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取り巻きCと黒猫の兄

三人称視点

前話直後のお話


怪我の描写がありますので苦手な方はご注意下さいませ

 

 

 

 ……いつ見ても、美しい娘ですね。


 怪我まみれで横たわるエリアル・サヴァン(いもうと)を見下ろして、ヘクトル・サヴァンは思う。

 普段は首輪で隠れた細い首の、病的なまでに白い肌に痛々しく走る、真っ赤な傷痕。血の気の失せた肌から覗き見える赤ですら、鮮やかに美しいと感じさせるような、化け物じみた美しさ。


 固く閉じられた目を見つめながら、ヘクトルは答えの返ることがない問いを投げ掛けた。


「なぜ、私などを助けたのですか」




 ヘクトル・サヴァンがジュエルウィード侯爵家に馬車を走らせたのは、父であるシルヴェスター・サヴァン子爵の指示によるものだった。

 年の瀬に顔見せもしない放蕩娘を、せめて王都の町屋敷には出頭させろと。


 今さらなにをと思ったし、適任は自分ではなかろうとも思ったが、家長の命令である以上はと従った。


 実に数年振りに出会ったエリアル・サヴァン(上の妹)に瞬間驚いた顔をされても、意外には感じなかった。自分でも、例えば年の瀬に彼女が領地へ戻って来たならば、同じ顔をしただろうと。


「……ヘクトル兄さま、なぜここに?」


 驚きを瞬時に掻き消し、静かな声でエリアルは問い掛ける。


「あなたを迎えに来ました」

「迎えとは、どこへ」

「王都へ。父上があなたも来るようにと」


 眼差しに疑問をにじませながらも、エリアルは頷いた。


「そうですか。ジュエルウィード侯爵家には、父さまからご連絡が?」

「事前に早馬が着いているはずです。もちろん、私からも謝罪は致します」

「国からの許可は?」

「報告してあります」

「では、わたしが否やを申す余地はありませんね」


 言い訳程度に口許へ笑みを浮かべながら、エリアルは不躾な要求を受け入れる。この娘は、いつもそうだ。なにを言われようと、ただ、不満も言わずに受け入れる、人形のような娘。


 そうなることを望んだのは両親と自分自身とは言え、こうも従順だとむしろ不安にもなる。


 相変わらず美しい顔を見下ろして、ため息を吐いた。


 常に穏やかであれ、笑っていろ。両親の躾通りの態度は確かにサヴァンとして必要なものだが、仮面のように貼り付けられた表情は、本来の思いを覆い隠してしまう。


「では、荷物をまとめて下さい。その間に私はジュエルウィード侯爵閣下にご挨拶をして参ります」


 元々散らかしてもいなかったのだろう。ヘクトルがジュエルウィード侯爵へ事情説明と謝罪を済ませた頃には、エリアルの荷作りは終わっていた。


「挨拶を」

「はい」


 モーナ・ジュエルウィード侯爵令嬢と、ケヴィン・ジュエルウィード侯爵子息は、エリアルの突然の帰宅をひどく残念がった。


「春になれば、また会えますから。クルタス王立学院で、お待ちしております」

「はい。本当に、色々、ありがとうございました」


 心酔した表情のケヴィン・ジュエルウィード侯爵子息を、ヘクトルはさすがだなと言う気持ちで眺める。イェレミアス()アリスティア(下の妹)から聞いてはいたが、エリアル(上の妹)は本当に、サヴァンらしいサヴァンなのだろう。


 化け物だと恐れながら、ひとはその存在に、魅了されずにはいられない。


 それは、国殺しの重罪人として二十歳から一生を籠の鳥にされて生きたカミーユ・サヴァン(祖父)が、心の底から自分を愛した妻を持ち、多くの友を持っていたことからも、うかがい知ることが出来るだろう。

 イェレミアスによれば、王城には未だいずこかに、カミーユ・サヴァンへと届けられながら決して本人へは届けられなかった書簡や贈り物が山と保管されているらしい。そのなかには、西の帝国ラドゥニアの国王や宰相からのものもあると言うのだから、カミーユ・サヴァンが幼少にしてどれほどの交遊関係を広げていたのかがわかろうと言うものだ。


 ついでに言うならば、ラドゥニア帝国からはエリアル・サヴァン(カミーユの孫)への縁談話も届いているらしい。もちろん政略的なものもあるのだろうが、兄弟のなかで最もカミーユに似ているのがエリアルと言う点が関係していないとは、言いきれない。


 カミーユ・サヴァン(祖父)は、美しいひとだったと言う。黒絹の髪と紅玉髄(カーネリアン)の瞳をしたとても長身だが華奢な男で、若かりし頃は女性と間違われ、男から求婚されることもあったほどの。彼の肖像画は若い頃はおろか、老いてのちのものですらバルキア王国には存在しないため、真偽のほどはわからないが。

