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ずっと一緒に。異世界ライフ  作者: 江野喜けんと
第1章 やってきたのは裏世界?
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VSザクロヴァイス④


 「くそっ…ザクロヴァイスが隔離されたっ…あそこを通らないと逃げられないっ…どうしようどうしようっ…!」


エデンの1人、「正義」のネオキャドーカードを持つ男、騎千勇史(きせんゆうし)は研究センター内を右往左往していた。


 突然現れた久来と美月をザクロヴァイスに追わせ、自らも追いかけたが、久来たちの作戦にはまり、ザクロヴァイスは隔離されてしまったのだ。


 それから所在げなしにうろうろしていたが、ドームのゲートは厚く、召喚したニグラムでは破壊することすら叶わなかった。


 「くそ…このままここにいたら捕まるし…かといって戻る場所もないしっ….くそったれっ…何もかもうまくいかないっ…全部この世の中が悪いんだっ…」


 騎千は身勝手なことを言いながら壁を蹴って当たり散らす。


 騎千の手にある「正義」のネオキャドーカードは、ニグラムを召喚でき、仕舞って再び召喚できるいうもの。


 ただし、どんなニグラムを呼び出すかは騎千本人にも決められず、強力なニグラムは制御することもできない。



 エデンの中にあるネオキャドーカードの中では1番の失敗作と言われるカードだったため、騎千の手に渡ったのだ。


 騎千はその性格から、気に入らないことがあるたびに、街にニグラムを呼び出しては騒ぎを起こしていた。


 そんな性格だからか、社会とも折り合いがつけられず、エデンの中ですら爪弾き者にされていた。


 そして今回、ちょっと自分を馬鹿にした不良を痛い目に遭わせてやろうとキャドーを使用した結果がこれだった。


 マゼとシアが日本大陸を挟む様に出現してしまい、日本が大騒ぎになった。


 エデンはとっくに自分の仕業と分かって捜索しているだろうし、世間にバレてもただでは済まない。


 もはや日本を捨てて逃げるしかない。


 「そ…そうだっ、連中は全員ドーム内っ、ザクロヴァイスに気を取られている隙に空港まで!」


 「そうはさせないよ。」


 騎千がそう思って脱走しようとした時、背中に声がかけられる。


 そこには研究センターの人間らしき男と少女が2人、そしてその横には、


 「ひっ!? なっ、なんで!?」


 こちらの姿を見て狼狽する騎千を無視して薫は秋月に言う。


 「彼が今回の騒動の首謀者です。」


 「なんと…ここにいたとは…では私が…。」


 秋月がそう言って進み出ようとすると、薫が手を出して制した。


 「いえ、ここは私が引き受けます。これでも研究センターの従業員ですから。ドームにいる皆さんの援護をお願いします。」


 秋月は黙ってうなずく。


 「街は破壊し尽くされ、多くの人間が恐怖に追いやられた。そしてザクロヴァイス事件の首謀者とあれば、君を逃すわけにはいかない。」


 薫が立ち塞がるのを見て、秋月は戸惑う透子を引っ張ってドームへ向かった。


 「パパっ、私も戦うっ!」


 美月が薫に並び、キャドーを使って変身する。


 「美月…良いのかい?」


 「先輩たちが絶対にたおしてくれるもんっ、それに、もうパパを1人にするのは不安だしね。」


 「ははっ、信用ないなぁ…では、共に平和のために戦おうじゃないか。」


 薫が拳銃にキャドーコアの力を込める。


 「うぅ…! どきやがれぇっ! 俺の邪魔する奴はみんなぶちのめしてやるぅ!」


 騎千はキャドーを使用して巨大な蝶のニグラムを召喚する。


 美月は槍を構えて力を振り絞る。


 「先輩たち….がんばって…!」









 

 ギィィシャァァ…!


 「おとなしくしてぇっ…!」


 「おんどりゃぁあっ、くたばりやがれえぇ!」


 夕美さんが波動を放ってザクロヴァイスを攻撃し、音鬼がダイナマイトを降らせて援護する。


 2人が注意を引きつけている間に、俺たちは双葉さんの作戦を聞いていた。


 「そっかぁっ! 兄貴のキャドーはニグラムにも効くんだった! 何も倒せないなら食いもんにしちまえば一撃だもんなぁ〜。」


 美奈がこれはコロンブスの卵と言わんばかりに頷く。が、直が首を横に振る。


 「それは無理だと思います。先輩のキャドーには変換できる物質に質量の制限があったはずです。先輩、今はどれくらいになっているんですか?」


 「あぁ…確か…」


 俺は自分のキャドーを見ると、自身と同じ体重までの質量となっていた。


 「久来って体重どれくらいだっけ?」


 「あぁ…多分70キロくらいだと思う。」


 ギィィシャァァ…!


