取り巻きCは壁に隠れる 上
取り巻きC・エリアル視点
エリアル高等部二年四月
本年もお世話になりました
目の前に立つ小さな背中に、真っ向から切られる啖呵に、ああ、と思い知らされる。
そうだ。
わかっていたはずなのに、どうして忘れていたのだろう。
「ツェリ……」
小さな小さな呟きだったのに、それは愛しいひとの耳に拾われて、わたしを庇っていた背中は、憤怒の表情で振り向いた。
「あなたもあなたよ!」
小さく華奢な手が、わたしの胸ぐらを掴み、引き下ろす。
「私が観客にいるとわかっているのに、どうして避けなかったのよ!あのくらい、どんなに不意討ちでも対処出来るわよ!!」
華奢な片手が、きゅ、とわたしの髪を引っ張った。
「髪は治癒魔法じゃ治せないのよ!この短い髪を、もっとみすぼらしくするつもりだったの?」
思わず笑ってしまって、なに笑ってるのよ!とますます怒られる。
そうだった。
わたしのお嬢さまは、世界一可愛くて優しくて、格好良いのだ。
みなさまこんにちは。新学期を迎えまた一年ゲーム時空に近付いた取り巻きCことエリアル・サヴァンです。来年の今ごろにはもうヒロインが転入している。
ツェリに出会ってから十年あまり、彼女を幸せにするために足掻き続けて来たが、未だに幸せへと至る道を歩けている自信はないのに、残された時間は、あまりに少ない。
そもそも、ツェリの幸せとは、なんだろう。
今さらぶち当たったそんな疑問に、答えが出ないまま新学期を過ごしています。
新学期。
前世であればクラス分けや担任で一喜一憂し、見慣れぬ教室やクラスメイトにそわそわしながら過ごす、緊張しつつも期待にあふれ、わくわくする時期。
けれど残念ながらクルタス王立学院では、期待よりも緊張が際立ってしまっていた。
王太子派と第二王子派の対立のせいだ。
二年生以上は、落ち着いている。一年なり二年なり共に過ごしてある程度火花の散らし合いも終わらせ、すみ分けも出来ているからだ。
問題は一年生、特に昨年と同じく、外部、と言うか、王都の王立学院からの進学組である。
なにかと周りを威嚇し、ぶつかって来てはキャンキャンと吠え散らすのだ。
正直、うるさいったらない。
去年も対立はあったもののここまで騒がしくはなかったように思う。原因は考えるべくもなく、旗頭の違いだろう。
昨年の第二王子派の新入生で最も位が高かったのはラース・キューバー公爵子息で、彼は内面のどす黒さはともかく外面は微笑みの貴公子だ。事態が深刻にならないよう、巧く手綱を握っていた。
対して今年の旗頭は、第二王子殿下、そのひとだ。
彼はラース・キューバーほど、処世術に長けない。決して能力は低くないのだが、よく言えば素直、悪く言えば考えなしで、視野が狭い。
ゆえにラース・キューバーのようには、対立を和らげられなかった。
わたしとしてはお嬢さまをはじめとする守りたい方々に火の粉か降りかからなければ、それで良い、のだけれど。
残念ながら第二王子派の者からすれば、わたしたちは倒すべき敵の筆頭なわけで。
殿下にテオドアさま、ツェリにリリアのことは、あまり心配していなかった。身も蓋もない発言をしてしまえば、第二王子派の馬鹿にどうこう出来るほど、殿下とツェリの防御は無能でないからだ。テオドアさまにしたってそうだし、そもそも二年生以上は落ち着いている。
だから危険なのは身を守る魔法を持たない、レリィ、オーレリア・ミュラー侯爵令嬢と、その友人たちだ。
派閥が違うこともあったが、それだけでなく、レリィは入学後の学科試験で、第二王子殿下やその派閥の貴族令息を差し置いて、学年次席に着いてしまった。
女の身で、わきまえもせず、王子の上に。
それが彼らから見れば、面白くなかったらしい。
学力はレリィの努力の結果で、それで負けたから逆恨みするなど、むしろ恥でしかないと思うのだが。
ちょっとした嫌がらせだけならばそこまで神経質になる必要はなかったが、次第に度を越したそれは、怪我人が出かねないところまで行ったために、レリィは自身に護衛を付け、友人を遠ざけ、孤立する道を選んだ。
その、孤立しようとしたレリィの隣に立ったのが、アリスティア・サヴァンとケヴィン・ジュエルウィード侯爵子息。わたしの妹であるアリスと、中立派であるジュエルウィード侯爵家の末息子である。
ちなみにその際にアリスとケヴィンが述べた暴論は、どうせなら学年首位三人揃って標的をまとめてしまえ、である。
さすが侯爵子息かケヴィンは学年三位、そして我が妹アリスは学年首位を獲っていたためだ。確かにゲームでアリスティア・サヴァンは学年首席だった。だった、けれど。
