呼び出した術者は、その身をもって願いを私に託されました」

 

 やはりこいつだったか、とわずかに落胆する。この女も人間にしては魔力は強いが、たかがしれている。その術者も大したことはなかったのだろう。

 朕を召還するために、呪いの力と神の作った『力を倍増させる技術』を合わせて使ったに違いない。

 

【呪いと神の技を合わせたか。まぁそうでなければ朕を呼ぶなどできまい。ーーー癪だが、召還された以上、願いを叶えなければ魔界には戻れぬ。言うてみよ、わざわざ朕を呼び出してまで叶えたい、その願いを】 

 女は地面に頭を押し付けた。

「ーーー大魔王様、ぜひこのリンドウ帝国の滅亡を」

 

 滅亡。その言葉を聞いただけで、朕は腹が立ってきた。大魔王という存在を呼び出すなど、それしかあるまいとわかりきってはいたが、たかがこんな地上を滅亡させるためだけに、朕を動かすとは。

 こんな場所の破壊など、魔界にいる高位の魔物であれば誰でもやれることだ。時間は朕よりはかかるであろうが。わざわざ朕を呼び出すほどではない。

 朕を何だと思っているのか。この国諸共、こやつをこの世から滅してやろうか。


 朕が苛立ちを覚えた瞬間、同時に鈴の鳴るような心地好い声が聞こえた。

「大魔王様っ」

 白銀の少女だった。

 鮮やかな少女は、こんな良い音を喉から鳴らすのか。


「……マイリントアを覚えておられますか?」

 聞いて、朕は頭の中で首を傾げる。

 マイリントアなど、聞いたことがない。

【マイリントアーーーとは誰か】

 すると、少女の足元にいる小さなガイドルが、非常に慌てた様子で少女を諌めていた。 

「リ、リーネっ」

 そのガイドルの身体は、リーネと呼ばれた少女におもいきり掴まれ、持ち上げられる。

「マイリントアは、これです。何百年か前に大魔王様の大切なケーキを食べて左遷された、四天王の1人ですわっ」

「ーーーリーネ!やめてくれ。ワレのこんな姿をっ」

 ガイドルはパタパタと足を動かしたが、少女の手からは逃げられずに宙を搔く。


 吹き出して笑ってしまいそうになった。

 

 あの飄々として生意気だったガイドルがあんなに小さくなって、しかもか弱い少女に首根っこ持たれて、少女の言動に一喜一憂して慌てているのだ。


 これは面白い。

 朕は、わざとガイドルを知らんぷりしてみせた。

【ーーー朕の怒りを買った昔の四天王のことはよぅく覚えておる。しかし、そのような小さき者など、知りようもないな】

 言っていて、少し笑ってしまったかもしれない。気づかれたかと思ったが、ガイドルはそれどころではないらしく、悲しそうに項垂れている。

「そんな……大魔王様……」

 ガイドルの悲しそうに呟く姿が朕の期待通りで、昔の恨みが少しだけ解消される。

 

 そしてリーネという少女は、まだ諦めていなかった。どうやら、白い女の邪魔をしたいようだ。

 次は左肩に乗っていた小さな生き物の首根っこを掴みあげる。

「では、こちらの竜神は知っていますか。この地上で何千年と生きている神の使いです」

 知っている、とは言いがたいが、存在していることは聞いていた。マグマはエネルギーの満ちた、美味しい生命体の1つだ。朕は忙しくて行けていないが、昔、魔族の間でマグマ温泉ツアーが流行っていた時期があった。

 そこの案内人が、赤黒い体に黄色い足の不思議な体型をした竜神だと聞いたことがある。


【ーーーふむ。噂は聞いておる。竜の形をした神の僕が地上を守っておるとな。しかし、そんな小さくて不細工な形のものが、地上とはいえ守ることはできぬだろう】


 わざと竜神もけなしてみせた。

 地上の神とも呼べる竜神がショックを受けている姿も面白かった。

 2体の高位生物を、ここまで虚仮(こけ)にできる人間はなかなかいないだろう。

 朕は少しだけ、目の前の少女に興味を持った。

 何がしたいのか全くわからないが、少女の考えも動きも予想がつかず、その上、誰よりも必死だった。

 朕はわざと、少女にも不機嫌そうにしてみせた。

【ーーーして、貴様は朕に何が言いたいのか。朕も暇ではないと言うたであろう】

 

