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ノクトサイド~公爵子息と令嬢と皇子に挟まれる

「リーネ嬢が、、、生徒会に?」


 生徒会室。上座に位置するテーブルに座っているジル様が、両手を組んだ形で額を置いて、悩ましげに頷いた。

「そうなんだ。他者推薦第1位で選ばれてしまってね。まぁ私の可愛いあのリーネだ、至極当然といえば当然なのだけど、、、私はとても心配でね」


 金色の柔かそうな髪が揺れて、悩んでいる顔でさえ艶めいている。 

「あの子はこの学園に入るまで屋敷でしか過ごしていない。外に出ることができなかったからね。アラン皇子の婚約者である以上、皇后になる教育も受けているから、知識は人よりあるくらいだ。だが、、、生徒会はそういうものではないだろう?ノクト君」


 僕は、さっと敬礼する。

「生徒会は、学園全ての生徒がより良く学び、清く正しく有意義な時間を費やせるように補助するものであり、その心の隙間を埋めれるように努めるものでありますっ!」


 僕が生徒会に入って1年半。ジル様に言われ続けた言葉だ。

 にこりとジル様は口元を上げる。

「そうだね、ノクト君。その精神が生徒会の真髄であり、全てだ」

 だが、とジル様は続ける。

「リーネは、どうもそういう部分は得意ではない。今でこそ大人しくなったが、少し前までは人の心の隙間を作る方が得意だったくらいだ。ただ私達にもそれは原因がある。決してリーネだけが責められることではないが、、、」

 

 聞いた話によると、業務に遅刻したメイドの髪を焼いたり、リーネの前でリーネの悪行にため息をついた家庭教師の足を折ったりしたなどという、聞くも無惨な行為の数々のことだろうが、それを『心の隙間を作る』程度に話すところは、確かにリーネ嬢の家族にも問題があるのかもしれない。


「ーーーリーネに、生徒会が務まるだろうか」

 いつも堂々として自信に溢れているジル様のぐったりとした姿を見る日がくるとは。

 少し感慨深い思いも感じつつ、僕は曖昧な言葉で返答を濁してから、そそくさと生徒会室を離れた。

 僕はリーネ嬢に推薦の結果を伝えに行くのと同時に、生徒会室に案内するため、1年の棟に足を踏み入れ、リーネ嬢の元に向かう。


 1年の特別クラス。

 僕はすぐに、1年の棟の一番端にあるその教室の前の廊下に佇む白銀の長い髪を見つけた。

 窓の外を眺め、遠くを見るようなそのスカイブルーの瞳はやや憂いを帯びて輝き。

 1枚の絵画かと思うほど美しかった。


 本当に、これで魅力を1/10以下にされているなんて信じられない。

 今日もアラン皇子がリーネのためだけに魔法をかけているのだ。

 皇子の職務があるからと学校を休みがちだったアラン皇子は、リーネに魔法をかけるためだけに毎日学校に来るようになった。

 ただ授業はサボるため、生徒会室に来てはソファーで寝ていることも増えたけれど。

 少くともリーネによって学園を混乱させられたくないという気持ちはあるようなので、魔法を使ってくれているだけでも良心的と評価していいのだろう。


 そういえば、去年の生徒会推薦。

 本来は、アラン皇子が1位になる予想が出ていた。この国の皇子が特別クラスになったとして学園中の期待を集めていたアラン皇子は、自分が生徒会役員になりたくないばかりに、僕のそれまでの業績を大々的に宣伝して、いかに僕が優秀であるかをアピールしたのだ。


 この国の皇子がそこまで推すならば、よっぽどの人物だろうという噂が流れ、蓋を開けてみたら、僕が推薦1位になっていた。その時のアラン皇子の、僕を見るドヤ顔は忘れることができない。


 別に僕はこういう仕事は嫌いではないし、むしろ仕事をしていて楽しいから良いけど、あの件に関しては、あまり良い記憶としては残っていない。


 ひねくれもののアラン皇子とお転婆リーネ嬢か。

 ーーーーその二人が将来、皇帝と皇后になる。


 そら恐ろしいが、まぁ、ジル様や僕などまともな人がちゃんと傍で支えていたら、間違った方向には進まないだろう。

 僕がリーネ嬢のすぐ傍に近づくと、窓から目を離さないままリーネがにやりと笑った。


「ーーー狙うはノクト、、、ということね」


 狙う?

