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取り巻きC と初合宿 裏話 そのいち

悪役令嬢ツェツィーリア視点/三人称視点


申し訳ありません

初合宿をまだ引っ張ります…orz


長くなり過ぎて書きたかったエピソードを次回に回したにもかかわらず

文字数の多さに作者が唖然としたと言う恐ろしい長さの回です

 

 

 

「ずるいです」

「ずっるぅーい!」

「ずるいですわ」


 むっすーと頬を膨らませたアーサー、オーリィ、リリアに言われて、私たち、私、ヴィック、テオは困ったように苦笑した。


「ずるいって言われても班は先生方の決定なんだから、仕方ないじゃない」

「アーサーとオーリィに参加資格がないのは、仕方ないことだろ」


 同じソファに腰掛けたヴィック共々、自分たちのせいじゃないと反論する。参加資格はあっても参加しなかったリリアが、三人掛けのソファの真ん中に身を埋めながら、悔しげに呟いた。左右には、アーサーとオーリィを従えている。


「わたくしにも参加出来る実力がございましたら、参加いたしましたのに…!」

「…はっきり言って、楽なものじゃなかったわよ?」


 ほかの班員の手前平気な振りをしていたが、洞窟探索も下山も筋肉痛で死にかけだった。帰ってからもしばらくは、身体のそこかしこが痛かったし。


 けろっとしていたエリアルに、少し殺意が湧いたくらいだ。


「実を言うと、私も多少筋肉痛だったよ?」

「あれでもまだ、演習合宿としてはぬるい方らしいけどな」

「あれでぬるいって、春はどうなるのよ?」

「だから冬春は、参加に選考が付くだろ?」


 なるほど、体力のない生徒は弾くのね。思わずぎゅっと、両隣に座るヴィックとテオの腕を掴んだ。

 私とは比べものにならないくらい、太くて、硬い。


「なんっで、同じ人間なのにこうも違うのかしら」

「日ごろの努力と性別だろう」

「性別が関係するなら、どうしてアルは女なのにあんなにけろっとしているのよ」


 私とピアはへばっていたのに、エリアルは食事の準備を一手に引き受けるほどの元気だった。不公平だ。


「幼少期の努力、かな。生まれ付きの体質もあるだろうね」

「アルの体力については騎士科でも謎扱いされてるよな。走り込みとか、下手な坊ちゃんたちよりよほど持久力あるし」

「ああ、速さと持久力には自信があるみたいだよね、エリアル嬢」


 身体が軽いからかな?と語るヴィックに、唇を尖らせたオーリィが訊く。


「でー?そのアルねぇさまはどうしていないのよ?」


 いまは夏期休暇真っ只中で、それぞれ各々の実家に帰っていた中、珍しい果物が手に入ったと言うオーリィの声掛けで集まったのだ。もっともオーリィが声を掛けたのは私とリリアとアーサーで、ヴィックとテオはアーサーが呼んだみたいだけれど。

 もちろんエリアルにも声は掛けてあったが、断られたのだ。しかも手紙でなく、私に通信で断った。手紙を書く時間もない、と言うことか。


 肩をすくめて答える。


「言ったでしょう。時間が取れないから、だそうよ。それっきり通信石にも反応しないし、寮に行って訊いたら、帰ってすらいない…と言うか、二回目の合宿まで外泊申請が出ているらしいわ」


 あの不良猫、と吐き捨てつつ、行った先はわかっている。実家に帰るわけがないんだから、あの猫が。


「…つまり、グローデ導師のところか?」

「で、しょうね」


 家でエリアルの話題になったとき、義父上さまがそんなことを言っていた。放っておくと肉ばっかり食べていると、意味の分からないことをぼやいていた。


「拉致監禁…?」

「人聞きが悪いよ、オーレリア嬢。…その辺は父も関わっているらしい。悪いね」

「麓の人間が、亜翼竜アヨクリュウの群れに気付いて報告したから、隠せなかったんだよな」


 そこも、義父上さまと義母上さまの会話で聞いた。エリアルに会いたいとごねる義母上さまに、覆せない決定だからと謝っていた。


「ああ。また、どこかの馬鹿がエリアル嬢を野放しにすべきでないと騒いだようだ。危険はないと証明するために、エリアル嬢がグローデウロウス導師に逆らわないと言う宣伝をするらしい」