 その、祖父に、エリアルは生き写しだと言う。

 カミーユ・サヴァンの末息子であるシルヴェスター・サヴァンも、その実子たちであるヘクトルも、イェレミアスも、アリスティアも、バルキア人から見ればカミーユ・サヴァンと似た顔立ちをして見える。だが、そっくりなのは、エリアル・サヴァンだけだと、ラドゥニア帝国はじめ、事件前のカミーユ・サヴァンを知る者は言うらしい。ほかは、似ていても、違うのだと。


 それが血縁ゆえのものなのか、サヴァンの能力によるものなのか、わからない。

 しかし、サヴァンの能力者は本人が望むと望まざるとにかかわらず、周囲の者の心を揺らし、掌握せずにはいられないのだ。


 サヴァンの血を濃く持つ者や、長く深くサヴァンと付き合って来た者ならば、魅了も低く済む。だが、バルキアがサヴァンと深い繋がりを持ったのは、たった数十年の話。

 良い待遇を望むならば、ラドゥニアで良かったはずなのだ。彼の王は、カミーユ・サヴァンを親友と慕っていたのだから。


 それでも、自身もサヴァンの能力者であったカミーユの妹(大叔母)がレミュドネから遠く離れたバルキア王国を、次の住処と決めたのは……。


「──いさま。……ヘクトル兄さま?」

「ん?、ああ、挨拶は、済みましたか」


 考え事に没頭していたヘクトルは、エリアルに呼び掛けられてはっと目を開く。


「はい」

「では、馬車へ」

「はい」


 頷いて馬車に向かうエリアルに背を向け、ヘクトルはエリアルを見送るジュエルウィードの姉弟に視線を移す。


「突然の帰還になってしまい、申し訳……なにか?」


 モーナからじっと視線を向けられて、謝罪を口にしかけたヘクトルが言葉を止める。


「あ、失礼しました。エリアルさんのほかのご兄弟とは会ったことがあったので、上のお兄様とお聞きして、つい、まじまじと」

「……あまり、似てはいないでしょう」

「いえ、顔立ちはとても似ていらっしゃるかと。ですが、そうですね、エリアルさんとは、イェレミアスさまの方が似ていますね」

「私は背も低いですからね」


 ヘクトルが、ふ、と微笑んで言う。


「いえ、どちらかと言うとイェレミアスさまとエリアルさんが高いだけで、ヘクトルさまが普通の身長でしょう」

「エリアルとイェレミアスは、父方の血が強く出たのでしょうね。父方の祖父は雪国出身で、背が高かったそうですから」

「それは、」

「さて、そろそろ行きませんと、遅くなってしまいますね」


 無礼を承知で、ヘクトルはモーナの言葉を遮る。


「突然連れ戻す形となってしまい、申し訳ありませんでした。これからも妹と親しくして頂ければ幸いです」

「親しく、なんて、こちらからお願いしたいくらいですわ。エリアルさんには弟共々、とてもお世話になっていて」

「あなたのような美しく聡明な方と親しく出来るとは、妹が羨ましいですね。では、礼もままなりませんが失礼致します」

「え、あ、はい。またどこかでお会いしましたら、よろしくお願い致しますわ」


 少し頬を赤らめたモーナに微笑み掛け、美しい一礼を見せると、ヘクトルは馬車へ足を向けた。エリアルの乗った馬車に乗り込むと、意外そうな顔をした妹の斜め向かいに腰掛ける。


「出して下さい」


 走り出した馬車の窓を開け、エリアルはジュエルウィードの姉弟に手を振っていた。ふと、館の2階、バルコニーにも人影を見付けて目を向ける。


「……あれは、ラザファム・ジュエルウィード侯爵子息、ですか」

「そうですね」


 ラザファム・ジュエルウィード侯爵子息は、エリアルと視線を合わせると頭を下げた。


 一人娘と末息子のみならず、長男も掌握していたのか。


 感心とも呆れともつかない気持ちで見つめた妹は、窓を閉じるとどこか硬い雰囲気で膝上に揃えた自分の手を見下ろした。真っ黒なスリーピースを纏うその姿は、長身もあいまって少女と言うより華奢な少年を思わせる。