 鈴を鳴らすような可愛い声で、なんて恐ろしいことを呟くんだ。マイリントアか?マイリントアに僕を狙わせるのか?


「ぼ、僕がどうかしましたか?」

「っきゃあっ」

 恐る恐る僕が声をかけると、こっちが悲鳴をあげられてしまった。悲鳴をあげたいのは僕の方なのに。


 『狙う』ってどういうことだろう。

 大人しくなったというリーネは、本当は大人しくなったわけではないのでは。ただ陰湿なやり方を変えただけなのでは。


 僕のことをいつも『ノクト様』と呼ぶくせに、ノクトと呼び捨てにしたことも怖い。

 陰ではノクトと呼び捨てにしていて、僕の首をどこかで狙っているんじゃなかろうか。

 僕、何か悪いことをしたかな。

 

 とりあえず殺されないように、僕が有能であることをアピールして、まだ殺さない方向に仕向けなければ。


 僕はプリントをリーネ嬢に渡し、理論整然に生徒会の役員推薦について説明して、生徒会室にきてもらうように伝えた。


「ーーーっなっ」

 リーネ嬢は、せっかくの可愛い顔が崩れるくらい歪んだ表情をしてみせて、憎らしげに僕を睨んだ。

 いや、僕がリーネを生徒会役員に選んだわけじゃないんだけど。

 僕、もう死んだかも。


「生徒会室には、ジル様がお待ちです」

「まぁ、ジルお兄様が?わかりました。伺いますわ」

 リーネ嬢は、いつもの絶世の美貌に戻って微笑んだ。ありがとう、ジル生徒会長。


 リーネ嬢を連れて、別棟にある生徒会室まで案内する。

 生徒会室に向かう途中、中庭を通る。その花壇の並ぶ中庭を見ながら、リーネは何かを考えているようだった。


「ーーーノクト様」

「は、はい。何でしょうか?」

「この前の、沼の件。覚えていらっしゃいますか?」

「沼の?ええ、勿論です。僕も聞いて衝撃でしたからね。まさか『呪い』のためにそんなことを企む人がいるかもしれないなんて」

 

 呪い。僕は、呪うためのまじないは聞いたことがあるけど、そんな儀式があるなんて本当に知らなかった。人を何十、下手したら百以上の数の身体を使って儀式を行うなんて、信じたくないし、考えたくもない。


「その人はーーー何を『呪う』気なのでしょうか。人?国?それともーーーこの世界、、、?」

「世界???」


 僕は、聞いて少し笑った。


 伝説級の魔物を封印するための精霊を呼び出すだけで千人の魔術師の命が必要だったのだ。なのに、この世界をどうにかしようとしたら、何万、何十万の人の命が必要になるかもしれない。


 そんなこと、あり得ないだろう。


「想像の規模が大きいですね、リーネ嬢。呪うにしても、そのくらいの人間の数なら、個人、あるいはその一族を呪う程度ではないですか?世界なんて、とてもそんな大きなことは無理でしょう」

「ーーーそう、ですね」

 