「なにそれ!?アルねぇさまは、見世物小屋の猛獣じゃないのよ!!」


 私に代わってオーリィが叫んでくれたので、少し溜飲が下がる。


 エリアルはきっと、黙ってその扱いに甘んじているんだろう。エリアルを化け物扱いする馬鹿たちよりも、そんな扱いに異を唱えないエリアルにこそ腹が立った。


『あなたの魔法は、守るためのものです』


 私に再三言い聞かせた、エリアルの姿が浮かぶ。

 守れば良い。攻撃するな。エリアルは私にそう教え込んだ。死にさえしなければ、それは勝ったと同義語だからと。自分はあれほど、強力な攻撃手段を持っているくせに。


 それもまた私を守るためだと気付くのは、こんなときだ。


「強い力を、ひとはおそれるのよ」


 攻撃出来ない私だから、監視だけで済んでいるんだ。もしも私もエリアルのように攻撃が出来ていたら、きっとこの身にも枷をはめられていただろう。


「自分より強いものがこわくてこわくて堪らないけれど、それを認めるのは恥ずかしいから、優位に立って安心したいのよ。こいつより自分は上だから、こわくなんてない、ってね」


 エリアルは、それをわかっている。だって初めて出会ったとき、私にそう教えたのはエリアルなんだから。

 エリアルはわかっていて、その上であえてやつらに安心を与えてやっているんだ。


 爪を牙を、翼を隠し、自分はひとに逆らえない、従順な獣だと偽って。


 それは誰のため?エリアルが飛んで逃げないのは、なんのため?


 合宿中エリアルは、巨大な獣を狩り、捌き、火をおこし、調理していた。国になんて頼らなくても、エリアルひとりなら、山籠もりでもなんでも生きて行けるんだ。


 そうでなくても愛らしくも優秀な猫のこと。巧く立ち回って他国で自由を勝ち得ることだって出来るはずだ。


 それをしないのは、なんのため?


 バルキア王国を出たとて待遇が良くなるとは限らない。この国に家族が、友がいる。

 そんな理由もあるだろう。けれど、


 私がいるから、エリアルは逆らわない。


 きっとそれが、最大の理由。


 この国で、私は幸せだし、私も一緒では、無理が出来ないから。


 馬鹿な子。本当に、馬鹿な子。


 あなたを貶され貶められても、私が怒らないとでも、思っているの?

 どうしてあなたはそう、私のいちばん大切なひとを、大事にしてくれないの?


「だからと言って、エリアルを馬鹿にされるのは許せないけど。あの、馬鹿猫…!」


 あの、馬鹿猫は本当に、好い加減、自分の価値に気付くべきだ。


 憤る私に、にっこりと、ヴィックが笑い掛けた。


「心配しなくても、馬鹿な提案した馬鹿については、誰だかしっかり確認してあるよ。父も将軍も宰相もグローデウロウス導師も、許してなんかいない」


 だろうなとは、思った。彼らも彼らなりに、エリアルを守ろうとしている。そうでなければとっくに、私もエリアルも籠の鳥にされていただろう。

 エリアルを犠牲にすることが前提のその守り方には、異議を申し立てたいけれど。主にエリアルへ。


 舌打ちした私へ、その場の全員が苦笑する。お嬢さま、はしたないですよと叱るひとは、ここにいない。


 早く、戻って来なさいよ。


「演習合宿には、参加出来るみたいだよ。同じ班になれれば会える」


 言ったヴィックが、私の頭をなでる。身内しかいないから出来ることだ。でなければ、私が周りの反感を買う。

 エリアルなら誰に可愛がられていても可愛いと笑って済まされるのに、私だとやっかまれるなんて、なにが理由よ。人徳?身分?


 くいと首を傾げていたオーリィが、ふと思い出したようにヴィックを見た。


「ねぇ、この前会ったときロディが真っ黒な笑顔で、そいつら呪う的なこと言ってたけど、大丈夫?」

「え゛」


 私をなでていたヴィックの手が、ぴたりと止まる。


「…その話、詳しく聞かせてくれるかな?」

「詳しくもなにも、それで全部よ。アルねぇさまが馬鹿にされたって聞いたらしくて、『アルお姉さまを馬鹿にするなんて許せませんわ、そのような愚かな方々はこのわたくしが呪って差し上げます』って」