子爵家の身分でしかも、今まで家庭教師の指導しかない状況で学年首席とは、末恐ろしい秀才だ。
レリィとケヴィンは侯爵家の息女で、アリスはサヴァン。まとまってしまえば迂闊なことは出来ないだろうと言う考えらしい。
ミュラー侯爵家の護衛が優秀なのもあり、今のところはそれでどうにかなっているようだけれども。
「わたしが、分身出来れば……」
「ブンシン?」
ぐぬぅと唸ったわたしの言葉に、ヴィクトリカ殿下が首を傾げる。
「あ、いえ。わたしがなんにんもいれば、お嬢さまも殿下もリリアもレリィもアリスも、この手で守れたのになあ、と」
「エリアル嬢が、なんにんも、ね。それはまた、面白いことになりそうだ」
今日は高等部騎士科全学年合同での、剣術模擬試合。
去年もやった、勝ち残りのトーナメント戦だ。
「本来であれば、生徒会で抑えきるべきところなのに、済まない」
「いえ、風点と協力して対処に当たって下さっている話は聞いておりますから」
派閥の偏りはよくないと言う考えの下か、昨年度の代替わりから生徒会が王太子派、風点こと風紀点検委員が第二王子派、そしてそれぞれの監査員が中立派と、ゆるく権力の分割がなされている。生徒会長がヴィクトリカ殿下、風点の委員長がラース・キューバーだ。
ラース・キューバーとしても風紀が乱れまくっている現状は望ましくないらしく、生徒会と協力して見廻りをしたり、それとなく第二王子や下級生を諌めたりしてくれているらしいのだが。
「歴史は繰り返すと言うか、なんと言うか」
ラース・キューバーは見た目と外面が優しい上に、未だ小柄で華奢で、魔法も使えない。
そんなラース・キューバーを舐めて掛かって、言うことを聞こうとしない馬鹿がいるのだ。
なにが情けないって、その筆頭が第二王子なことだが。
「模擬試合で、多少身の程を知って頂けるとありがたいのですが」
去年と違い、今回は二年生三年生の実力をある程度知っているのでよくわかる。
この模擬試合のトーナメントが、いかに作為的に造られているか。
試合に行くヴィクトリカ殿下を見送り、染々と呟く。
「なんと言うか、綺麗にキューバー侯爵子息に、武力自慢(自称)を当てて来ていますね」
「つか、お前の区画やばくないか、三年の強い先輩ばっか」
「と言ってもクララ先輩はテオドアさまの方ですし、二年生の強い方はどちらかと言うとそちらに……テオドアさま、クララ先輩と当たるまで負けないで下さいね?」
配置上、八強の時点でテオドアさまとラース・キューバー戦があり、その勝者がクララ先輩ことクラウス・リスト侯爵子息と当たる。クララ先輩の区画には二年生の猛者が集められたようだが、それでも勝つのはクララ先輩だろう。
「言われなくてもそのつもりだ。お前の方は……ヴィックに勝ったら決勝来いよな」
「……善処します」
わたしの方は、まさかの二回戦でヴィクトリカ殿下だ。
そして四強で当たるのはおそらく……。
「お前そこは自信持てよ」
「自分で言ったじゃないですか。わたしの区画やばいですって」
「まあせめてパスカル先輩のとこまでは行けよ」
「パスカル先輩相手なら負けても悔いはありません……」
パスカル先輩戦になるのは八強のところ。正直そこで負けておきたい気持ちだ。とても。
四強まで、残りたくない。
「勝率どんくらいだっけ、アルとパスカル先輩」
「およそ七:三で勝ち越し中です」
「……クララ先輩とは?」
「七:三か六:四くらいだったかと」
そんな呆れた目で見ないで欲しいですが。
「…………お前自信持てよ」
「いや、はい……いや……」
「煮え切らないな」
当たりたくないのだ。どうしても。ど───────しても。
「なんで王子殿下ふたりを、同じ区画に分けたのですかね」
「お前に勝たせるためじゃないか?」
目を逸らしていた可能性をあっさり突き付けられて、ぐっと呻く。
「ふたりとも同じ相手に負けたなら、優劣があやふやになるだろう」
「わたしが手前で負けるかも、」
「今回の模擬試合、準決勝と決勝は普通科生にも見学させるらしい」
遮って言われた言葉に目をまたたいた。
「お前、ツェリに勇姿を見せずに負けるのか?」
ふ、と笑う顔は、さすが悪役陣営と称賛したくなるようなもの。
「ツェリならお前が今年も勝つと予想しているだろうに、準決勝にも残らず敗退か」
ぐ、と返答に詰まれば、ハハッと爽やかな笑い声さえ煽って来る。
「ま、ツェリも大人だからがっかりした顔は見せないだろうけどな」
にぃ、と口端を引き上げて、小首を傾げて見せる、テオドアさま。
「俺は準決勝まで残る。ヴィックの側近候補が俺であることは知られているからな。実力を示す機会は、無駄にしない」
煽りよる。