 そうですねと言いながら、リーネ嬢の顔は晴れない。

 いきなり『世界』だなんて。

 僕は不思議に思う。


 まるでこの世界を1つの『物』として考えているみたいだ。それとも、そう考える何かがあるのだろうか。


「なぜいきなりそんなことを」

「、、、本来ここを歩く人物は、わたくしではないはずだと思うと、何か別の力が働いているような気がするのです」

「本来はリーネ嬢ではない?」


 リーネ嬢も、僕と同じように誰かに嵌められたのだろうか。

 あるいはリーネ嬢は自分を過小評価しているのかもしれない。自分に自信がなくて、生徒会役員に自分が務まらないと考えているのか。


 僕は、慰めるように微笑む。

「リーネ嬢の剣技、見事でしたよ。魔法の筆記も上位だったとか。リーネ嬢は選ばれるべくして選ばれたのです。自信を持っていいのでは」

「そんなことはどうでもいいのですわ」

 ぴしゃりと言われた。


 おおっと、外れたか。


 剣を持っているわけでもないのに、スッパリと斬られた僕は、心を傷めつつも平然としたふりをして、リーネ嬢と共に中庭を過ぎていった。


「ノクト」

 中庭を越えたところで、僕を呼ぶ声が聞こえた。

 聞きなれているはずなのに、心臓に響くような低めの美声の持ち主。

「アラン殿下」

「ちょうど良かった。お前にちょっと相談があって生徒会室に行こうと思ってたところなんだ。行かずに済んだな。あのスタジアムの、、、ん?」


 颯爽と現れたアラン皇子が僕に近寄ってくるが、僕の後ろを3歩下がってついてくる女性に気付いて、アラン皇子は足を止める。


「リーネ、、、?」

 なぜ一緒にいるのかと、僕とリーネ嬢を見比べている。少しだけアラン皇子の表情が険しい。

 リーネ嬢を振り返ると、アラン皇子を見るリーネ嬢の顔も歪んでいた。

 複雑だな、この関係。


「アラン皇子。リーネ嬢が今年の1年の推薦1位になったので、生徒会室に案内するところだったんですよ」

「リーネが推薦1位を?あぁ、まぁ、そうなるか。なるほどな」

 納得してくれて良かった。アラン皇子の機嫌も戻ったようだ。リーネ嬢の歪んだ顔からの、瞬時の愛想笑いは相変わらずだが。


「じゃあ俺も生徒会室に一緒に行くか。ノクトに相談があるからな」


 実にいいわけがましい。

 『生徒会室にいくところだったけど行かずに済んだ』のではなかったのか。


「ジル様も今日は生徒会室にいますよ」

 そう言うと、またアラン皇子の顔が険しくなる。

「最近忙しくてあんまり来てなかったくせに」

 舌打ちでもしそうな様子だ。その人を心の底から愛する妹が、後ろでものすごく睨んでますけども。


 元々、アラン皇子とジル様は仲が良かったのだ。

 なぜ急にジル様はアラン皇子に刺々しくなってしまったのだろう。

 リーネ嬢のことかと思っていたけど、アラン皇子とリーネ嬢が婚約したのは小さい頃だから、今更という気もする。

 温厚なジル様が理由もなくアラン皇子に怒るわけないので、多分アラン皇子が何かをしたんだろうとは思う。


 さぁどうする?