「言ったの?」

「言ったの」


 ヴィックが私から手を離し、額に手を当てて、深々とため息を吐いた。


「…あの、じゃじゃ馬娘」


 絞り出すような言葉に、周囲が、あー…と言う表情になる。


 とりなすように、テオがヴィックに声を掛けた。


「ロディの呪いなら、あれだろ、熱いお茶を膝にこぼすとか、足の小指を角にぶつけるとかで済むだろ、大人数相手なんだし。それくらいなら可愛いもんだし、ばれやしないさ」

「地味に底意地悪い内容よね。まあ、自業自得だけど!」


 そんな台詞をオーリィが笑い飛ばす。


「でも、残念ながら外れよ!『せいぜい悪夢に怯え、はしたなくベッドを汚しなさいませ!』ですって」

「…言ったの?」

「言ったの」


 ヴィックは両腕を膝に突いてがっくりとうなだれ、顔を覆った。


「あの、じゃじゃ馬娘…っ」

「いや、うん、まだまだ可愛いもんだろ、な?」


 そんなヴィックを、テオがなだめる。…でもあなた、顔が引きつってるわよ。


 ロディだのじゃじゃ馬娘だの言われているのは、バルキア王国第一王女にして、国王陛下唯一の娘である、ローデシア・ジーナ・バルキア殿下のことだ。

 私は直接話したことがないけれど、夜会で遠目に見た限りでは、顔立ちはヴィックをより女性らしくしたような感じで、淡い金髪に緋色の目と言う色彩もヴィックと良く似ていたように思う。優しげな笑顔で穏やかに話す、まさしくお姫さまと言うべき印象そのものの方だ。


 けれど見た目の優しさを裏切り、彼女の魔法適性は呪術。

 言葉だけ聞けば負け惜しみのような呪ってやると言う宣言も、彼女に関しては冗談にならないのだ。


 なのでそれを聞いたヴィックが唖然とするのも、不思議ではないのだが。


「…アルお姉さまって、王女殿下とアルに、面識あったかしら?」


 そもそもどうして、王女がそんなに怒っているのかがわからなかった。同じ学院で同じ騎士科生のヴィックならばともかく、王都在住で王都の王立学院に通う王女と、エリアルの接点なんてないはずなのに。

 なにせ王女殿下は箱入りで、曲がりなりにも唯一王女と歳の近い公爵令嬢である私ですら話したことがないのだ。まあ、それは私が大きくなってからの養女だからで、従姉妹であるリリアや、幼いころから王子の婚約者候補にされていたオーリィとは、幼馴染みで個人的な交流もあるらしいけど。


「ああ、うん、ロディは…」

「ロディはアルねぇさま信者なのよ」「ロディさまはエリアルが大好きですから」


 口ごもったヴィックとは対照的に、微笑んだオーリィとリリアが宣言する。


「…そう言えば、ヴィックがアルを晩餐にとか、言ってたわね」

「会わせろって、うるさいんだよ、ふたりして。言っておくけれど、会いたがっているのはツェツィーリア嬢にも、だからね」


 ふたり、と言うのは、王女殿下に加えて第三王子殿下も、と言うことなのだろう。第三王子、エーミール・マリア・バルキア殿下。アーサーと同い年の王子で、兄弟の中で唯一魔法を持たないため侮られることもあるようだが、ヴィックと負けず劣らず聡明な王子だと聞く。ヴィックや王女殿下よりも濃い金髪に金色の目をしているらしいが、やはり私は言葉を交わしたことがない。顔立ちは、同腹の兄姉に比べて凛々しいと言う噂だったが。


 どちらにせよ、私やエリアルと会いたがる理由には思い当たらない。

 強い魔法を持つものへの興味、だろうか。だとすれば、あまり嬉しくはないけれど。


 表情で疑念に気付いたのだろう。隣に座るテオがゆるりと首を振った。


「あのふたりなら心配いらない。魔法うんぬんで興味持ったわけじゃないからな。エミィは単なる兄馬鹿で、ロディはそこのふたりに感化されただけだ」

「ふたりに感化…?」

「共通の話題なので、ちょうど良くて…」

「リリアの嘘吐き!いつも嬉々として語ってるじゃないの!!」

「オーリィだって、聞きたがるじゃないですか!」

「だって聞きたいもの!!」


 あー、うん、承知した。


「このふたりが、あることないこと吹き込んだのね…」

「あることしか吹き込んでないわ!!」

「エリアルは天使ですから!!」


 私のエリアルが天使なことは否定しないけれど、このふたりのエリアル馬鹿っぷりは、もう少しどうにかならないのかしら。


「で、第三王子殿下の兄馬鹿、と言うのは?」

「エミィは兄さま大好きなんだよ。んで、その大好きな兄さまが、中等部になってから親しくなった女ふたりが、気になって仕方ないと。ほら、わざわざ独占したサロンの利用を許したり、アルの誕生日祝ったりしただろ?ヴィックは基本的に人当たりが良いけど簡単に踏み込ませはしないのに、幼馴染みでもない相手にそんな気を許してるのが不思議で仕方ないんだ。膝枕写真も、見たらしいし。むしろエミィに関しては今まで乗り込んで来てないのが驚きくらいだな」


