探索3日目
3日目の朝を迎える。と言っても2日間太陽の光を浴びてないからよく分からないが。
俺たちは起きて朝食を和気藹々とした空気の中食べていた。
「「うんめぇ〜!! 双葉さんのサンドウィッチうんめぇ〜!!」」
俺と美奈はバクバクとサンドウィッチを頬張る。
「…双葉さん、これなんのサンドウィッチですか?」
直が口を付けずに聞く。
「ニグラムサンドだ。」
「「ぶぶふううぅぅぅ!!!!」」
「ぎゃあああっ!! 私の服があああぁぁ!!」
俺らの正面にいた透子が絶叫。
「冗談だ。バジルソースに漬けたから緑色の肉になっているがただの豚肉だよ。」
「その下らない冗談のせいで私の服がお釈迦よ!」
「服なんかよりサンドウィッチが地面に落ちて無駄になっちまったじゃないか!」
「あなたが勝手に噴き出したんじゃない!」
俺と透子は顔を真っ赤にして喚き合う。
「う〜〜ん、朝からうるさぁい。寝起きに食べ物噴き出しシーンからの怒鳴り合いはキツいって。」
綾がクピクピとペットボトルの水を煽っている。
「美奈くんはともかく、久来くんは上手ければニグラムの肉だろうが関係ないと思ったよ。」
「俺は大喰らいなだけで奇食ハンターじゃないっすよ!」
わちゃわちゃとした朝食が終わり、みんなで昨日引き返した所へ進んでいく。そして例の地点に辿り着いた。
「昨日の作戦通り、背中合わせになって、互いの背後を守りながら行きましょう。」
「あぁ、了解した。」
透子はキャドーで姿を消し、キャドーコアの回収を開始する。
俺は直に背中を任せて、周りを注意深く観察する。すると、目の前に小さなものが飛んで通り過ぎる。
「っ、そこか!」
俺は反射的に、蚊を潰すかのように手をパンッと叩く。
手を開いてみると、手の中で小さい虫のようなニグラムがおり、消滅した。
「よし、倒したぞ!」
やはり敵は極小のニグラムだった。注意深く観察しなければ見えなかったわけだ。
パンッと背後の直も手を叩く。
「相手は複数いますよ。油断してたらやられます。」
透子はキャドーコアを袋に詰めていっている。…姿は見えないけど。
「っくしょ! 鼻に入った。」
美奈がくしゃみをする。
「めんどくさいなぁこれ。一気にやっちゃおうか。」
綾が氷の剣を手にかける。
「待て待て待て綾っ、全方位に斬撃飛ばしたら俺らもやられるっ!」
俺はそう言ってまた手を叩く。かなりの数のニグラムを潰したと思うが、まだニグラムの数は衰えない。
「ははははっ! 動画に起こしてみると中腰でパンパン手を叩いてすごく面白い絵面だ。」
双葉さんが笑いながらスマホをこちらに向けている。
「……なぁ、これって双葉さんが手入れをサボってるからこうなったんだよなぁ?」
「間違って双葉さんに斬撃飛ばしちゃっても仕方ない?」
「やめてくださいよ2人とも、手伝いって名目なんだから。」
キレかけた俺と綾を直が宥める。
それからさらに数分後、透子はあらかたキャドーコアの回収を終えようとしていた。
「もういなくなったか?」
俺は周囲の警戒をしながら言う。
先程から2、3分ほど、ニグラムの姿が確認できない。ついに全て倒し終わったのだろうか。
「…まだ少しだけ羽音が聞こえるっす……あそこっ!」
美奈がキャドーコアの上を指差す。
そこには赤い光が浮いている。ホタルのように、自らを発光させるらしい。
サイズは先ほどのニグラムと同じ。自らを光っているが、姿も先程から潰していたニグラムと同じ見た目をしている。
「先輩、どうやら親玉のお出ましのようですね。」
直が横から話しかけてくる。
「あぁ、みんな、これで最後だ。」
赤い光のニグラムが俺たちに襲いかかる。
俺は上体をそらして、ニグラムの突撃をかわす。
動きは他のニグラムよりかなり速いが、相手が光っている為、だいぶ見やすく、相手の攻撃をかわすのは容易かった。
「ふっ、ほっ、…あたらねぇなぁ。」
