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掌編小説集6 (251話~300話)

アパートで

作者: 蹴沢缶九郎

一階に四部屋、二階に四部屋の古い木造アパートがある。そこの一○二号室に住む青年がいた。

夜、青年は部屋の灯りを消して布団に入った。目を閉じて寝ようと努めるが、やはり造りの古いアパートのせいか、隣部屋に暮らす住人の声や生活音が聞こえてくる。

青年は仕方なく、聞くとはなしに隣部屋の住人の会話や生活音に耳を傾けてみた。


寝ている青年から向かって右隣の部屋、つまり一○一号室からは男の笑い声が聞こえた。確か住人は、自分より年齢が一回り上の男だった。きっと夜遅くに放送しているバラエティ番組でも観ているのだろう。


次に青年は左隣の部屋、一○三号室の生活音に耳を澄ませた。何やら若い男の声が甘ったるい言葉を(ささや)いている。住人は自分と同い年ぐらいの男子学生。なるほど、彼女か浮気相手を部屋に招き、これから大人の時間というわけらしい。


なんとも羨ましい限りで、音をよく聞こうとした青年が、壁に耳を近付けようとしたその時、突然上の階、二○二号室から夫婦が怒鳴りあう喧嘩の声が聞こえた。


「くそ、これから良い所なのに…」


青年は騒々しい上階からの夫婦喧嘩の声に興ざめして、いい加減寝る事にした。

布団に入り、寝返りを打つ青年の耳に、存在しない下の階からの声が聞こえた。


「おい、我が国が戦争に負けたなんて噂を聞いたぞ」


「騙されるな、敵国が流したデマだ。なあに、この防空壕にいれば奴等には絶対に見つからない…」

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