「決勝でアルと当たるの、楽しみにしてたけど、ま、その気がないなら仕方ないよな。無理強いするつもりはないさ。俺も、ツェリもな」
「……やっぱりお似合いじゃないですか、テオドアさまとお嬢さま」
「話を逸らすなよ」
顔をしかめたテオドアさまに肩をすくめて見せてから、溜め息を吐く。
「負ける気はないですよ。お嬢さまの顔に、泥は塗れませんから」
「なら、良いけどな。ほら、ヴィックが勝った。次はアルだろ」
「ええ。行って来ます」
「おう。勝って来い」
テオドアさまに見送られ、試合に向かう。
順当に一回戦を勝ち進み、ヴィクトリカ殿下にも勝ち、三回戦もなんなくこなして、戻ったとき。
「よお、サヴァン」
中立派の三年生に、声を掛けられた。剣術用の服を適当に着崩し、だらけたような姿勢で立つ中肉中背の彼は、冬の合宿で一緒だったひとだ。つまり、そこそこの問題児。
「どうかしましたか?」
だが、対戦表上わたしと同じ区画で、一年でも二年でも、冬合宿はルシフル騎士団でみっちり鍛えられた方。すなわち、強い。
ちなみに次の試合の対戦相手でもある。
「んー、ちっと相談。耳貸せ」
「なんでしょう」
首を傾げれば、ぐいっと肩に腕を回され、耳に唇を寄せられる。
年頃の男女としては、あまり褒められたものでない距離なのだが。あ、ほら、見留めた殿下とテオドアさまが、顔をしかめている。
でも、この方はなあ……。
そうして内緒話で持ち掛けられた相談は、まあ、乗っても良いかなと言うもので。
「……怒られるときは一緒ですよ」
「バカ言うな。そんときゃオレが無理言ったって説明するから、お前は被害者面しとけ」
「それを教師陣が信じると?」
無言でわたしを見つめたあとで、問題児仲間は慈愛のこもった笑みを浮かべた。
「一緒に怒られような」
デスヨネー。
「悪い提案でもないので。良いですよ」
「よっしゃあ!さっすがサヴァン、話がわかる!!」
嬉しそうにガッツポーズして、べしべしとわたしの背中を叩く先輩。
じゃあ頼むぞと言った先輩が立ち去るやいなや、テオドアさまが近付いて来る。
「おい、大丈夫か」
「大丈夫ですよ?」
「……なに話してたんだ」
「内緒でーす」
てへぺろととぼけて見せてから、笑う。
「すぐわかりますよ」
そして迎えた、四回戦。
「……この問題児共が」
相対したわたしたちを見て、審判役の教員が悪態を吐いた。
ざわざわと、周りの生徒たちもざわめいている。
「武器の形は自由、規則は違反してねぇっしょ」
「剣術模擬試合だぞ」
「まーまー、今回だけ今回だけ。ほら、あと詰まってんだから早く合図しろよ、センセ」
悪びれもせず言いのける先輩も、わたしも、徒手だ。その手に訓練用の模擬剣は持っていない。
「いーじゃん。サヴァンと素手でタイマン張れるとか、最後の機会かもしれねぇんだから、ちょっとくらい。授業外で殴り合い挑むより、マトモだろぉ?」
ヘラヘラと笑って言う先輩は、所謂バトルジャンキーで、その不真面目な見た目と態度に反して、身体を鍛える授業にはまともに取り組む。数学や科学と言った、効率良く身体を動かすのに役立つ学問にもだ。ただ、興味ややる気が戦いに極振りされているのでそれ以外のことが適当だったり、今のように、興味のおもむく方向に猪突猛進してしまうことが多々あるので、問題児扱いされているのだ。
そんな先輩は、冬の合宿のときから、わたしと体術で真剣勝負してみたいと思っていたらしい。頭部・頚部・胸部への打撃攻撃禁止で徒手試合をしないかと、わたしに持ち掛けて来た。
わたしはそもそも、対人の体術で打撃はあまり使わない。威力的に洒落にならないからだ。ゆえにその条件はどちらかと言うと、先輩の行動を制限するもので。
つまり、死なない程度に本気で闘り合おうぜ、と言うお誘いである。
この先輩は剣術より体術の方が強い。剣術も強いが剣術はほかにも強い方が多いから、特出しているわけではない。だが、体術に関しては今の在校生で首位争いに入る実力者だ。それは騎士科の二、三年生ならば周知だし、一年生もある程度実力がある者なら一度見ればわかる。
一見普通に見える体躯だが、余分な脂肪は一切なく、引き締まった鋼鉄のような筋肉で被われている。偶然ちらっと見る機会があったのだが、とても良い腹筋をしていた。腕の筋肉も素晴らしい。
おっと、話が逸れた。
そんな先輩相手に体術で同等もしくは優位に渡り合えれば、相対的にわたしの評価も上がると言うもの。
魔法だけ、学力だけ、剣術だけではないのだと知らしめる、良い機会だ。
なにせ国殺しの魔法は濫用出来ないし、学内の帯剣は許されていても、むやみやたらに抜いていては外聞が悪い。ならば音魔法と体術でも、十二分に敵を殲滅出来るのだと知らしめておきたい。