 細い首にはまる、太い真っ赤な首輪が、痛々しくも映えていた。


 美しい娘だと、思う。


 真っ黒な髪。真っ黒な瞳。肌は溶けて消えそうに白く、唇は紅を刷いたわけでもないのに真紅に染まっている。大きな目も細い眉も垂れ気味で、幼くか弱い印象を与える。

 世が世で、生まれた家がサヴァンでなかったなら、国を傾けてもおかしくはないと感じるほどに、美しい娘だ。


 残念ながらここはレミュドネ皇国ではないし、彼女はサヴァン家の娘だから、美しさと言う意味で国を傾けることはないだろうけれど。


 黙って見つめていたヘクトルと、顔を上げたエリアルの視線が合う。


「……」


 エリアルが何も言わないのを良いことに抉り取って飾りたいほど美しい瞳をしばし眺めてから、ヘクトルはその物言いたげな表情に首を傾げて見せる。


「なにか?」

「いえ」


 否定しかけたあとで、思い直したように黒玉がヘクトルを見据える。


「同じ馬車に乗るとは、思っていなかったので、驚きました」

「ああ」


 思えばその程度の交流もなかったかと、ヘクトルは目を細めた。


「ふたりで移動するのに馬車二台出すのも馬鹿らしいでしょう」

「……そうですね」

「あなたは気詰まりかもしれませんが、王都に着くまでの辛抱です。それくらいは耐えて下さい」


 またしばし、黒玉と紅玉髄の視線が交わる。

 逸らされたのは、黒玉が先だった。


「気詰まりなのは、ヘクトル兄さまもでは?」

「それは」


 白い肌を視線で撫でながら、ヘクトルは首を傾げる。


「否定しませんが。申し訳ありませんね、イェレミアスでなくて」

「いえ、そんなことは」


 今のサヴァン家のなかで最もサヴァンらしい娘。父は恐れ、母は畏れ、弟は溺れ、下の妹は脅えた。そんなサヴァン家のなかで、恐らくヘクトルが最も、エリアルを冷静に見ているだろう。


 外見こそそこまで似てはいないが、内面は祖父によく似ていると、ヘクトルは言われる。

 だから、イェレミアスと違い、ヘクトルは領地に残ったのだ。


 途切れた会話を気にもせず、ヘクトルはエリアルを眺める。細くはあるが、鍛えられた身体だ。しなやかで、美しい。それでいて、強く、しかし儚い。サヴァンの能力者らしい、無駄のない身体。


 目の前の人間から、それこそ美術品のように眺められていれば、息が詰まりもするだろう。

 しばらくののち、耐えかねたようにエリアルが顔を上げた。


「あの」

「どうかしましたか?」

「どうしてそんなに、見るのですか?」


 こちらを向いた黒玉を、やはり美しいなと思いながらヘクトルは答える。


「あなたの、顔はとても好きなのですよ」

「顔、ですか」

「いえ」


 自分の言葉を、即座に否定する。


「顔だけではなく、造形全体ですね。外見だけは、とても美しい」

「……あなたと大して変わらないと思いますが」

「いいえ」


 とんでもないと、ヘクトルは首を振る。


「あなたは美しいですよ。私とは違って」

「でも、ヘクトル兄さまは」


 エリアルがヘクトルの瞳を見つめる。


「嫌いでしょう、わたしのことは」

「そうですね」


 嫌いと言われて安堵を見せるこの子は、自分の異常さに薄々勘付いているのだろうか。


「あなたは少し、私と似ていますから」

「……魔法を持つことも、期待されていたと」


 母譲りの薄茶色の髪を揺らしてヘクトルは笑った。細められた瞳は祖父譲りの赤橙色だ。

 ヘクトルの瞳と、エリアルの髪。4人いる兄弟が、祖父から継いだ色だ。伯父や伯母のなかには同じように祖父から瞳の色を受け継いだ者もいたようだが、残念ながら夭逝している。


「残念ながらと言うべきか、幸運にもと言うべきか、私は魔法を持ちませんでしたがね」


 祖父の色を継いだ伯父も伯母も、全員、力まで受け継いで、そして、自らの力に耐えきれず死んだ。ヘクトルも力を継ぎ、そして死ぬかと思われたが魔力に目覚めることはなく。


「あなたと違って」


 伯父伯母ですらいなかった真っ黒な髪で生まれた妹は、生まれながらにして祖父と同じ、いや、祖父以上に強力な魔法を持っていた。

 近く死ぬだろう。周囲の予測に反して健やかに育った妹のお陰で、サヴァン家の者は自身が化け物にならずとも多大なる利益を得ている。

 その利益のほとんどを領地に還元しているため、サヴァン家の領地は栄えているし、サヴァン家はエリアル含めて領民からの支持が厚い。


 教育により当たり前に民に尽くすのがシルヴェスター()だとすれば、教育などなくとも無意識に民に、周囲に尽くすのが、ヘクトルとエリアルだ。この国の者はサヴァンの教育の賜物だと誤解しているようだが、そんなことはない。血で、植え付けられているのだ。