美奈が手を叩いてニグラムを潰そうとするが、相手の動きは非常に速く、ニグラムを捉えることができない。
「美奈ちゃんそこ退いて。」
綾がそう言うや否や線が走ったようにした見えない超高速斬撃を繰り出す。
赤い光は真っ二つになった。
「やったか……ん、先輩、まずいですあそこ。」
直が飛び回る斬られた2つの赤い光のニグラムを指差す。
飛び回るニグラムの体から何かを撒き散らしている。
「斬っても動いてるよ〜。アメーバかな?」
そう言って綾が目を細める。
…あれはなんだ? 撒き散らされたそれは、自分の意思を持ったかのように飛び回り始める。
「…もしかして女王ニグラム…? 子供産んでるみたい…。」
あいつを倒さないと、無限にニグラムを生み出されてしまうじゃないか。
そう思った時、赤い光のニグラムは、8の字を描きながら高速で回転し始める。
「…何をする気だ?」
すると、ニグラムは大量の虫ニグラムを生成し始める。
そして、沢山のニグラムが赤い光のニグラムを包み込んで集約していく。
「うわぁ…やばいんじゃないこれ?」
ニグラムたちは1匹の巨大なホタルのような形のニグラムに姿をかえる。
赤い光は消え、尾の部分には蜂のような巨大な針がついている。
「くっ、一気に強そうな姿になっちまったぞ!」
どう見ても手で叩いて倒せるような相手ではなくなってしまっている。
俺たちはキャドーガンを取り出す。
ニグラムは羽を高速で羽ばたかせて突風を起こす。凄まじい風が俺たちを吹き飛ばそうとする。
「っ、くそ!」
直が近くの岩に捕まる。
「うわっ!」
美奈と久来、綾は捕まるものがなく、吹き飛ばされてしまう。
「っ、面倒くさい…なっ!」
綾が吹き飛ばされ様に、氷塊をニグラムに向け放つ。
ニグラムが怯んで、突風が止む。すると、ニグラムが口を開く。
◇ ◇ ◇
ニグラムの口に光が集約していき、光弾がニグラムの口から放たれる。
「あぶねっ!」
直が身をかがめる。しかし、直が避けるまでもなく、光弾は直よりはるか頭上を通り過ぎる。
光弾は広間の入り口の壁にあたり、壁が崩れる。
壁の向こうには飛ばされた久来たちが。
「…先輩っ!大丈夫ですか!?」
直が瓦礫の向こうに話しかける。
「大丈夫だ。しかし、分断されてしまったな…」
向こう側から久来の声がする。
「俺たちが壁をどかす。お前はニグラムの攻撃から逃れることに集中してくれ。」
「…わかりました。」
「いいえ、それじゃダメよ。」
透子がキャドーを解除して姿を現す。
「瓦礫をどかしてる間にまたさっきの光弾を打たれたらキリがないわ。ここで潰すっ。」
透子が初めてキャドーガンを取り出す。
「まっ、向こうが悠長に待ってくれるわけないよな。」
直も腰に下げているキャドーガンに弾を込める。
ジュァァア!
ニグラムが2人に襲いかかる。
◇ ◇ ◇
…俺たちも攻撃に備える。先輩たちが来るまで、持ち堪えられれば御の字だ
ジュァァア…
ニグラムが針を尾から発射し、俺たち目がけて飛ばしてくる。
俺は横に飛び退いて針をかわす。針は洞窟の壁にぶつかり穴を開ける。
「透子、俺が奴の攻撃を引きつけるから、本体の攻撃を頼む。」
「わかったわ。しくじってやられるんじゃないわよっ。」
透子がキャドーを発動して姿を消す。
その間に、ニグラムは針を再装填する。
「また針か、その手は食わないぜ。」
俺は中腰になってニグラムの様子を注意深く観察する。
ニグラムは針を再装填した他に、口にも先ほど光弾を発射した時のような光が集約している。
針か光弾のどちらかを打って、回避したところでもう片方の攻撃を当てようというのだろう。
見た目は虫なのに中々の知能は持ち合わせているようだ。
次の瞬間、ニグラムが光弾を飛ばしてくる。
俺は咄嗟に姿勢を低くし、最小限の動きでそれをかわす。
威力は高いが、光弾はそれほど大きなものではなく、しゃがむだけでかわすことができるようだ。