 予定通り生徒会室に行くか、ジル生徒会長との面倒臭い争いを嫌がって逃げるか。

 僕がアラン皇子の動向をじっと見ていると、アラン皇子は、やっぱり舌打ちした。

「ーーー行く。ジルにもスタジアムについて意見を聞きたいからな」


 行く、を選んだ。

 さすがひねくれてるけど負けず嫌いの男。

 ここぞという時は逃げない男だ。

 僕がアラン皇子を微笑ましく思って笑うと、僕の心を読まれたらしく、頭をごちんと小突かれた。


 生徒会室のある棟は、中庭からとある建物に入って長い回廊を進んだ先にある。

 しばらく黙って進んでいたところで、アラン皇子が口を開いた。

「リーネ。聞いた話によると、王都のはずれの森の中の沼でトラブルがあったらしいな」

「ノクト様からお聞きになったのですか?そうなのです。わたくしではなく、わたくしの友達が、ですけれども」 

 友達とはマイリントアでしょうし、多分、リーネ本人の話でしょうけれども。

 僕は心の中で真実を補正する。


「死人が動くというのは気味が悪いな」

「何に対する『呪い』なのかはっきりしないと落ち着きかないですわね」

「、、、王家に対する呪いでも、俺は驚かないがな」

 自嘲するように、アラン皇子は呟いた。

「アラン殿下。そのような」

 僕が窘めると、アラン皇子は僕に手を広げて制止する。

「いや、ここで上辺の話をしても意味がないだろ。本当のことだ。最近の父は明らかにおかしい」


 確かに皇帝は変わられた。

 前は、威厳らしいものは感じなかったけれど、ちゃんと帝国民を想い、残虐なことなどするような人ではなかった。なのに。最近は目に余る行動や命令が増えている。多くの民が飢饉や疫病で苦しんでいるというのに、そちらに目を向けず王宮で浪費に歯止めが利かなくなってきている。僕の父達や、その情報を聞いて早めの対処をしているアラン皇子の努力がなければ、国はもっと大変なことになっているだろう。


「今の父を呪う者がいる方がまだ良い。むしろ、『皇帝』が誰かを呪う可能性があることの方が問題だ。万が一皇帝の仕業だとして、他の国や国内の豪族に知れたら、とんでもないことになりかねない」

 

 隙を見せたら、他国が攻め入る口実を与えてしまう。

 ただでさえレジスタンスが活発化してきている今、内からも外からも攻められては、防衛できないだろう。また、今のリンドウの王権を狙っている人達も度外視できない。


「真の敵は隣人と言うわけだな」

 急に違う声がアラン皇子のすぐ後ろから聞こえて、つい身構えてしまった。

 アラン皇子の後ろから、ジル様がゆっくりと姿を現す。

「ジル」

「お兄様」

 

 ジル様が明らかな抜剣をしていなかったから良いものの、この国の皇太子の真後ろをとるなど、下手したら敵意ありと見なされかねない。

 それを知ってか、ジル様は自分からアラン皇子の真後ろにいたくせに、軽く両手をあげてアラン皇子に目を細めた。

 アラン皇子が鋭く睨んでいるのに首を竦める。

「そんな怖い目で見ないでおくれ。あまりに不穏な言動が聞こえてくるものだから、ちょっと警告しただけだよ。いつ誰がどこにいるかもわからないのに、そんな話を続けるものじゃないね。いくらここが、どこよりも安全な場所だとしても、ね」

 ジル様はリーネ嬢を優しく見る。

「我が愛する妹もいるんだ。出迎えついでの冗談だと思ってくれればいい」

「、、、笑えない冗談だが」


 実際、ジル様は転移魔法が使える。今回もその力で飛んできたのだろうが、人のすぐ後ろまで正確に飛べるとしたら、本気でジル様が敵に回った時、いつ寝首をかかれるかわかったものではない。