 そしてその血のせいで、サヴァンはひとから興味を向けられずにいられない。


 未だにサヴァンの領地には、学友からヘクトル宛の書簡や贈り物が届く。


 その血を厭わしく思わないと言えば嘘になるし、だから、自分よりも強く血を引く妹も、疎ましく感じてしまう。

 それが、妹自身のせいではないと、わかっていても。


「……ヘクトル兄さまは、ご自身がサヴァンの魔法を持たなかったこと、どう思っていらっしゃるのですか?」


 思わぬ問い掛けに、ぱたり、と目をまたたく。

 エリアルが自分に興味を持つことがあるなどと、思ってはいなかった。


「そう、ですね」


 魔法を、持たなかったこと。


「期待にそぐえなかったことは、申し訳なく思っています」

「期待」

「両親はともかく国は、あなただけでなく私も魔法を持っていた方が、嬉しかったでしょうから。命綱は、多いに越したことはありません」


 エリアルの求めた答えではないだろうなと思いながら、ヘクトルは答える。


「まあ、あなたが生きて下さっている分には問題ないでしょうが……早く婚姻を結び、次代を授からねばならないでしょうね。サヴァン家の、継嗣けいしとしては」


 いつまででも見ていられるほどに美しい顔から目を逸らし、流れる景色を眺める。


「その意味では、魔法を継がなかったことは良かったと言えるのかもしれません。自身により命を脅かされることなく、生きていられますから」


 視界の端で、エリアルが口端を上げるのが見えた。


「本当に」


 しみじみと呟く声。


「似ていますね」

「ええ。あなたと私は似ています。だから」


 流れる景色から、馬車に目を転じる。美しい妹は、人形のように美しい顔で微笑んでいた。


「あなたを見ていると、自分が化け物の血を引く人間だと思い知らされます」

「だからわたしが嫌いだと?」

「いいえ」


 ヘクトルが首を振れば、エリアルからは意外そうな顔を返された。


「私が嫌いなのはサヴァンの血と、自分です」


 ふ、と、ヘクトルの唇から笑うような吐息が漏れる。


「あなたなど見なくとも十分私は化け物です。常日頃から自分は化け物だと思い知らされていると言うのに、年単位で会わない身内をそんな理由で嫌ったりしませんよ」


 ただの、同族嫌悪です。


 ヘクトルの返答に細められた目は、どんな感情をはらんだものか、わからないものだった。


「同族だ、なんて」


 目を伏せたエリアルが低く呟く。


「そんなことを言って貰うに値しないほどどうしようもなく、わたしは化け物ですよ」


 熟れた果実のような唇から、馬車の床をおおうごとき息が吐かれる。


「ですが、確かに」


 愛らしい顔立ちに反して低い声は、心を落ち着かせる。


「ヘクトル兄さまのそばは少し……安心します。これも同じ、サヴァンだからですかね」

「……あなたはイェレミアスの方に懐いているかと、いえ、そんなはずはありませんか」


 ツェツィーリア・シュバルツ。ヴァンデルシュナイツ・グローデウロウス。ブルーノ・メーベルト。

 妹の交遊関係を聞けば、おのずと答えは導ける。


 この娘はヴァンデルシュナイツ・グローデウロウスの言葉しか、根本的には信頼していないだろう。


「イェレミアスとは、似ていませんからね」

「顔は似ていると言われましたよ」

「顔ならば、アリスの方が似ているでしょう」


 家では見せたことのないような悪い顔で、エリアルは嗤った。


「似ていませんよ。あなたの言った通り」


 禅問答のようになった会話を、それでもやはり小気味良く感じるのは、エリアルがサヴァンだからなのだろう。

 結局は人間も、獣でしかないのだ。


「そうですね。似ていません。私とあなたほどには」

「わたしとヘクトル兄さまだって、似てはいませんよ。あなたは、“国殺しのサヴァン”ではありませんから」

「ええ」


 頷いて、口を閉じる。


 訪れた沈黙を、ヘクトルは気詰まりと感じなかった。


 他人と狭い馬車で同乗するなどぞっとしない。いや、むしろ、両親や弟妹でさえ遠慮したいものだ。しかし、エリアルであればその忌避感はない。

 暴走するかもしれないと言う恐怖も、感じはしなかった。

 サヴァン家の能力者は多くが夭逝する。しかし、祖父も叔母も長命と言って良いほどに長生きだった。つまり、一度巧く折り合いを付けてしまえば、そう簡単に自身を傷付けるものではないのだ。サヴァン家の能力は。


 またとない機会なので、久し振りに見られた美しいものをじっくり鑑賞する。慣れているのだろう。エリアルは気にした様子もなく、窓の外を眺めていた。漆黒の瞳が景色を映して、きらきらと光る。