だから、先輩の提案に乗ったのだ。
審判役の教員が、深々とため息を吐く。
「位置に付け。構え。始め」
おそらく教員側も、この対戦に価値があると判断したのだろう。
面子にこだわる貴族子弟は、体術を泥臭いと軽んじる者もいる。だが、武器を失い魔力も尽きたとき、最後にものを言うのは体術だ。軽んじて良いものではない。
ゆえに強い者同士の戦いを見せて、少しでも興味を持たせたい、と思う可能性は十分にあった。
そう予測したことも、実は先輩の提案に乗った理由のひとつだ。
合図と共に、先手必勝で動いたのは先輩。
わたしがどちらかと言うと受け身の戦いを主体とすることを知っていて、無駄に読み合いで膠着する状況を厭うたのだろう。
一撃をかわして、投げる。くるりと身軽に受け身を取られ、反撃される前に飛び退って間合いを取った。
体術慣れしていない、例えば去年のラース・キューバーのような相手であれば、投げたあとの追撃で勝てたが、この先輩はそんな簡単な相手ではない。
今もし、放り投げるのではなく手を取ったまま倒して絞め技をとか考えていたら、投げ飛ばされていたのはわたしの方だっただろう。
「良いねぇ」
にいっと、先輩が口端を持ち上げる。
「おい」
審判役の教員が、少し顔をしかめた。
「高度な頭脳戦をするんじゃない。外からみて、すごさがわからないだろうが。初心者にもわかる戦いをしろ、初心者にもわかる戦いを」
「生徒同士の模擬戦に、注文付けないで貰えますか?……五分間だけですよ」
「んじゃ、手数勝負の打ち合いな」
ノリの良い先輩が、いやそれ初心者に見せる速度じゃないから、と突っ込みたくなる速度の連打で拳を突き出して来る。それを避けたりいなしたり弾いたりしながら、わたしも負けじと反撃を打ち返す。
暗黙の了解で投げと掴みは禁止になっているので、手足を使った打撃戦だ。
お互いすべて避けているから、傍目にはじゃれているようにすら見えるかもしれないが、まともに受ければ骨折しかねない程度には、本気の拳と蹴りだ。もちろんフェイントも含んでいるのですべてではないものの、一発喰らえば継続戦闘が厳しくなるような攻撃も、大いに含まれている。それでも頭部・頚部・胸部の打撃をしていない辺り、手抜きではあるのだけれど。
と言っても目眩まし目的や崩し目的で寸止めの目や首狙いはしているので、外から見たらばんばん顔や首を狙っているように見えるかもしれない。
しゃがんで足払いしようとしたわたしの脚を、飛んで避けた先輩がその勢いのまま放った回し蹴りが眼前に迫ったのを、後ろ飛びで避ける。着地のまま間合いを詰めようとして来る先輩を、横にかわして場外を防いだ。
噂には聞いていたが、本当に強い。わたしが負けても問題はないのではないか、と言う実力なのだが。
「おい」
打ち合いのさなかわたしの顔を見た先輩が、きゅ、と眉を寄せる。
「なんか失礼なこと考えてねぇか?」
「いえあの、申し訳ありません」
「考えてたのかよ」
ばしばしと殴る蹴るの打ち合いを続けながら、先輩がわたしを睨む。
別に怒っているわけではないだろう。ただの打ち合いに、飽きて来たから雑談を始めたのだ。
「……体術がこんなに強いのだから、剣術ももっと強くなれるのではないか、と考えていました」
「オレが剣術じゃ弱いってか」
「弱いとは、思っていませんが」
剣術ではおそらく、ラース・キューバーと並ぶ程度。決して弱くはないが、騎士科の首位集団のなかでは下になる。
「剣は」
くしゃり、と顔をしかめて先輩が言った。
「うっかり殺しちまいそうで嫌なんだよな。ほら、模擬剣でも、当たりどころが悪いと死ぬだろ?」
「体術でも当たりどころが悪ければ死にますが」
「でも自分の身体なら、当たった感覚とかで手加減も出来るだろ」
確かに、思った通りに動くと言う意味では、自分の身体が一番かもしれないけれど。
「剣も身体も、似たようなものですよ。心があって、その延長が身体で、さらに延長したものが剣や魔法や、言葉です。使い方を誤れば周りを傷付けるのは、みな同じこと」
「そうかぁ?」
「生まれたては歩けも喋れもしないでしょう。練習量の差ですよ。結局のところ自分の心ですら、本当に思い通りにはなりませんし」
ほーん、と、先輩が気のない返事を返す。
「ま、サヴァンが言うならそうなのかもな」
「なんですかそれ」
「いやだってお前、心を操る魔法の持ち主だろ。心に関しては、専門家じゃねぇか」
「別に専門家ではないですが」
「少なくともオレよりは詳しいだろ」
言った先輩が、にっと笑ってわたしの腕を掴む。