 地上の物体は、とにかく脆い。

 朕が声を出しただけで地が震え、風が強く吹いた。

 少女はそれでも、めげることなく朕を強い光で見つめている。少女の目映いほどの鮮やかさは、見た目からくるものだけではなさそうだ。


【その白い服の女は、この国を滅ぼして欲しいと朕に申した。そのようなことならば、その気になれば1日もかからぬこと。人間に遣われるなどとんでもないことだが、破壊は朕も嫌いではない。容赦なく暴れてみせようぞ】

 

 そのつもりで地上に姿を現した。

 朕を召還するような奴の言いなりになるのは癪だが、腹いせに地上を壊して回ろうと考えていた。朕を実質的に召還したであろう白い服の女は、目映い少女に邪魔をされて不安そうにしていたが、朕が言うことを聞くと知ると、安堵した表情をしてみせた。

 

 しかし、少女はそれを望んでいないのだろう。

 か弱く小さな身体のくせに、全身でそれに抗おうとする。その瞳は、あまりにも蒼く、濃いエネルギーを放っていた。

 

「ーーーわたくしはーーー強いですわ」

 

 いきなりの少女の言葉に、朕は自分の耳を疑った。

 このか弱い少女が……強いだと?

 何を戯けたことを言うのか。

「ーーー伝説級の魔物であるマイリントアも。この竜神のリュージュも。このわたくしが倒しましたのよ。わたくしは強いのです」

 マイリントアとは、ガイドルのことだったな。

 なるほど、2体はこの少女の従魔になったのだろう。少女の力が解放されていないことで、2体とも本来の何十倍も弱く、小さくなっているのだろう。

 しかし、それだけ少女が弱いとも言える。


 少女は、ぐっと歯を噛み締めた。

「ーーーそう、大魔王様、貴方よりも」

 虚勢を張っていることはすぐに理解できた。それでも弱い自分を鼓舞し、震える身体を抑えて朕を睨みつける。

 自分を盾にしてまで、この国を守りたいか。 


【……なんだと、小娘】

 朕は小娘を威嚇してみた。魔界のものでも、朕が威嚇して怯まないものは少ない。だが、小娘はそれを正面で受け止めた。

 朕は少し驚く。

 そしてガイドルにもその視線をむけた。

【ガイドル。今の話は本当か】

 ガイドルはさすがに怯むかと思ったが、ガイドルは、朕から本当はちゃんと覚えられていたということがわかって、むしろ嬉しそうにしてみせた。そしてしょんぼりしていた顔が上がり、朕に口を開く。

「……大魔王様。嘘では御座いません。不意をつかれたとはいえ、確かにワレはこの小娘に負けました。そこの竜神もです。大魔王様より強いとはとても思いませんが……」

 ガイドルは唾を飲み込む。

「ーーー次第では勝つことはあり得るかと」

 ガイドルの言葉に、娘は感動したようで、涙を滲ませた。

「マイリントア……」

 

 こんな小娘が朕に勝つなど、あり得ない。

 それをガイドルも理解しているはず。それでも、ガイドルは娘の肩を持とうとしている。

 それほどに、ガイドルはこの娘のことを大切に思っているということか。 

 自分のことしか考えない生意気なガキであったガイドルが、他人のことを守ろうとするほどに成長したとはな。


 【ふ】と笑いが込み上げた。

【ふ、ふ、ふ、ふ……】

 笑いが止まらないほどに、おかしかった。

 あのガイドルが。

 竜神もそうだ。

 神族という存在も、くそ真面目で、頭が固く、自分達以外のものはゴミのように下にみるくせに。

【ーーーなるほど。魔族の四天王の1体と、神の手下の1体を従わせる小さき人間の娘か】


 娘からは殆ど魔力を感じなかった。どうやって従わせたかはわからないが、少なくとも、この娘の意思は強い。こやつらはそれに惹かれたのかもしれない。

 

【もう何百年も前とはいえ、朕の傍で遣えてきた者から、朕がこんな小娘に負けるかもしれないなどという戯れ言を聞くことになろうとは……】

 