 しばらくそのまま過ごしたのち、大きな石でも踏みつけたか、かたりと、大きく馬車が揺れた。

 体勢が崩れ、瞬間目を閉じる。


 整備が行き届いていない道にでも出たのか揺れが激しくなった馬車に嘆息を漏らすと、ヘクトルは流れ行く景色に視線を向けた。サヴァンの領地からめったに出ることがなく、領地ではもっぱら馬で移動するヘクトルは、馬車に慣れていない。好まぬ馬車移動では、ひたすら流れる景色を眺めて気を散らすのが常だった。


 せめて同乗者でもいれば会話して気も散らせただろうが、長い時間を他人と過ごすなど、ひとりでの馬車移動よりも忌まわしい。車外に腰掛ける御者ですら、叶うならば遠慮したいほどなのだ。


 イディオ家が断絶したことが、惜しまれますね。


 細く息を吐きながら、ヘクトルは思う。

 サヴァン家には使用人も執事もいるが、ヘクトル個人につく従者はいない。特定の者をそばに置くことを厭うて、身の回りのことはすべて自分で出来るようにしたからだ。執務の補佐も、現状ではつけていない。

 そんな状態でも、サヴァン家に仕える者のを多くは、ヘクトルを慕っている。


 少し、煩わしい。


 古くからサヴァン家に仕えて来たイディオ家の者であれば、煩わしくは思わなかったのかもしれないが、今となっては叶わぬ仮定だ。

 辛うじてたったふたり生き残ったサヴァン家と異なり、イディオ家はヘクトルの生まれる数十年も前に、断絶してしまったから。


 溜め息を吐いて、外を眺める。


 父の命令で寄り道をしたせいで、馬車の道のりが長い。領地やその周辺であれば単騎で移動するものを、王都に向かうために馬車に乗らねばならないのも憂鬱だ。

 そもそも、王都になど行きたくはないのだが。


 社交の場で寄せられるであろう視線を想像してしまい、ヘクトルは陰鬱な気分になった。

 未成年の学生として社交の場を免除されている妹を羨んだものだったが、こうして呼び出された以上、その特権も今年で終わりだろうか。


 元来サヴァン家は社交で身を立てた家ではない。確かに人心掌握は巧いが、好んで行う訳ではないのだ。次男のイェレミアスや次女のアリスティアならばともかく、継嗣であるヘクトルと能力者であるエリアルには伴侶を選ぶ権利もないと来れば、ますます社交に出る意味はわからなくなる。

 とは言えバルキアでは新興なので、こうして王家や他の貴族のご機嫌取りをしなければならないのだが。


 よく晴れた空。雪深かったと言うレミュドネ皇国と異なり、バルキア王国の東側はあまり雪が降らない。雨も少なく、快晴の日が多い気候だ。

 けれどその晴れた空も、ヘクトルの心を晴らしはしない。


 下らなくても会話をする相手か、外以外に見るものでもあれば、幾分心地も違ったでしょうに。


 いっそ眠ってしまえと、ヘクトルは祖父譲りの色の瞳を閉じた。




 いつの間に、眠っていたのだろうか。


「若さま、着きましたよ」


 御者の声に、覚醒を促される。


「ありがとうございます」


 外を見れば、王都に与えられたサヴァンの町屋敷が写る。

 降りるヘクトルを、馬車の音で気付いたのかやって来たイェレミアスが出迎えた。ヘクトルの背後を見て、いぶかしげな顔をする。


「兄上、ようこそいらっしゃいました」

「出迎えありがとうございます」

「いえ。それより兄上、エリアルはどうしたのですか?馬車で居眠りでも?」

「え……?」


 一瞬呆けてから、ヘクトルは、ぱっと馬車を振り返る。


 いつから、エリアルがいないことを当然だと思っていた?

 いつから、エリアルはいなくなっていた?