 奥で暴れ回るザクロヴァイスの質量はわからないが、10tトラックなどの比にならないことは火を見るより明らかだ。


 「ダメっすねぇ〜兄貴もっとデブってくださいよ。」


 「無茶を言うな。でも双葉さん、すいません….70キロ以上は無理みたいです…。」


 俺がそう双葉さんに言うと、双葉さんは菊さんの方を見て言う。


 「そこで彼女の出番というわけだ。」


 そうか、菊さんは確か、触れた物の質量を軽くすることができるんだ。


 「ザクロヴァイスの体重はどれくらいなんでしょうか?」


 直が聞くと、双葉さんはスピーカーを取り出した。


 「それは奥に行った瑠衣に調べさせている。…瑠衣、聞こえているね? 奴の質量は計測できたか?」


 ザザ…


 『はい。計測完了しました。ザクロヴァイスの質量は、約7000tです。』


 瑠衣さんからその様な報告が返ってきた。


 「姉貴〜それって兄貴との体重差ってどれくらいなんすか?」


 「7000tは700万kgだから…久来の体重の1万倍かな…。」


 「絶対無理じゃんっ!」


 「まあまあ落ち着きたまえ美奈君、そこで菊さんのキャドーの出番さ。触れるたびに質量を10分の1にするからね。」


 双葉さんが再び無線機を切って説明する。


 「ただし、私が触れて効果があるのは同じ対象に対して3回までですがね。」


 菊さんが補足で説明する。


 「7000tに10分の1を3回か…それでも7000kgだ…まだ足りないな…」


 直が言うと、双葉さんが続ける。


 「菊さんには別のキャドーもあってね、逆に触れた者の質量を10倍にすることもできるんだよ。」


 「おぉ、じゃあ兄貴が700キロになるんだなっ!それならいけるかもっ!」


 美奈は手放しに喜ぶが、直が横から聞く。


 「先輩、それ動けるんですか?」


 「まぁ、最後の1回をザクロヴァイス用に取っておいて、限界まで自分を強化すればギリギリ…。」


 12時を回る前に使用していた覚醒食の効果もまだ残っている。それにさらに上乗せすれば動けなくなることはないだろう。


 「でも、それでもまだ差があるわ。これ以上久来君の体重を増やすわけにもいかないし。」


 優子さんの言う通り、これ以上増やしたら俺は一歩も動けなくなってしまうだろう。


 「そこで考えたんだが、奴の両翼を切り崩そうと思うんだ。」


 双葉さんがその様に提案する。


 「両翼を…そんなことできるんですか?」


 直が見ると、ザクロヴァイスの翼は眼が潰されているため機能が失われているが、大きさはかなりあり、確かにあれを切り落とせれば体重に大きな影響を与えることができそうだ。


 「あれだけ頑丈な奴の羽を切り落とすなんてできるのか?」


 美奈の疑問はもっともだ。あれだけ戦って本体へのダメージはほとんどないのだから。


 「どうやら、あの羽は質量が重く、半分本体にぶら下がっている状態なんだ。それに加えて奴の羽の骨はさほど太くない。集中して狙えば折れないことはないと思う。」


 …となると、一応作戦はまとまったか。


 「じゃあ、奴の翼を切り落とせばほぼ勝ちってことだな?」


 美奈がそう言って全員がザクロヴァイスに向き直る。


 ギィィシャァァ!


 「うぅ…っ!」 「くそがぁっ!」


 夕美さんと音鬼がザクロヴァイスの攻撃で吹き飛ばされる。


 「よく耐えてくれた2人とも、後は私たちの番だ。」


 「私も混ぜていただきましょうか。」


 双葉さんがそう言うと、ザクロヴァイスの体に衝撃が走り態勢を崩す。


 「っ!?なんだ?」


 ザクロヴァイスの背後には透子と、知らないおじさんが立っていた。


 「あ…あなたはっ…!」


 双葉さんが驚いている様だが、俺にはよくわからなかった。


 「話は後にしましょう。奴の両翼を切り落とせば良いのですね。私もご助力させてもらいましょう。」



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