「五分経った」
ぐいっと投げの動作に入られて、さすがにあせる。
相手の筋力に対して、わたしの重量が軽過ぎるのだ。本気で投げられたら、一発で場外負けである。
あわてて腕を掴み返せば、そのままぐるぐると回された。わたしの足は、完全に地面から浮いている。
「お互い、手、離したら、お前よく飛ぶだろうなぁ」
「飛、んで、たまりますか」
圧倒的に不利な状況を、腕力と体幹の筋肉で覆す。そのまま投げ、られない。崩しが足りなかった。
代わりに蹴りを放って、どうにか腕の自由を奪還し、地に足を付ける。
「おー、持ち直すか。さすがだな」
「すごく、正直なことを言っても良いですか?」
少し上がった息を整えながら、問う。
「なんだ?」
「ぶっちゃけ勝敗着く気がしないです」
「ははっ。オレも思った。けど、ま、そのうち着くだろ。気長に行こうぜ」
なんて言いながら、さらっとあり得ないくらい鋭い突きからの掴みを目論んで来る辺り、本当に侮れない相手だ。冗談でなく、勝ち筋が見えない。
本当に、本っ当ーに、このひとが剣術も同じくらいに強ければ、ここで負けても良かったのだが。
「あ」
ずるっと足が滑った、振りをして前転して放った蹴りをあっさり避けられ、逆に足を捕まえられる。そのまま投げられる前に先輩の身体に脚を絡め、勢い任せに崩して倒して十字固めを掛ける。
……柔道だったら、このまま押さえ込んでおけば一本取って勝てるのだけれど。
「降参しません?」
「すると思うか?」
「思いません」
だがこれでは膠着状態だ。先輩は腕を固められて動けないし、わたしは先輩を押さえ込むために動けない。
奇しくも、丁度一年前、スー先輩こと兄貴、じゃない、スターク・ビスマルク先輩との試合で陥ったのと似た状況だ。
スー先輩のときは、わたしが腕を折ろうとしたので、スー先輩が降参してくれたのだが。
みしり、と腕に圧を掛けてみる。降参する気は、なさそうだ。
深く息を吐いて、一気に力を込めた。
ばきん、と不快な感触を残して、先輩の肩が外れる。
反撃に転じた先輩に捕まる前に、飛び退って間合いを取り、肩を直す隙を与えぬよう再度攻撃に入る。
片腕駄目にしてもこの動き。バトルジャンキーの本領発揮だろうか。それでも片腕が利かないことで生まれた隙を、抉って抉じ開け、うつ伏せに腕を固めて押さえ込む。
「……芸がねぇな」
「と、思うでしょう」
しかし今度はさきほどと違い、片手は空いているのだ。
倒れ伏す先輩の首に手を回し、頸動脈と椎骨動脈を絞める。
「!」
意図に気付いた先輩が逃れようと暴れるも、利かない片腕と固められた片腕では逃れられない。
失神を待って、手を離した。
「先生」
「ああ……うん、勝者、サヴァン!おい、救護班!」
担架で運ばれて行く先輩を見送って、試合場を出る。もう少し派手な決着を見せられれば良かったけれど、残念ながらそんな余裕のある相手ではなかった。
冬の演習合宿のときと同じ。降参して貰えないならば、明らかに戦闘不能まで削るか、体力を尽きさせるか、落とすかだ。
「内緒って、素手試合か」
「ええ。持ち掛けられたので」
待機場所に戻るなりテオドアさまに問われ、答える。
「最後の、なにやってたんだ?」
「頭に血液を送る血管の流れを止めて、気絶させました」
「それであんなに早く無力化出来るものなのか……」
「ええ」
頷いて、ポケットから細い紐を一本出す。
「手や腕で絞める場合は知識がないと、簡単には落とせず窒息を待つことになりますが、例えばこのような紐を使う場合、後ろから首に回して吊り上げることで、比較的簡単に血液の流れを止められますよ」
「そう、なのか」
「はい。と言っても、加減を見誤ると殺してしまうので、お勧めはしませんが。首吊りって難しいようで、要点さえ押さえれば簡単な道具で男女問わず、自殺も他殺も可能なのです」
物騒な雑学だが、別に不思議なことをしたわけではないのだと説明する。
「男女問わずって、さすがに小柄な女性が男性の首を吊るのは難しいのではないかな」
「確かに、例えばお嬢さまがスー先輩のような体格の方を、と言うのはスー先輩が椅子に座ってでもいないと難しいですが」
興味を引かれたらしいヴィクトリカ殿下に、首を傾げて答える。
「わたしとテオドアさまくらいの体格差ならば、隙を突けば吊れますよ」
「そうなの?」
「ええ。テオドアさま、立って貰っても良いですか」
立ち上がったテオドアさまの首に後ろから紐をかけ、背中を合わせた状態で紐を自分の前へと引っ張り、上半身を前に倒す。体育でやる、ふたり組のストレッチのような体勢だ。
「っ!!」
「このような感じですね」