そのまま続けて俺に針を飛ばしてくる。
今度こそ俺は横に飛び退いてかわす。
すると、ニグラムの体が斬り刻まれ、傷を負って針の再装填が中断される。
ギラリと空中に鈍い光りが見えた。透子はナイフでも持っていたのか…凄い切れ味だ。
しかし、ニグラムは再び大量の虫ニグラムを生み出す。すると、生み出されてニグラムたちが傷口に集まっていき、体の一部になって傷を塞いだ。
「攻撃しても虫のニグラムを取り込んで再生してしまうのか。再生しきれないほどに攻撃を続けるしかないのか。」
透子は攻撃を続けているが、ニグラムの再生速度は早く、攻撃が効いている様子ではない。
ニグラムが再び口に光を集約させる。先程より光量が増えている。
そして飛ばされた光弾を、俺は半歩ずれてかわす。
すると、続けざまにニグラムは光弾を飛ばしてくる。俺は飛び退いて二発目をかわす。
しかし、その次の瞬間に三発目の光弾を放ってくる。
「おわっ、やべっ」
俺は銃で相殺して光弾を防ぐ。
「っ…」
かなり強い衝撃だ。
ニグラムは相変わらず、攻撃を受け続けても悠々としており、俺に再び針を飛ばす。
俺は岩陰に隠れ、針が岩にあたり、岩は粉々に砕け散る。
「おわっ!」
その衝撃で俺は吹き飛ばされる。針の攻撃は、連射は効かないようだが岩をも砕く危険な威力。まともに食らったら流石にやばそうだ。
再び光弾を発射しようとするニグラムに、俺は正面から駆けだす。
ギシュュュァ…!
ニグラムが吐き出す連続光弾を、俺は最小限の動きでかわす。
そしてニグラムの真正面まで迫る。
「はぁ!」
隠し玉の綾先輩の氷剣を振り上げる。
すると、ニグラムの前足2本が突然刃物状に変化する。
「なにっ!」
ニグラムは二本の刃となった前足をクロスさせて氷剣を受け止める。
体を武器状に変化させることもできるのか…! 強い、こいつは間違いなく強敵種だ!
ニグラムは俺の攻撃を受け止めながら、口から光弾を吐き出し、俺は直撃を受ける。
「おわぁぁあ!」
俺は吹き飛ばされるが、追撃を警戒してすぐに立ち上がる。
カードを見てみると、耐久値55と書いてあった。
針よりだいぶ威力が劣るであろう光弾でもこのダメージ。これ以上の直撃は絶対に避けなければならない
ニグラムはそのまま、刃となった前足を体を回転させて振り回す。
「…!」
見えないが、透子は飛び退いて避けたようだ。
ニグラムは再び針を装填する。俺はそれを見て回避の態勢を取るが、ニグラムはすぐには針を発射せず、口から光弾を作り、針に光を帯びさせる。
「何をする気だ…?」
ニグラムはそのまま光を帯びた針を、俺に向けて発射してくる。
俺は横に飛んで攻撃を避ける。すると、針は壁に激突せず、向きを変えて再び俺に迫ってきた。
「なっ、曲がった!?」
俺は大回りに走りながら避けようとするが、針は俺の後を追いかけてくる。
「くそっ、このままじゃ追いつかれる!」
俺は岩の後ろに隠れる。すると針は岩にぶつかり、爆発する。
「くっ…!」
俺も吹き飛ばされるが、受け身を取ったので大したダメージはない。
「まさか追尾してくる針とは…どうしたもんか…」
そう考えていると、再び光を帯びた針が装填されて発射される。
しかしその針は、俺のいるところとは全く違う方に飛んでいく。
そのまま針は飛び続け、何もないところで爆発した。
「っ!?」
爆発の中から、透子がキャドーを解除されて飛び退く。
「透子!」
俺は透子の手を取って大きめの岩の後ろに下がる。
「大丈夫か? 透子。」
「えぇ、流石に耐久値は削られたわね…。目視できなくても追撃…生体や熱に反応するのかしら…。」
透子がそう言って立ち上がる。
「何でもありだなこのモンスターは…。」
そして恐るべきはあの針の爆発の威力だ。
周りを巻き込むほどの威力から、何かしらの活路を見出せないか考える。
あの針は追尾してくる。ギリギリで避けてあいつにぶつけてやるか?
