賢い者と愚か者3
安定の短文です。
職員室から出るとすぐに教室へ向かった。
教室に戻ると、8人ほどがもう集まっていた。
その中には勿論あの犯罪者(萌葱)もいる。
この学校のクラス分けは、『1位から30位は1組、31位から60位は2組』のように学力の順位で決まっているからだ。
「入りたくないなぁ・・・」
俺が教室に入ると必ず彼女は話しかけて来るだろう。
しかし入らないという選択肢はない。
仕方ないと思い諦めて教室に入ることにした。
「やっと来た!それと、廊下で怪しい動きはしない方がいいよ!」
案の定、話しかけてきた。
様子を伺っていたのは、バレていたようだ。
「そうすることにするよ」
そう返すとクラスメイトの人たちがざわついた。
「あの不審者みたいな人と知り合いか?」
みたいなことを口々に言っている。
まあ、気持ちはわからないこともない。
こんな恰好の奴と会話が出来る人がいたら俺でも驚く、寧ろ若干ひく。
「あっ、そういえば、お前の役目のはずだったスピーチは俺がすることになったから」
「ん?学校のスピーチの方?」
「当たり前だ、この流れで仕事の話をするわけないだろ。ていうか、仕事の方でスピーチをしてから言え。なんで毎回俺がしなきゃいけないんだ」
「ひーちゃんお疲れー」
「誰のせいなのか分かってないようだな」
「それより、すーちゃん遅いねー」
『それより』で済ませるな、重要事項だ。
「おい待て、まだ登場していない人物の名前を出すな」
「なに言ってんの?」
「必要なことだ」
「まあ、どうでもいいけど」
「なら、聞くなよ」
察しろよこの野郎。
などと言っていると、噂をすればみたいな感じで『すーちゃん』が現れた。
「あっ、氷雨くん先に来ていたんだ」
「すーちゃん!?私もいるよ、見えていないかのように扱わないで!」
あれ?珍しく菫が萌葱に冷たい。
「何言ってるの?私の機関に入ってからの数少ない同級生の萌葱ちゃんは犯罪をするような子ではなかったと思うんだけど?」
恰好が問題だったらしい。
当たり前だ。
こんな奴それくらいの扱いを受けて然るべきだ。
萌葱の奴、涙目になってやがる。
ざまあ見ろ。
「ごめんごめん、冗談だから泣かないで」
あっ、泣き止んだ。
ウソ泣きか。
しかし、
「ねえ、その格好のせいで氷雨くんに迷惑かけてないよね?」
菫がそう言うと世界温度が下がった。
・・・えっ?何、今の人の心の温もりの欠片も感じさせない声・・・
教室がすごく静かなんだけど、クラスにいる奴ら全員微動だにしないんだけど・・・
言葉をかけられた本人の萌葱に関しては、また涙目になっている。
目が逝っている菫が怖すぎる。
「あの、菫・・・さん?」
「どうしたの氷雨くん?」
「その威圧を抑えてもらえませんか?」
「威圧って何のこと?」
「あっ、いえ、なんでもございません」
「そう、じゃあいいけど。」
「それよりあの格好のせいでなにも困ってない?」
「それは・・・その・・・・すごく困ってます。」
「そっか、じゃあ萌葱と『お話』した後に事情を教えてね」
呼び方が呼び捨てに変わっていらっしゃる・・・。
まあいいけど。
萌葱が引きずられていく。
お前の犠牲は無駄にはしない。
100%自業自得だけど。
さて、菫には愚痴だけでも聞いてもらうとするか。
スピーチを考えさせるのも悪いしな・・・。
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