出来るよ、と言うことを示せれば良いので、実際には絞まるところまでやらずに体勢を戻して紐の片端を放す。
「突然失礼しました。大丈夫ですか?」
「ああ。驚いたが、絞まってはいない」
「テオドアさまの体重をこの細い紐を使って素手で吊ろうとすると、わたしの手の皮膚が負けますからね。実際にやるとしたら手に布を巻いておくか、厚手の革手袋をしていないと厳しいです。あるいは、紐に把手でも付けておくか」
ひらひらと手を振ってから、紐を束ね、ポケットにしまう。
「同じ要領でやれば、座った状態のスー先輩をお嬢さまが吊れるでしょう。反射速度の問題で、しっかり絞まる前に立たれてしまうと失敗ですが、不意打ちで首を絞められて咄嗟に反撃するのは、戦い慣れた人間でないと厳しいでしょうね」
「……暗殺にも使えそうだね」
「いえ、気絶させるだけならば数秒ですが、殺すとなるとそれなりに時間が掛かります。ここまで近付けるならば、毒を塗った刃物でも突き刺した方が楽だと思いますよ。気絶させるにしても、薬を嗅がせた方が簡単で確実です。ただ、例えばタイやベルト、ネックレスの紐などでも首は吊れますから、武器や薬物の持ち込みや入手が難しい場合は、有効な手段で、……あの、試合進めて頂けます?」
いつの間にか周囲の注目が集まっていたことに気付き、説明をやめて教員を促す。
試合が始まるのを確認してから話を再開した。が、まだ結構な割合の意識はこちらに向いているようだ。
「知識として知っているだけで、わたしは専門家ではありませんから、あまり真に受けないで下さい。見た目に武器を持っていないから安心は出来ないと、理解しておいた方が良いのは確かですが」
「まあ、実際」
殿下が頷いて、座ったままわたしを見上げる。
「エリアル嬢のように体術に秀でた者ならば、武器を持った相手を徒手で殺せるだろうからね」
「ええ。それゆえ、護身術程度でも体術は学んでおくべきですし、どんな相手でも常に警戒を怠らないことは重要です。知っているのといないのとでは、対応する際の難度が大違いですし、貴賤老若男女を問わず、命はひとつしか持ち合わせていないのですから」
知らなかったがゆえに大切な方の命を取りこぼして後悔しても、失われた命は戻りません。
校舎を見上げて言ってから、視線を殿下に戻して微笑んだ。
「だからわたしも、騎士となった先輩方も、学ぶこと、鍛練することをやめないのです。いついかなるときであろうと、守るべきものを守り抜くために」
「うん。騎士も兵士も、その忠誠と誠実な努力には、感謝しているよ。もちろん、官吏のみなにもね」
「そうですね。将や兵の仕事が有事の対処であるとするならば、官吏の仕事は有事を起こさせないこと。どちらも国を守るには、必要なものです」
殿下の隣に腰を降ろして頷く。さあ、試合の見学に戻ってくれたまえ。
「そして兵や官吏の生活は、平民が納める税や、作り上げるモノによって支えられる。国を守護する文官と武官に、国の基盤を支える民、それらすべてをまとめる王。すべて国にとって必要不可欠なもので、大切にしなくてはならないものだ」
わたしを挟んで殿下と逆位置に座ったテオドアさまが、立てた膝に頬杖を突いて言った。
「ひとりですべてを守ることは出来ないが、騎士も兵も、ひとりひとりが己の役目を全うすることで、みなですべてを守ることが出来る」
「そうですね。例えば戦況を覆せるほどの強力な攻撃魔法を使えるものがいたとして、ひとりで勝ち続けることは不可能です」
「ひとりの力に頼り続ければ、必ずその力へ対策を練られてしまうからだね。あるいは、魔法の使い手の暗殺が試みられる可能性もある」
テオドアさまと殿下がこんな、初等部で習うようなことをわざわざ口にしているのは、それを理解出来ていない愚か者がいると、考えているからなのだろう。
理解出来ているならば、ラース・キューバーの言葉を蔑ろにするはずがない。見た目に穏やかであろうと、魔法が使えなかろうと、彼はこのクルタス王立学院高等部で、二年生でありながら風紀点検委員の長に選ばれた人間なのだから。
該当者、高等部生にもなって自国の王太子に愚か者だと思われていることを、心の底から恥じて反省した方が良いよ。
「実際、魔力の高いものの誘拐や暗殺は、起きていますからね」
「経験者が言うと重みが違うな」
「昨年度、エリアル嬢狙いの誘拐未遂や誘拐だけでも、二十近いからね。ほかの魔法持ちを狙った事件も、表沙汰になっているものだけでその倍以上。そうでないものも合わせれば、恐らく三桁を越えるだろう」
わたしの誘拐に関しては、うっかりミスも含まれるのだが。