 認識阻害。


 その単語が浮かんだ途端、霧が晴れるように、正しい記憶が取り戻される。


 馬車が揺れて、外を見ていたエリアルが、はっとした顔をした。

 早口に、告げる。


『ヘクトル兄さまは、化け物などではありませんよ。だって』


 令嬢とは言いがたいほどに使い込まれた、しかし美しい指がヘクトルに触れる。


『あなたはこんなこと、出来ませんから』


 怒鳴り声ののち馬車は止まり、荒々しく扉が開けられる。

 馬車に押し入った男は、エリアルの腕を掴んで引きずり出した。


『エリア、』

『私は大丈夫です。どうか、道中ご無事で』


 その言葉を最後にヘクトルの記憶は途切れ、気付けばひとり、馬車に揺られていた。なにごとも、なかったかのように。


 馬車を襲ったのは複数で、抜き身の武器を持っていた。

 馬も御者も、そしてヘクトルも、無事であるはずがない。本来ならば。


 エリアルが認識阻害をかけて、存在を誤魔化したのだろう。

 犯人の目的が、自分の誘拐であると知って。


 片手で顔を覆い、ヘクトルは呻くように呟いた。


「宮廷魔導師殿に、連絡を」

「え……?」


 ヘクトルのただならぬ様子に気付き、イェレミアスが目を見開く。


「エリアルが、誘拐されました」




 それからは、上へ下への大騒ぎ、とはならなかった。


 イェレミアスからすぐさま宰相へ、宰相からヴァンデルシュナイツ・グローデウロウス筆頭宮廷魔導師へと連絡が行き、即座にエリアルの居場所が判明したからだ。


 ヘクトルがのんきに馬車に揺られている間にエリアルははるか遠く、バルキアの東の端まで運ばれていた。


 だが、東の端であろうと、筆頭宮廷魔導師を前にしては関係ない。

 多少の焦りは見せつつも余裕で飛ぼうとした筆頭宮廷魔導師が、不意に顔色を返る。


「首輪が切られた」

「え」

「逃げた。くそ、また撒きやがって」


 悪態を最後に、余裕を失った顔のヴァンデルシュナイツが消える。


 そうして、戻って来た彼の手には、赤茶けた首輪。


 元は赤であったそれを変色させたのは、血液。出所は、刃物で切られたと見えるその断片から察せられるだろう。首輪を着けた状態で、着けた首輪がそこまでザックリと切られたならば、その先にあるものとて、無事では済むまい。


「誘拐犯は全員見付けた。だが、エリアルが見付からねぇ」


 ぼさぼさの灰色斑を掻き混ぜて、ヴァンデルシュナイツは吐き捨てる。首輪を机に投げ出した彼が、さらに取り出すのは引き裂かれた布。


 その布に、ヘクトルは見覚えがあった。


「エリアルの、服ですね」

「間違いねぇか?」


 ヴァンデルシュナイツから布切れを受け取り、確かめる。


「……間違いありません。エリアルが誘拐されたときに来ていた上着と同じ布です」


 どこでこれを?と問い掛けながら布を返すヘクトルに、ヴァンデルシュナイツは低い声で答えた。


「滝の途中の岩に、引っ掛かってた」

「はい?」

「誘拐犯の隠れ家から少し離れたところに高い崖があって、そこから流れる滝の中腹、尖って飛び出た岩に、引っ掛かってた」

「それは」

「川までは血痕が付いてた。血を洗い流そうと川に入って、自分まで流されて、滝から落ちたんだろうな」


 断崖絶壁の滝だったと、ヴァンデルシュナイツは語った。


「ふむ」


 小さく首を傾げて、ヘクトルはヴァンデルシュナイツを見下ろす。イェレミアスと比べると幾分身長の低いヘクトルだったが、小柄なヴァンデルシュナイツと比べれば上背があった。


「まあ、死んではいないでしょうね」

「……だろうな」


 頷いてから、ヴァンデルシュナイツはヘクトルを見据える。


「そう思う、理由は」

「あの子はサヴァンなので」


 迷いもなく、答えが返る。


「滝から落ちたくらいでは死にません」

「……」


 ヴァンデルシュナイツの睨むような視線を受けて、ヘクトルは目を伏せた。

 あの子はヘクトルを、化け物ではないと言ったけれど。


 手近にあったペーパーナイフを手に取り、ヘクトルは目を上げる。領主候補として騎士科に進む選択もあったヘクトルが、けれど剣を取らなかった理由。宮廷に仕えることを望んだイェレミアスと違い、それは。


 袖をわずかに下げ、白い腕を出すと、ヘクトルは躊躇いもなく自身の腕にナイフを引いた。すいと一筋、薄い傷が出来、ぷくりと、白い肌に映える真っ赤な血がにじみ出る。しかしその傷は、ヘクトルが指で拭うと幻のように消えた。