いや、奴はあぁ見えて知能が高い。単純な作戦が通用する保証はない。
これだけでは足りないような気がする。
「そうだ、透子、あのすり抜けるキャドーってまだ使えるか?」
俺は横にいる透子に聞く。
「えぇ、使えるけど…きゃっ!」
俺たちの隠れている大岩がニグラムの光弾を受けて壊されかける。
「きゃっ、だってよ。初めて普通の女だって理解できたぞ。」
「…あなたもあのアホ金髪と同じく捻り潰されたいのかしら…?」
透子は顔を赤くして睨んでくる。かわいい。
「悪かったって…透子、少しだけ危険が伴うかもしれないが、頼めるか?」
「あいつを倒す作戦があるんでしょ? 撤退なんてプライドが許さないわ。私をからかった分の働きはしなさいよ。」
「わかってるって。無茶はするんじゃないぞ。」
「ふふっ、なんだかんだ優しいのね。」
透子はクスリと笑って作戦の実行を待つ。
ニグラムが再び光を口に集約させる。そして光弾が直たちが隠れている岩に当たる。
「今だ!」 「っ!」
透子がキャドーを使わずに岩から飛び出す。
その透子に狙いを定め、ニグラムが光の針を発射する。
透子は針を引きつけて、ニグラムの元へ走る。
そう、このニグラムは何故か同じ場所に浮いており、一度も移動しないのだ。理由は分からないがそれならチャンスはある。
ニグラムは突進してくる透子を見て、前足を刃物状に変化させる。
ダメ押しに光弾の発射も準備している。
透子とニグラムの距離が迫る。ニグラムは前足を振り回し、透子を切り刻もうとする。
しかし、直前で透子のキャドーが発動。刃をすり抜け、そのままニグラムの体もすり抜けて走り抜ける。
そして、光弾を発射しようとするニグラムの口に、透子を追尾していた針がぶつかる。
直後、ニグラムの口元から大爆発が起こり、洞窟内に激しい爆風が吹き荒れる。
「よし! うまくいったぞっ」
砂埃が晴れると、ニグラムの体が粉々になって地面に転がっているのが確認できた。
直がバラバラになったニグラムに近づく。
「…?」
妙だ。何故消滅しない。念のため残骸をさらに切り刻もうとしたその時、
「なっ、ニグラムの残骸が、浮いてる!?」
バラバラになったニグラムの残骸は小型のニグラムになり、再び一つになり、巨大なニグラムを再生させた。
「元はバラバラだった個体で形成された身体…。一つ一つは生きているのね。」
ギィシャァァァ!
「だな…分析してる暇はないが…!」
ニグラムが、今度は飛び回り始める。しれっと手加減していたつもりか? 虫のくせに。
ニグラムは奇怪な声を上げらながら、俺たちに襲いかかる。
再生したニグラムは以前と違い、洞窟内を縦横無尽に飛び回る。もう針を当てて自爆させるのは難しい。
バラバラにしてもダメなら…どうする…?
ニグラムが飛び回りながら撃ってくる光弾をかわしながら必死に思考を巡らせる。
透子はすぐさまキャドーを使い、再び姿を消した。
奴の体はどんなに攻撃しても凄まじいスピードで再生してしまう。
無理に抵抗するのではなく、先輩たちの助けを待って逃げ回るのが賢明か…?
俺がそんなことを考えていると、ニグラムが突然爆発し、再びバラバラになった。
「なっ、どういうことだ!」
「あなたが提案した作戦をもう一度やったまでよ。小此木直。」
そう言って透子が姿を現す。まさか、あの飛び回るニグラムに再び針を当てたというのか…。
「小此木直、私を討ち取った頭脳に期待するわよ。」
透子はそう言ってニグラムに立ち向かっていく。
「ったく…人の話聞きやしねぇ。」
不思議な気分だ。自分の力を上回る事に挑戦しようという時に湧き上がる謎の高揚感…その中、ニグラムに目を凝らす。
奴はもうすぐバラバラになった体の再生が終わろうとしている。
よく考えろ、奴の体は小さいニグラムの集合体で構成されている。
攻撃しても、再び小さいニグラムが生成されて再生してしまう。
…では、そのニグラムたちはどこから生成されているのか、その発生源を絶てば…!
その時、視界が突然大きく開けたような感覚に陥る。
なんだ、視力が何倍にも研ぎ澄まされている…?
ニグラムの体を見る。見えるのは、奴の体を構築する無数の虫ニグラム。
そして、その中心に赤い光が見える。
…あれは、最初にいた虫ニグラムを生み出す母体のニグラム?
