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今日から学校と仕事、始まります。①莞

1日感謝の勉強

作者: 孤独

相場竜彦、16歳。


秋。その夜。



「ふぅ~~」


自分の頭に不安を抱き、悩んだ末に覚悟を決めた事があった。

汚い机を整頓し、携帯の電源のOFF、それに伴いゲーム機、漫画などを一斉に整理を始めた。

机という存在をこの日、真っ当に使おうとしていた。



バァンッ


落書きだらけの教科書、何もメモを取っていないノート。


それでも、相場は椅子に座り、教科書を開いた。教科書は英語、数学、国語、科学、……これからやってくる期末テストへの勉強を始めようとしていた。



「……………」


まずは苦手な……いや、体育以外は同じテスト結果なので相場に苦手教科はない。得意教科がないだけだ。そう強がりを見せるのは覚悟を緩ませようとする邪な気持ち。

教科書を開けば何でも書いてあると思っているだろうが、これから成長すれば分かろう。本にも、ネットにも、人にも、事実かどうかは己が考えることであろうと。

いかに教科書を開き、笑いそうになったり、意欲を欠かさせる落書きがあってもだ。それらは関係なく、とてつもない難題がすぐに脳裏にあった。


「どこだ……テスト範囲はどこだ?」


授業とはこうあるべきと、思うことがあるとしたら後悔だらけであろう。

勉強の必要性について、ただその分野を学ぶだけでなく、勉強に対して取り組む。これはどんな教科であろうと求められるもの。数学など役に立たん、3次関数なんじゃそりゃ、円周率は3なのか、3.14なのかとか、どうでもええやん、社会の役に立たん。その通りなんや。

だが、根本は役立つか役に立たないかではなく、自分は何かを成し遂げようとする気持ちを持てるだろうか?それだけは失ったり、忘れたりしてはならないと、……


その姿勢を作り上げるのが教師なり、学校なり、塾なり、通信教育なり、家族、そして、自分自身であろう。

高い点数を採るために勉強をする。立派な目的である。頭が悪いから勉強をする。それも立派である。目的がなんであれ、何かを成し遂げようとするのは大変なこと。イージーモードで、学校というのは現実を教えるのだ。それに気付くのは大人になってからか、近づいてきたからか。



「ぐはぁっ!」


頭を、痛ませる。

授業中は常に漫画や携帯ゲーム、メール、睡眠……。学校が終われば、バイトや遊び、部活。家に戻れば風呂入ったり、家族と喧嘩して寝て……。

ロクに勉強をしてない。周りが悪い。そう嫌悪したくなる。


何も分からねぇ。どこを勉強をしたら良いんだ?


学ぶとはそこから始まり、人生の歩き出しもそこから始まっていく。


必要ないことが多いのは高校生にでもなれば分かること。自分に必要な数は分かっても、その逆は誰にも分からないことだろう。無限と答えるのが回答に近いだろう。

普段なら相場は寝ていた。あるいは、漫画を読んでいた。テストの点が悪かったら、塾でも行ってこいとか言われるもんだからの行動だ。中学生じゃねぇんだよ。大学受験?なんとかするさだ。そもそも大学に行くかどうかも決めてねぇ。

遊び放題、好き放題。やって何が悪いと、大人になった気分で思う。



だからだ。


「こ、こ、こ、こーなったら」


テスト範囲はともかく、


「全部、勉強してやらぁっ!」


勉強をしている息子を間近で見ると、親は嬉しいものだ。



◇        ◇


「えー、相場くんが風邪をひいたそうです。みなさんも、十分に気をつけてください」


テスト当日、相場は風邪で寝込んだ。


「仮病か?相場の奴」

「いや、再テストがある。きっと、坂倉。お前にテスト範囲を教えてくれって訊かれるぜ」

「なるほど、ちょっと策士じゃねぇか」


しかし、残念ながら同じようなテストは出されない。


教師は内心。うわぁっ、再テスト用に問題を書き換えるのめんどくせぇ、授業中いつも漫画読んでて使えない生徒のために、手間かけさせんなよ。


であった。



◇        ◇



「ごほぉごほぉ」


相場は38.5度の高熱と咳に苦しんでいた。テストどころではなかった。

それを看病する家族の1人。


「竜彦が勉強するのは珍しいと思ったけど、さすがに無茶よ。学校行って、バイトから帰ってきて、朝まで勉強して、テストを受ける~?若いから調子に乗っちゃダメよ」

「ごほぉっ、ぐぞ……」

「健康第一よ。まったく、タバコも吸うわ、酒も飲むわ、女の子と遊ぶわ。どーしようもない高校生になって、あんた。勉強しても無駄でしょうに」

「うるぜぇ」


何が悪いってんだ。


「俺が、看病しろって言っだのか!?」

「馬鹿言わないでよ。あんたの風邪が、周りに移ったらどうすんの!あんたなんかより勉強してる子が風邪引いたらどうすんのよ!あんたの人生はどーでも良いわよ。母親だけど!」


おでこのヒエピタを押しながら、母親は言う。


「ロクでもない子供が、まともな大人になるわけないでしょ」

「ぞれば自分の影響か」

「バーカ、家庭を作って、あんたを高校まで行かせた母親のどこがロクでもない大人よ!親の言う事を一つも聞かない馬鹿息子め!」


押し倒して寝かしつける。


「まったく」


ま、これも勉強のおかげかしら。息子に言いつけできる、妙な風邪をこじらせてもらって……勉強に感謝しちゃうわ。


「明日も看病してあげようかしら?」

「いらねぇ、舟や、坂倉を……呼ぶ」

「風邪のあんたを見舞いに来る友達がいるなら、看病しなくて良いわね。テスト期間中じゃなかったかしら?」

「ぐふっ……」


ピンポーン


「?誰かしら」


『相場ー!大丈夫かーー!』

『生きてるかー!』


外から聞こえる、自分の名。それを嬉しく思うのは相場だけでなかった。母親もちょっと一安心した表情で


「良い友達がいて良かったじゃん、竜彦」

「悪い奴等とは付き合わねぇよ。ごほっ。家族が反面教師だから」





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