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ずっと一緒に。異世界ライフ  作者: 江野喜けんと
第1章 やってきたのは裏世界?
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禁断の力

 「くっくっく…あのお方のために…キャドーの英知の解明のために…ここで貴様らには消えてもらう!」


 上代がそう言って、ニグラムと共に光に呑まれていく。


 「なにをする気だ!?」


 「分からない、けどなんかやばそうっすよ!」


 「ニグラムとの融合だ…」


 美奈がそう言った時、薫さんが言った。


 「ニグラムと融合だと?」


 双葉さんがそう言うと、光が収まり、ニグラムが姿を現す。


 大きさは先程と変わらないが、甲羅に四本の角が生え、赤、青、茶色、緑の紋章が刻まれている。


 グォォォオオ!


 ニグラムが雄叫びを上げ、鉱山内を揺らす。


 「奴らはニグラムの力を、キャドーを使って人類に取り込ませる研究をしていた…。そして、人体とニグラムを融合させる力を持つネオキャドーカードを生み出した…。だが、あの力はまだ未完成…上代はもはや意思を失い、ただ破壊を繰り返すだけの存在だ、ゲホッ!」


 薫さんが直と美奈に支えられながら言った。


 「人間とニグラムを融合とは…何て恐ろしい事を…。」


 双葉さんが言うまでもなく、あの怪物と人間を融合させるなんて、危険極まりないことは想像に難くない。


 ゴォォオオ!


 ニグラムの片方の角から炎が、もう片方の角から竜巻が出現する。


 「…まずい!」


 両方の角から炎と竜巻が放たれ、広間に烈風が吹き荒れる。


 「直、美奈、薫さんを連れて鉱山を脱出しろ!」


 俺は薫さんを支える2人に言う。


 「なに言ってんだよ!? 兄貴たちはどうするんだ!」


 「俺たちは瑠衣さんが呼んだ助けが来るまで持ち堪えてやるさ。」


 「そんなこと」 「…美奈、行くぞ、早くしろ。」


 直が薫さんの肩を支えて立ち上がる。


 「直、お前本気かよ!?」


 「美奈、薫さんを助けられなかったら彼がずっと犯罪者ってことになっちまう。俺たちが証言しないと、ここに来た意味がない!」


 「…ちくしょう…みんな、死ぬなよ。」


 美奈は直に言われてもう片方の薫の肩を支えて立ち上がる。


 「大丈夫だよ、美奈ちゃん。私たちなら余裕だから、信じて待ってて。」


 綾が美奈に微笑む。


 美奈もそれに頷き返し、階段へと移動する。


 ゴォォオオ!


 ニグラムがそんな美奈たちに向けて巨大な氷柱を吐き出す。


 「ふんっ!」


 双葉がそれに炎のリングをぶつけてかき消す。


 「先輩、ニグラムの弱点は恐らく尻尾です。奴の力の流れが尻尾から来ているのが見えました。それじゃっ。」


 直がそう言って、階段へと消えた。


 「よしっ、みんな聞いたな? 尻尾だ、尻尾を狙うぞ!」


 「うん!」 「はい!」


 綾と美月さんが槍と剣を構える。


 俺も綾にもらった剣を構える。


 「久来君、あまり無理はするなよ? よく見たら傷だかけじゃないか。」


 双葉さんに言われる。上で戦った大男の時のダメージが色濃く残っている。


 「まぁ、気を付けますよ。俺だって死にたくありませんからね。」


 俺はそう答えて、ニグラムに向かって駆け出す。


 同時に綾と美月さんがニグラムの左右に散り、尻尾への攻撃を狙う。


 ニグラムは正面の俺と双葉さんに氷のブレスを吐き出す。


 「はぁっ!」


 双葉さんが光熱線をぶつけてブレスを相殺する。


 「うらぁ!」


 俺は目潰しの効果を狙って、ニグラムの顔を斬りつける。


 ゴォォオオ!

 

 ニグラムが首を振って俺を薙ぎ払う。


 「くわっ、くそっ、あんまり効いてないな。」


 「見た目通りの装甲なのだろう。尻尾以外は有効打になり得ないか…。私が正面を受け持つから、君も尻尾を狙いたまえ。」


 「はいっ。」


 俺は双葉さんに正面を任せて、尻尾を狙いに行く。


 その頃、尻尾に回り込んだ美月と綾。


 「くらえぇ!」「たぁぁぁ!」


 二人が剣と槍を尻尾に突き刺す。


 ゴォォオオォォォオオ!


 その時、ニグラムが雄叫びを上げ、身体を回転させて、美月たちを吹き飛ばす。


 「きゃっ!」


 美月が槍を取り落とす。


 「大丈夫!?」


 「えぇ、でも、尻尾が弱点で間違いなさそうですね。」


 ニグラムが角から巨大な土石を生み出し、綾と美月に向けて放つ。


 「おわわっ!」 「っと!」


 二人が土石をかわすと、ニグラムが勢いよく振り返り、口から炎を吐き出した。


 美月と綾は逃げるまもなく炎に包まれる。


 「あちちちっ!」


 2人は耐久値が残っているため、熱さはすぐに引いた。


 「ガラ空きだ!」


 俺はニグラムの尻尾を斬りつける。


 ゴォォオオ!