あいつがニグラムを生み出して体を再生しているのか。
あの核となる赤い光のニグラムを倒せば、奴を倒すことができる!
すごい視力だ。相手の隅々まで見通すことができる。
小此木直 第2キャドー覚醒
鷲獅子の瞳 視力が大幅に向上し、急所を見極める。
稚拙解析と併せて相手の細部まで分析
可能。
「透子、奴は無数の虫ニグラムの塊だが、その中に核となる虫ニグラムが1匹混じっている。悪いが、もう一度針を引きつけて、ニグラムに当ててくれ。」
俺は透子にそう言って、右に大回りにニグラムへと迫る。
「わかったわ。覚悟しなさい!」
透子は左回りに突撃し始める。
ニグラムはそれに応じて光を帯びた針を発射してくる。
俺はその針を、キャドーを使って見つめる。
針はやはり無数の虫ニグラムが合体してできたものだった。つまり本体のように自在に変形が可能だということだ。
俺たち標的が二手に別れたなら…
ボシュッ
針は二つに分かれて、俺と透子の両方を追尾してきた。
思った通り、連射が効かないなら、一度で同時に攻撃するしかない。
透子が針を引き連れたまま、本体に迫る。
俺は、透子の進路の妨げにならないように、大回りに追尾してくる針から逃げ回る。
透子がニグラムに近づくと、ニグラムが近付かせまいと光弾を3連発してくる。
「そんなものは…効かないわよ!」
透子は軽やかな動きで3発とも避ける。
やはり透子の運動センスはすごい。俺では1発避けるのでやっとだったのに、透子はうまく衝撃を受けないように受け流したのだろう。
透子はそのまま、ニグラムの手前ギリギリで真横に回避し、ニグラムに針を激突させる。
爆発を起こして、ニグラムの体がバラバラになって地面に転がるが、その残骸たちはすぐに少し大型の虫ニグラムに姿を変え、互いに一つに戻ろうとする。
ここからが俺の出番だ。
俺は追尾する針から逃げながらキャドーを発動させ、何体かいるバラバラになったニグラムを見つめる。
そのうちの1体が、体の内に赤い光を宿しているのが見えた。
見つけた,本体はあいつだ!
「透子、本体は一番奥にいるニグラムだ、他のニグラムが合体しないように足止めを頼む!」
俺は本体のニグラムに迫る。キャドーガンを連射するが、やはりすぐに再生する。
まぁこれで最後の敵みたいだし、問題ないか。
俺はニグラムを手で捕まえてホールドする。ある程度大きくて助かった。
そこに、針が突っ込んでくる。
ふぅ、これで任務完了か。
「ちょっ、小此木直!」
◇ ◇ ◇
直がニグラムもろとも爆発するのを見て、透子が駆け寄る。
煙が晴れると、直は無傷で座り込んでいた。
「どうやらうまくいったみたいだな。」
直は体の埃を払いながら立ち上がる。
「全く、いくらダメージを肩代わりしてくれるからって、相手もろとも爆発するなんて危険すぎるわよ!」
透子は腰に手を当てて直を叱る。
「奴を確実に仕留めるのはこれが一番だったんだよ。それに、こいつがこの洞窟の主なら耐久値は使い切っても問題ないと思ってな。」
そう言う直のカードには、耐久値8と表示されていた。
「ともあれ、本体がやられて再生できなくなったみたいだ。これで攻略完了だな。」
直は消滅する虫ニグラムたちを指差して言う。
「全く、あなたらしくない無茶な作戦だったわね。」
「俺は慎重なんじゃない。最善手を常に取りたいだけだ。」
その時、入り口を塞いでいた岩がどかされた。
「直っ、透子っ、大丈夫!?」
美奈と久来が心配そうに駆け寄ってくる。
「大丈夫ですよ。もう倒しましたから。案外大した事はなかったです。」
直は事もなげに言う。そんな直を見て透子はクスリと笑う。
「なぁ、直のやつ、あぁ見えて苦労したんだろ?」
そんな透子に美奈がこっそり耳打ちしてくる。
「あら、わかるのかしら?」
「あいつは案外カッコ付けだからな、苦労したり、努力したりとか、あんま誰かに見られたくないんだよ。」
美奈が久来と綾に事の詳細を話す直を見て言った。
「へぇ、よくあの男を理解しているのね。」