「能力に開花しなかった私でさえ、これですから」

「……ほかふたりはともかく、お前に関しては魔法を持ってねぇのが不思議で仕方ねぇよ」


 ただでさえぼさぼさの頭を掻き混ぜて、ヴァンデルシュナイツが言う。

 次に問い掛けたのは、ヘクトルの方だった。


「それで?」

「ぁん?」

「生きているとわかっていながら、エリアルを探し出さずに戻った理由は?」

「実行犯は捕まえたから、そいつら突き出すためだな。それに、今のエリアルは本気で警戒して逃げてるだろうが、冷静になれば連絡を取るなり、助けを求めるなり、するだろ」


 そうでしょうか。ヘクトルは思う。

 首輪と言う枷を外され、滝から落ちるなんて、死んでいてもおかしくない状況になって、まして、場所は国境間際。


 自由を求めて出奔しないと、どうして言えるでしょう。


 ヘクトルですら時に、すべてを投げ出してどこか遠くへ行きたいと、思うときがあるのに。


「見付かります、かね」

「……あいつが本気で逃げてぇと思ってるなら、そん時ゃそん時だろ」


 ヘクトルはヴァンデルシュナイツは見つめる。彼は、どうなのでしょうかと。


「んだよ」

「いえ……少なくとも、私との移動中で良かったなと」

「あぁ?なんで……ああ」


 不可解げな顔を一転呆れ顔にして、ヴァンデルシュナイツがヘクトルを見る。


「お前らは本当に、そうなんだよなぁ」


 一度報告して、また探しに行って来る。


 骨張った手が、今度は自分のではなくヘクトルの頭を掻き混ぜた。


「お前は、ここで連絡待ってろ。ひょっこり帰って来るかも知れねぇし」




 そしてヴァンデルシュナイツの予想通り、エリアルは思いも掛けないところから、ひょっこり帰って来た。


「……酷い有り様ですね」


 傷だらけで、意識のない状態で。


「ありがとうございます。妹を助けて頂いて」


 駆け寄ってすがり付くイェレミアスとは対照的に冷静に、ヘクトルは妹を救ったと言う青年に頭を下げる。


「いえ。ええと、えりちゃ……えりあるさんの、おにいさま、ですか?」

「ええ。ヘクトル・サヴァンと申します。……エリアルは、私を庇って誘拐されて」


 そう。庇った。庇ったのだ。


 ほかにやりようは如何様いかようにもあったにもかかわらず、あえて自分だけ危険な方法を取って。


 美しい妹を見下ろして、溜め息を吐く。自分はこの妹を嫌っているし、それは、この妹にしたって似たようなものでしょうに。


「なぜ、私などを助けたのですか」

「それは」


 返らないと思っていた言葉に返答があったことに驚いて、ヘクトルはかたわらの青年を見遣る。


「ゆうかいされるより、にげたいものが、あったのかもしれませんよ」

「ああ、そうかもしれませんね」


 なるほどと、場違いに笑ってしまう。


 やはり戻って来たくなど、なかったのかもしれないと、思いながら。


 可哀想に。


 横たわる妹に歩み寄り、その頭を撫でた。


「もうしばらく、眠っていると良いでしょう」


 未だ学生である妹の本分は勉学。あと数日も眠っていれば、面倒な社交などすっぽかして、学院に戻ることが出来る。


 イェレミアスから聞くに、この妹は働き過ぎている。

 たまにはなにもせず、こんこんと眠ることも必要でしょう。


「好きなだけ寝て、元気になったら起きなさい」


 最後にひと撫でして、ヘクトルはいつまででも見ていられる美しい寝顔から目を離した。


「ありがとうございます。少し、心が楽になりました」

「あなたをなぐさめられたなら、さいわいです」


 青年が頬笑み、片手を差し出す。


「えりあるさんとは、なかよくして、もらっています」


 そう前置きしてから名乗られた名前に目を細め、ヘクトルは握手に答えた。


「よろしくお願い致します。と言っても、弟や妹たちと違って、私が王都にいることは少ないですが」

「よろしくおねがいします」


 微笑んでからエリアルに目を移し、青年は呟く。


「すこしは、やすめるといい、ですが」

「そうですね」


 起きないことを望むような会話におかしくなってまた笑い、それからふと思い付いて、ヘクトルは首を傾げた。


 エリアルを看病していれば、私も社交をさぼれるでしょうか。


「……兄上、目覚めない怪我人の前で、よくそんなに笑えますね」

「生きて見付かったことに、安堵して気が緩んだのですよ」


 こちらを睨むイェレミアスに肩をすくめてうそぶく。


「生きてさえいれば、怪我は治せますからね」


 折好おりよく姿を見せたヴァンデルシュナイツに目を向けながら言った。ヴァンデルシュナイツが一瞥を投げるだけで、エリアルの痛々しい怪我は消え失せる。


 怪我が消えてもエリアルが、目を覚ますことはなかった。


 それはそうでしょう。気力も体力も魔力も、使いきって疲れはてているのでしょうから。