 それは興味だった。

 これほどに小さい小娘が、勝てるはずもない大魔王に立ち向かおうとする。

 たかが1つの国のために、決して勝てない戦いを挑むという愚かさはあるものの、朕は、そういうやつが嫌いではない。

 少女の魅力は、鮮やかさだけではなく、その強い意思を宿す心にあるのだろうと確信した。


【ーーー小娘。お前の名は何と言う】

 朕が尋ねると、小娘は素直に名前を口にする。

「わたくしの名は、リーネ。ーーーーリーネ・アネット・グランドロスでございます」

 名前は大切なものだ。

 魔法にも祈りにも呪いにも、名前を含むことで強い作用をもたらす。

 簡単には教えてはならない。

 それを知らなかったのか、あるいはただ愚直なのか。

 朕はつい、笑ってしまう。

 朕は、その名に魔法で印をつけた。

【あい、わかった。リーネ・アネット・グランドロス。今、その名に鎖をつけさせてもらった。約束を守るまでは解けることのない鎖をな。もう逃げることは叶わぬ】

 

 朕に、ここまで大きな口を叩いたのだ。

 逃がしてなるものかと思った。


 ーーーこんな面白そうな玩具を。


【リーネ。お前の望み通り、この魔界の王である朕が、お前と戦ってやろうぞ。ーーー今すぐでもよいが、そのヒラヒラした服装では、ろくに戦えないであろう。そんな服装のために朕に負けたなどという言い訳は許さぬ。着替えて体調を整えよ。期限を1週間やろう。それまでにすべての準備をしてくるのだ】


 すぐに倒しては面白くない。

 魔族と神族の2体もいるのだから、少しは退屈をしない戦いができるやもしれぬ。

 今のところ、魔力の殆どない小娘に、朕と戦える要素は見当たらない。何か、それなりに対抗できるだけの方法があるのかもしれなかった。一瞬で終わる戦いに、何の楽しみがあるというのか。

 少しでも朕を楽しませてくれるのならば、わずかな時間をあげても良いという気になった。

 そのあと、地上の1/3を破壊して、大量の魔力と生命力を奪っても遅くはない。その力を貯蓄できるだけの新しいダンジョンをここに作ろう。

 

 資源を無駄遣いしたら、朕の妻が怒るからな。


 そう思っていたのに、小娘はガイドルとコソコソと何かを話している。気に食わなかった。

 朕はむっとして言う。

【正々堂々と戦わないのであれば、やはりここで決着をつけるか】

 小娘は慌てて、朕を見上げた。

「大魔王様の寛大なお心には、感謝いたしますわ。では、真の戦いに恥じないよう、しっかりと準備しておきますので、1週間、お待ちください」

 小娘の言葉に、朕は満足する。

 そう、退屈な朕を少しでも楽しませるように、全力で努力するがよい。

 朕は頷いてみせる。

【うむ。朕は、暇潰しに、この土地にダンジョンでも作っておくとしよう。1週間でどこまで作れるかはわからぬがな。ふ、は、は、は、は、は】


 そうして、朕は地下に潜った。

 

 地下に潜るとまた暗い世界に戻る。

 あの地上の明るさがまだ目に痛かった。

 そして、その中でもあの小娘の目映さが、今でもチラチラと目の前で見えるようだった。

 姿も魂も宝石のように眩しく輝く、小さな娘。

 その鮮やかさは、魔界にはない。

 キラキラ。キラキラと。

 あの中にいる黒いものの影も気にはなるが。あれはあれで面白いことに使えそうな気もする。

 1週間後、朕が勝ったら、捕らえて妻へのお土産にしてもいいかもしれない。

 あの小娘が魔界でも目映さを保てるかどうかは、連れていかないとわからないが。

 

 朕はまた思い出して、笑ってしまう。

「ーーーガイドルも、また珍妙な娘を主にしたものだ。あの娘が弱すぎたら、ガイドルの目の前で、あの小娘の魂を滅茶苦茶にしてやっても面白いかもしれんな」


 ガイドルはどんな顔をするだろう。

 深紅の血にまみれたあの小娘は、今より鮮やかに彩られて、きっと一瞬の美を朕に魅せてくれるだろう。

 小娘は今でもあれだけ鮮やかなのだ。必ず綺麗に花咲くに違いない。

「……面白いな。久しぶりに、心が踊る」


 朕は退屈だった。

 この先も退屈に戻るだろう。 

 せめて1週間後、ーーー少しは、彼らが楽しませてくれることを心から願うばかりだ。


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