「……誘拐されて洗脳でもされれば、強力な味方が最悪の敵に早変わりですからね。魔法は万能でないことを念頭に置いて、あらゆる事態を想定した対策が必要です」
わたしやわんちゃんが洗脳される可能性は低いが、ツェリやこんちゃんことコンスタンティン・レルナ・カロッサ教皇子息などが、洗脳される可能性は十二分にあるし、その場合はかなり対処が厳しい。
「洗脳と言う点では」
あるいはこれもまた嫌な事態だが。
「味方と思っていた相手が知らぬ間に洗脳を受け、敵の傀儡になっていた、などと言う事態もあり得ます。洗脳対策は幾重にも張り巡らせておく価値がありますね」
例えばミュラー公爵と公爵婦人が洗脳され、帰省したツェリを就寝中に連れ去る、なんてことも、可能性は低いが考えられないわけではない。
クルタス王立学院の教師や生徒が、なんてことも十二分にあり得る。
ああもう本当に、わたしが分身出来れば良いのに。
あるいは分身出来ずとも、とりさん並みに魔法が使えれば。
ヒトの身で思うには不相応な望みを頭に浮かべながら言えば、テオドアさまが若干引いた目でわたしを見ていた。
「お前、常にそんなこと考えながら生活してたのか」
「え、いえあの、あくまで万一の備えですよ?べつに四六時中周りを疑っているわけでは」
もちろん警戒は怠らないが、べつにずっと周りを疑って過ごしてなどいない。
「その可能性もある、と認識を持つだけでも違うと言うことです。予想外の出来事ではとっさの対応も思い付きませんが、予想し得て、対応をあらかじめ用意しておけば初動も速くなりますから。それに」
首を傾げて微笑む。
「さきほどご自身でおっしゃったでしょう。ひとりですべては守れないと。この件も同じです。騎士は自身が洗脳されないよう、精神攻撃耐性を鍛えておけば、あとの警戒と対策は、魔術師や専門家の仕事ですよ」
「精神攻撃耐性なんて、鍛えられるものなのか?」
「意思を強く持つだけでも違いますよ。あとは、防御のための魔道具や準魔道具もないわけではありません。精神攻撃魔法と言うと得体の知れないものに思えるかもしれませんが、結局のところはほかの魔法と同じ。影響を与えられるものが、心と言う不確かなものであるだけで、火魔法が普通の水でも消せるように、精神攻撃魔法も、心を守ることで防げます」
それが難しいのだけれどねと、殿下が苦笑した。
眼前で行われて行く試合を、見るともなしに眺めながら、ひとは、弱いものだからと、殿下は言った。
「どんなに普段意思の強いものでも、ふとした隙を突かれて洗脳されることはあり得る。万全はあり得ない」
「だから常に自己研鑽を怠らない。と、話が回ったな」
「それだけ重要な話、と言うことですね。あ、次、テオドアさまの番では?」
「ん、ああ、そうだな。行って来る」
頷いて立ち上がったテオドアさまを見送り、そのまま試合へ目を向ける。
「ひとは、確かに弱いですが」
ひとは弱い。楽な方、甘い方に、簡単に流れてしまう。強いものの気持ちひとつで、あっさりと狂わされ、壊されてしまう。
けれど。
「弱いだけではありませんから」
それでも強かに、生き残るのがひとだ。
「大丈夫ですよ」
振り向いて笑ったわたしの、なんの根拠もない大丈夫に、殿下は笑みを返した。
「そうだね。大丈夫であるために、国を造り、私たち王族が、そして貴族が上に立ったんだ。弱音を吐いている場合ではないね」
ありがとうと、笑ってくれるヴィクトリカ殿下だから、ツェリのいるこのバルキア王国の、王太子であって欲しい。
だから。
うつむいて、深く深く、息を吐く。
「エリアル嬢?」
殿下の声に、顔を上げる。
「大丈夫?具合でも悪い?」
「いえ。気合いを入れ直していました」
うだうだと、逃げを打っている場合ではない。
「今年もわたしが」
テオドアさまだろうが、クララ先輩だろうが、譲ってやるものか。
「殿下とお嬢さまのために、勝利を勝ち獲って見せますよ」
「頼もしいな」
一年前、同じように、殿下に宣言した。ラース・キューバーになど、負けないと。
その宣言は、違えない。
「私も、負けないようにしなくてはね」
罪人の娘を、孫を、忌憚なく友と呼び、笑みを向けてくれる殿下だから。
掛け替えのない、ツェリの友人のひとりだから。
八強、パスカル先輩に、苦戦するも勝つ。パスカル先輩は悔しげながらも良い試合だったと、頭をなでてくれた。
去年と同じく、準決勝は次回に持ち越しだ。
私とパスカル先輩の試合が最後だったので、掛かった集合にパスカル先輩と並んで従う。
「あんな骨みたいな女に剣術で負けてヘラヘラしているとは、さすが魔法重視の学院の騎士科か。質の低さが伺い知れるな」
あ゛?
