霧
二人でいた時の話だ
電車の中で二人は仲睦まじく見えただろうか?
見えるばかりが全てではない
私は彼女を疑っている
最近彼女は綺麗になってきた
何のためだろうか?
私に理由は知るよしもなく
また女が綺麗になるのに理由はない
私は何も言えない
何も
彼女と私の関係は
はたから見ればカップルだが
私の中ではそうとは言えない
この疑いは深く深く
私の心に影を落とし
不安と不穏を振りまいている
それらは大きく膨れ上がって
大きな霧となり
彼女を飲み込んでいる
むしろ中心にいるのが
彼女だ
そうなんだ
彼女を中心に
彼女に対する僕の不安が渦巻き
私は今その大きな霧の
目の前で
震えている
彼女のことを探そうと
手を伸ばしても
まったく彼女にとどかない
初めて会った時の
あの言葉にできないくらい
胸を熱くさせたあの
恋心は
彼女を手に入れた瞬間から
冷めていくばかり
だが
欲しかったんだ
あの時は欲しくて欲しくて
喉から手が出て
君につかみかかろうとするほどに
欲しかったんだ
ああなんで
こんなに私は切ないんだ
途方に暮れても目の前の霧から
彼女は姿をみせない
いつか変わるといいな
彼女が纏うあの霧が晴れて
再び彼女と本心で
一緒にいられる日が来れば
私は幸せだ