 ニグラムは大量の小さな土石を生み出し、広間全体に降らせる。


 「おわっ!」


 俺はステップを踏んでかわす。


 ニグラムは四本の角全てに竜巻を出現させ、四方に竜巻を放つ。


 「わわっ!」 「くっ!」


 全員が攻撃を中断して回避に専念する。


 「くっ、この!」


 双葉はニグラムに向けて炎のリングを放つ。


 しかし、甲羅にあたり、炎はかき消された。


 「くそっ、10000度にしたのに、なんて強度だ…!」


 ニグラムは双葉に向けて、口に炎を集約させる。


 「たぁっ!」


 その時、綾がニグラムの目に氷塊をぶつける。


 ゴォォオオ!


 ニグラムの口の中の炎は、攻撃が中断されたことにより行き場を失い、その場で爆発する。


 ゴォォオオ…


 ニグラムの口から煙が上がる。


 「ナイスだ綾!」


 俺はそのまま美月さんと尻尾に回り込み、再び尻尾に攻撃する。


 ゴォォオオ!


 ニグラムが再び大暴れして、すべての角から炎の竜巻を発射する。


 「みんな、ふせろぉ!」


 俺たちは一斉に地面に伏せ、炎の竜巻が土壁を破壊していく。


 竜巻が途切れたタイミングで再び立ち上がる。


 「しぶといですね…。」


 「他の部分に比べればそうでもないが、尻尾も相当固い。尻尾を一撃で斬り落とすぐらいの攻撃をくらわせれば一気に蹴りをつけられるんだが…。」


 ゴォォオオ!


 ニグラムが氷柱を大量に出現させ、俺たちに向けて降らせる。


 「この程度ならっ」


 そう思って避けようとした矢先、ニグラムが眼前に迫ってきていることに気づく。


 「しまった! フェイントか!」


 俺はニグラムの頭突きをくらい、壁に叩きつけられる。


 耐久値が残っていない俺は、ダメージをモロに受けてしまう。


 「先輩!」 「久来!」


 俺は朦朧とする意識の中、2人の声を聞き、身体を動かそうとするが、全く動かない。


 「くっ、このぉぉお!」


 双葉がニグラムに光熱を放つ。ニグラムは炎と氷を口に集約し、オーロラのブレスを吐き出し、双葉を吹き飛ばす。


 「ぐわぁぁぁあ!」


 双葉のカードに耐久値0と表示される。


 「ぐっ、くそ…」


 「ニグラムは双葉を無視して俺の方に振り返り、口から炎のブレスを吐き出す。


 …これは終わったか…


 「「たぁぁぁ!」」

 

 しかし、綾と美月さんが俺の間にたち、ブレスを受け止めようと踏ん張る。


 くそ…女の子に庇ってもらうなんて…情けねぇ…


 グウゥゥ〜


 その時、腹の音が鳴る。


 こんな時に、俺ってやつは…



 「大丈夫だ! 飯を食えばみんな笑顔になるんだからさ!」


 俺自身が昔言っていた言葉を思い出す。


 …ったく、昔の俺は現金だな…今ここで…飯食って…元気100倍で…みんなを助けられたら…


 『ならば…使え…我が力を…己の欲するがままに、目の前に転がっているではないか…さぁ…我が力の片鱗を引き起こすのだ…』


 「…え?」


 俺は頭に響いた声のままに、周りを見る。すると、意識したつもりはなかったが、手に触れていた小石をリンゴに変えていたらしい。リンゴが転がっていた。


 俺は、なんの気なしにそれをかじった。


 ドクンっ


 「?」


 身体が躍動するこの感覚、なんだ?


 俺はもう一度、小石をリンゴに変えてかぶりついた。











 「くぅぅぅうぅ!」


 美月は全力で槍から光線を飛ばして踏ん張る。


 私がここでやられたら先輩が…!


 その時、美月の服が元に戻る。同時に体に力が入らなくなり、その場に崩れ落ちてしまう。


 「美月ちゃん!?」


 「しっ、しまった…変身が…力が入らない…。」


 綾は1人で踏ん張るが、ジリジリと押されていく。


 もう後がない。


 綾がギュッと目を瞑る。





 ゴォォオオォォォオオ!


 その時、ニグラムが苦痛の叫びを上げて、攻撃が中断される。


 ニグラムの顔には、氷の剣が深々と突き刺さっている。


 「悪い、2人とも、助かった。」


 綾が振り向くと、先ほどまで瀕死だった久来がそこに立っていた。


 「久来! 大丈夫なの!?」


 「あぁ、心配かけたな。」


 「せん…ぱい…」


 「美月さん、よく頑張ってくれたな。あとは俺に任せろ。」


 ゴォォオオ!


 ニグラムが炎のブレスを久来に放つ。


 すると、久来は信じられないほど高く跳躍してそれをかわす。


 「綾、剣貸してくれ。」


 久来は綾から剣をもぎ取ると、ニグラムの尻尾へと駆け出す。


 ニグラムが久来へ攻撃を繰り出すが、久来は人間離れした動きで攻撃を軽々かわしていく。


 そして、ニグラムの尻尾を捉え、剣を振り下ろす。


 「終わりだあぁぁぁあ!」


 久来が振り下ろした剣は、ニグラムの尻尾を切断した。


 ゴォォオオ…


 ニグラムはぐったりと倒れ伏し、消滅した。


 そして、気絶している上代と、キャドーカードが転がっていた。





 唖然とする綾に久来が振り返る。


 「ありがとよ、みんな。やっぱ食いもんは世界を救うだな!」



 縁久来 第2キャドー覚醒



「覚醒食」 「食料変換」により生じた食料を食べ

      ることで傷を少し癒し、身体能力及び

      筋力、反射神経を100%上昇させる。

      持続時間は30分。

      ※このキャドーは常時発動する。





 

 

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