「アル、どーどー。女の子がメンチ切らないの」
聞き捨てならない暴言が聞こえた気がしてそちらを向いたら、パスカル先輩になだめられた。
「ですが」
「ほら、先生が話し出すから、静かに、ね。先輩の言うことは?」
「ぜったーい」
むすっとしながらお口チャックで、教師の方を向く。
いいこ、とパスカル先輩が背中をぽんぽんした。
「うわ、サヴァンが大人しく言うこと聞いた」
「さすがパスカル先輩、猛獣使い」
「クララ先輩もパスカル先輩には従うもんな」
「すごいな、尊敬する」
そこ、聞こえているぞ。
顔を向けようとしたわたしの肩を押さえ、代わりにパスカル先輩が、しぃ、と身振りで注意する。
直接注意された王太子派の二年生だけでなく、別派閥も含む周りの生徒たちまで一斉に口を閉ざしたのは、パスカル先輩の人徳だろう。
パスカル先輩を馬鹿にしたどこかの馬鹿に、どうだと見せ付けてやりたい姿だ。
パスカル先輩は男爵子息。だが、テオドアさまを始めとする、高位貴族家出身の下級生からも敬われる、出来た先輩なのだから。
教師の話が終わり、授業終了の合図がされるまで待って、視線を前に向けたまま、口を開く。
「クルタス王立学院の騎士科の質が低くないことも、性別や体格だけで相手を侮ることの愚かさも、先輩としてわたしがきっちり教えますから、安心して見ていて下さいね、パスカル先輩」
周りにも聞こえるよう、はっきりと、言い放った。
「先輩が、弱いわけではありません。わたしが、強いのです」
「いやうん。おれの目を見て言おうか、アル?あと、声が大き過ぎるよ。声量ちゃんと調整出来るいいこだったはずなのに、どうしちゃったのかなー?」
「わたしと手合わせで勝つこともあるパスカル先輩が弱かったら、全く勝てないテオドアさまや、そのテオドアさまに負けたキューバー公爵子息はどうなるのですか」
「おいアル、俺まで巻き込むな」
「チッ」
でっかい舌打ちをしたラース・キューバーが、わたしを睨む。
そのラース・キューバーにごめんと身振りで謝罪して、パスカル先輩はわたしの前に立った。
「確かに性別や体格で相手を過小評価するのは失礼だけれど、おれがアルより弱いのは事実だからね。それに」
にこ、と微笑んだパスカル先輩が、わたしの耳に唇を寄せて言う。
「試合見た感じ、剣術ならおれでも勝てそうな相手にそんなこと言われても、気にならないよ」
……この器の大きさと、対応の大人さを、どこかの馬鹿は見習った方が良い。
「そうですね。ですから」
パスカル先輩の肩を押し、どこかの馬鹿、次の試合の対戦相手を、睨み付けた。
「まずはわたしから、教えて差し上げますよ。世界の広さと言うものを」
「さすが女のくせにそんな格好で騎士科にいるだけのことはある。羞恥心はないのだろうと思っていたが、常識もないようだな。サヴァンの娘は」
深紅の瞳が、こちらを睨み返す。
準決勝、わたしの相手は、フェルデナント・ヤン・バルキア第二王子殿下。
悪役たちを追い落とす、ゲームのメイン攻略対象だ。
拙いお話をお読み頂きありがとうございます
前話で新年の挨拶をしている件に
慄いております
お待たせしてしまい
大っ変にお待たせしてしまい
誠に申し訳ありませんでした
途中で切ってしまっておりますが
もう途中でも年内に上げて
自分に発破を掛けることにしました
途中で上げてしまったから
早く続きを上げないといけませんよ自分!!
長らくお待たせして
もう待って下さっている方も
いなくなってしまったかもしれませんが
よろしければ来年、続きもお付き合い頂ければ幸いです
良いお年をお迎え下さいませ