「まぁ、付き合いも長いしな。」
「…あれ、綾さんは?」
「双葉さんもいないな。」
◇ ◇ ◇
「…………確か、この辺り。」
綾は直たちと分断された際、小さな脇道に消えていく双葉を見つけて後をつけることにした。さきほどのニグラムは自分がいなくても問題ないだろうと思ったからだ。
進んでいくと、双葉の姿はなかったが、古びた木の扉を見つけた。
綾は迷わず扉に手をかける。
「開けるな。」
「…………。」
いつの間にか綾の背後にいた双葉の声が響く。しかし、綾も動揺した様子はない。
…気配がなかった。
双葉自身の技量というより、双葉の様子があまりにもいつもの様子とかけ離れているがゆえに綾は気付かなかった。
「もう一度言う。そこを、開けるな。」
そう言う双葉の声は暗く、表情はまるで幽鬼のように翳っていた。
本来であれば、いつものふざけた調子で誤魔化す方が余程怪しまれなかっただろう。それを明らかにいつもとは違う声色で警告してくる。
もはや自分たちが双葉を内心疑っていることは筒抜けであり、その上でこの扉を開けさせまいとしているのだろう。
綾はそう頭の中で考え……
「おっとごめんなさぁい。双葉さんの姿が見えないからまたサボってるのかなぁと探しちゃいましたよぉ。」
久来たちのことも考え、ここでリスクを取るのはやめた。
「いやぁすまないすまない、また瑠衣から電話がかかってきてねぇ。戦闘の横だと騒音で聞こえないからまた瑠衣を怒らせてしまうんじゃないかと、これ以上反抗期が長引いたら困るからね。」
双葉も綾の意図を理解したのだろう。いつものおちゃらけたテンションに戻る。
「行きましょ。みんなが待ってます。」
「あぁ、そうしよう。」
2人は何事もなかったかのように元来た道を戻って行った。
〜コレナニ双葉先生〜
双葉「やぁ、双葉先生のコーナーだよ。今日のゲストは美奈君だ。」
美奈「またアタシなんだ…新キャラの透子か兄貴に戻るかだと思ったけど法則がマジでわかんねぇ。」
双葉「今回はカルデナ洞窟編終了ということで、美奈くんの質問に答えていこうと思う。」
美奈「あ、そうだよっ、最後の双葉さん怖っ! 双葉さんって本当にアタシたちの味方なのか? 信じて良いのか?」
双葉「ふっふっふ、このミニコーナー双葉と本編双葉は別人格。あちらの私の考えは私には分からないのさ。」
美奈「さいですか。じゃあ質問だけど、カルデナ洞窟は双葉さんが手入れ…もとい掃除していないからニグラムだらけになってるって話だったけど、どういうことなんだ?」
双葉「では、そこについて…」
〜研究科のお仕事〜
双葉「研究センターの研究科は第一•二支部合わせて100人そこらしかいない。少数精鋭の我々には、研究室以外にも、研究場があてがわれている。」
美奈「しれっと自慢。研究場ってのがカルデナ洞窟っすか?」
双葉「その通り。キャドーコアが採取できる小規模なポイントをあてがわれ、ニグラムやキャドーを使った実践的な研究ができる。」
美奈「カルデナ洞窟自体が巨大な実験場だったのか…。で、あの象のニグラムや最後の巨大な虫のニグラムがいたら実験どころじゃないと思うんだけど?」
双葉「あれは〜…まぁ、普段から定期的にニグラム退治とキャドーコア採取をこまめにやっていれば湧かない奴らだな…。」
美奈「仕事しろ精鋭。双葉さんたちってキャドーコア使ってどんな研究してるんすか?」
双葉「主要な建物に耐久値を付与する装置を作ったり、対ニグラム用の武器を作ったりしている。君たちも今回キャドーガンを使っただろう?」
美奈「なんだ、案外まともなんすね。」
双葉「ま、表向きはね。もちろんそう言った大衆の役にたつものも作るが、研究科の人間は偏屈者や野心家が多いからね。他にも色々作っているんだよ。」
美奈「双葉さんは?」
双葉「無論、私も独自に研究しているものがある。」
美奈「気になるけど、どうせネタバレとかいって教えてくんないだろうし、もういいや。閉講。」
双葉「私の台詞!」