 ジル様は、そのままアラン皇子に背を向けて、生徒会室に歩き始める。

 騎士が背後を見せるのは信頼している証と言うけど。


 僕は少し緊迫した雰囲気の中、ちらりとアラン皇子を覗き見た。アラン皇子の顔はまだ険しいままだった。


 しかし、ここで争っても仕方ない。

 ジル様に続いて、僕達も歩き始めた。


※※※※※※※※※※※※※※


 たどり着いた生徒会室。

 来客用のテーブルにそれぞれついた。

 アラン皇子と僕。向かいはジル様とリーネ嬢だった。

 元々リーネ嬢に用があって呼び出したのだから、リーネ嬢とジル様が隣に座るのはどうかと思うのだけど、メンバーを考えると仕方ないのかもしれない。


「で。まずはアラン皇子の件から聞こうか?」

 ジル様はアラン皇子に向き合い、澄ました顔で問う。


 いきなり仕切りだしたジル様に、アラン皇子はまた少しむっとするが、相談を聞いてもらう身なので我慢したようだ。

 アラン皇子が少し大人になって、僕は嬉しい。


「、、、スタジアムの件なんだが。あの半壊になったスタジアムを3ヶ月で修繕しろと皇帝より命令が下った。3ヶ月を過ぎると弟のマルクが俺の代わりに着手するらしい」

「、、、それはまた、、、なんて愚かなことを」

 僕は思わず口に出してしまう。


 あのスタジアムを3ヶ月で直せるはずがないし、それを可能にするとしたら莫大な費用がかかる。

 国自体が貧窮しているわけではないが、税は軍の維持や橋や河川などの整備に使われるべきであり、無駄遣いなどをするお金ではない。

 ないならなくても良いスタジアムを、そんなに急いで作る必要もないのだ。


「マルクに任せるわけにはいかない。しかしお金も時間もない。何か良いアイデアを考えているんだが、なかなか思い付かなくてな。他の頭で何か思い付くことはないか、、、意見を聞きたい」


 アラン皇子は、真面目な表情だった。アラン皇子が珍しく弱気になっている。本気で困っているのだろう。なのにジル様は、ふ、と鼻で笑った。

「できないことに努力することぼど無駄なことはないな」

「なっ」

「ーーージルお兄様」

 僕は声を出してしまい、ジル様の肩ばかりをもつリーネ嬢でさえジル様を窘めるように言う。

 アラン皇子だけは眉間を皺を寄せるだけに留めた。

 

 ジル様はアラン皇子を見下すように言葉を続ける。

「そもそも出資者を募ろうにも、早急にスタジアムを直すことにメリットはない。むしろ、そんな愚かな出資でもしようものなら、先見の明がないと嘲笑されるくらいだ」


 確かに。

 

「マルク皇子が着手したら、アラン皇子にできなかったことが自分はできるのだと世間に広めれば、その一点のみでも大きなメリットになろうが、失敗例が先にない以上、アラン皇子がスタジアムを再建しようがしまいが、どちらもアラン皇子にはデメリットしかない案件だろうな」


 ジル様は、冷たくいい放つ。

「この件は、それを受けた時点で詰んでいるんだよ」


「で、でもジルお兄様、、、」

 リーネが言おうとした言葉を、ジル様はリーネ嬢に視線だけで制す。リーネ嬢は察して黙った。


「ーーーそれでも、3ヶ月でどうにかすると言うのなら、、、私にできることは、超一流の建築家を紹介するくらいだ」

「超一流の?」

「無駄な設計をせず、良いアイデアさえあれば低額で良いものが建築できるかもしれない。ただその人はとても気難しい人でね。彼が手を貸してくれるかどうかは、運次第かな」


 ジル様はそういって、住所とその建築家の名前をメモ紙に書き、アラン皇子に差し出した。アラン皇子はそれを素直に受け取り、ソファーから立ち上がる。

「感謝する」

とだけ言って、でていこうとするアラン皇子を、ジル様は声を低くして止めた。


「ーーーアラン。なぜ俺に、金銭面の話をしないんだ?公爵家ならスタジアムなんてすぐに建てられる資金がある。その相談はしなくていいのか?」


 アラン皇子はそれを聞いて、ゆっくりと振り返る。

 その目は、しっかりとジル様を見据えていた。


「、、、公爵家と金のやり取りは絶対にしない。友に対する、俺の意地だ」


 そういい放ち、アラン皇子はまた扉に向かって歩き始め、部屋から出ていった。


 アラン皇子がいなくなって、しばらく沈黙が走る。

 ジル様は少し苦笑し、困ったように自分の首の後ろを撫でながら、天井を仰いだ。


「アランはバカだなぁ。本物の、真っ直ぐな馬鹿者だ」

 ジル様は久しぶりに優しい瞳で、いなくなったアラン皇子に呟いていた。



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