 慌てることもなく思うヘクトルに対して、イェレミアスは鬼気迫る様子でヴァンデルシュナイツにエリアルの容体を訊ねる。


「疲れて寝てるだけだ。そのうち目ぇ覚ますだろ」

「そうですよ。もう少し休ませてあげなさい」


 ヴァンデルシュナイツが自分と同じ所見を述べたのに便乗しつつ、ヘクトルはエリアルからイェレミアスを引き離した。彼が引っ付いていては、休めるものも休めないだろうと。


「……っ兄上は」

「私だって心配ですよ」


 起きる気配のない妹を見下ろし、ヘクトルは答える。


「ですが、ここで騒いでどうなるものでもないでしょう。あなたも私も、呼び掛けて意味があるほどこの子に好かれてはいないのですから」


 ぐっと詰まって、イェレミアスは悔しげに顔を伏せた。


 可哀想に。


 そっと、弟の頭を撫でる。


「兄上……?」

「大丈夫ですよ。エリアルは、ちゃんと目覚めます」

「なにを根拠に」

「……そんなに、無責任に生きられる子ではありませんから」


 疲れただけでしょう。少し、疲れ過ぎただけ。


「今は少し、休みたいだけですよ。ですから、静かに休ませてあげましょう」


 黙ってこちらを見上げていたヴァンデルシュナイツが、片目をすがめて言う。


「まるで自分がいちばん理解してるみてぇな言い方だな」

「まさか」


 ヘクトルは笑う。

 笑みはレミュドネ皇国の人間の、そしてサヴァンの、常套手段だ。


「ただ、兄妹だから少しわかると言うだけですよ」


 白くまろい頬を、指先でなぞる。人形のように硬質だった表情が、わずかに解けた。


「……私たちは、ひとに混じるのが苦手ですから」


 エリアルに、青年に、ヴァンデルシュナイツに目を向けて、ヘクトルは頬笑む。

 青年はどこか安堵の見えるはにかみを返し、ヴァンデルシュナイツは苦虫を噛み潰したように顔をしかめた。


「お前……」


 額を押さえて呻くように吐き出す。


「領地に、籠ってろ。エリアル以上に、喰えねぇ」

「言われなくとも、喜んで」


 出来れば国の上層部にもそう進言してくれると嬉しいと思いつつ、ヘクトルは微笑んで頷いた。


 ヴァンデルシュナイツがぼやく。


「……カミーユより、シシリアに似てねぇか」

「まあ、どちらも身内ではありますからね。……どちらも、会ったことすらありませんが」

「厄介な身内持ちやがって……」


 筆頭宮廷魔導師を前にしても臆することなく、ヘクトルは笑った。


「それがサヴァンですよ。始祖からして型破りだったのですから、おわかりでしょう?」

「エリアルもだが、お前も、なにをどれだけ知ってるんだ」

「それを教えては、不利になるでしょう?」


 イェレミアスが、眉を寄せる。


「兄上、なんの話を、」

「さて、いつまでも怪我人の周りで騒いでいてもいけません。イェレミアス、戻りましょう。宮廷魔導師殿、エリアルはどう致しますか?ここに居させても良いかと私は思いますが、移すのでしたら居場所は私たちにも教えておいて頂けるとありがたいです」

「自分の屋敷に戻すとは、言わねぇのか」


 ヘクトルは、当然と首を振った。


「私との移動中に拐われた以上、それを申し出るのは不遜でしょう。今のサヴァン家では、エリアルを守れません。大人しく引き下がるのが、国防を揺るがしたことに対するせめてもの償いです」

「……お前とシルヴェスターの王都勤務も、案としては出ている」

「ご遠慮致します」


 喰い気味の回答だった。魚の内臓でも口に含まされたかのような顔で、ヘクトルがヴァンデルシュナイツを見下ろす。


「また、サヴァンを囲うと?祖父のように?こう見えて、領民からの支持の厚い統治者なのですよ。暴動でも起こしましょうか」

「はぁ……」


 卯論な瞳でヘクトルを見返すと、ヴァンデルシュナイツは細腕でエリアルを抱え上げる。


「そっくりだよ、お前らは。エリアルは俺が保護する。現状それが最も安全だろ。王宮の外宮だが、そう簡単に入れるとこでもねぇ」

「そうですね。宮廷魔導師殿のお膝元から、愛子まなこを奪おうとも思わないでしょう」

「お前……ほんとにどこまで知ってんだ」

「はて」


 ヘクトルは最後にもうひと撫で黒絹をすいてから、空とぼけた。


「なんの話でしょう」


 筆頭宮廷魔導師に抱かれ、兄に撫でられたエリアル・サヴァン(国防の要)は、目覚めないながらも穏やかな寝息を立てていた。

 

 

 

拙いお話を読んで頂きありがとうございました


もっとさらっと流すはずだったのにヘクトル兄さまが厄介過ぎた

どうしてそんなにいろいろ含ませるのですかあなた

本当に、よく、真っ直ぐに育ったね、アリスさん……


続きもお読み頂けると嬉しいです

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