 …どんだけ兄馬鹿なのよ。


 思わずヴィックに目を向ければ、逸らされた。嫌な予感しかしない。


 まあ、晩餐はエリアルも一緒でしょうし、あの子に任せましょう。


 厄介事はぽいして、話題を変えることにする。


「もうその話は良いわ…。それより、腕相撲の景品?罰?って、どうなったの?」

「ん?ああ、あれな…」


 テオが少し遠い目になる。八位のテオは、エリアルとメーベルト先輩とアーベントロート先輩のお願いを聞くことになるんだったわね。エリアルとアーベントロート先輩はともかく、メーベルト先輩ってどんなお願いをするのかしら?


「ああ、ふふっ」


 私と同じく先の話題には目をつぶったらしいヴィックが、おかしそうに笑う。


「お嬢さまに求婚して下さい、だよね」

「…は?」


 誰が言ったのか瞬時にわかるようなお願いだったが、頭が理解するのを拒絶した。


「なん、ですって?」

「お嬢さまに求婚して下さい。エリアル嬢から、テオへのお願いだよ」

「あんの、馬鹿猫…っ。テオ、まさかとは思うけど、」

「受けるつもりはない。断る」


 苦虫を噛み潰したような返答に、ひとまずほっとする。だからどうして、あの馬鹿猫はいちいち私とテオをくっつけようとするのよ!?


「ふたりには悪いけれど正直な話をすれば、下手なところでくっつかれるよりテオとツェツィーリア嬢で婚姻を結んで貰えた方がありがたいのだけれどね、私としても」

「やめてちょうだい」


 ヴィックの言いたいこともわかるけれど、今は考えたくない。それがわがままなのだとわかっていても、婚姻なんて、まだ遠いものであって欲しい。


 エリアルは、愛せた。養家のひとびとも、愛せている、と思う。いつも集まるこの面々にだって、友愛を抱いている。でも、恋愛は。

 私が誰かに恋が出来るなんて、とても思えない。夫となったひとを伴侶として愛せる、自信がない。


 実の親に大切にされなかった私が、夫や我が子を、大切に出来るか?その問いに自信を持って頷くことは、出来そうになかった。まだ、エリアルに甘えられる、子供でいたかった。


 ああ、私がこんなだから、エリアルは身を削ってまで私を守ろうとするのかしら。

 ちゃんと強く、大人になって、エリアルの隣に堂々と立ちたいとも、思っているはずなのに。


 首を振って、ヴィックに目を向けた。


「そう言うヴィックには、なんてお願いしたの?と言うかヴィック、いつの間にエリアルに会ったの?」

「城で偶然、ね」


 偶然、ね。疑わしいところだけど、まあ良いでしょう。


「それで、テオに伝言を?」

「そう。私へは、テオへの伝言と説得をお願いしますって。と言うわけでテオ、さ、ツェツィーリア嬢に求婚を」

「ヴィック、お前…」

「心配しなくても、今なら断られるだろう?内輪だから、問題にもならない」


 エリアルの影響か元からの性格か…いえ、間違いなく元からの性格ね。爽やかな模範的王子さまの顔をして、ヴィックはなかなかに黒い考え方をする。エリアルは正式な求婚とは言っていないんだから、今冗談として流してしまえば良いのだ。


「…いや、そう言うのは、駄目だろ」


 しかしそこは堅物なテオのこと。首を振って拒絶した。


「ツェリに失礼だし、不誠実だ。アルには今度会ったときにでも、別のお願いにしてくれるよう頼むよ」

「真面目だなぁ、テオは」

「そこが良い、って言う令嬢も多いわよ」


 私としては求婚なんてされない方がありがたいので、軽く流す。


「メーベルト先輩とアーベントロート先輩からは、なにかお願いされたの?」

「いや、合宿以来会っていなくて」

「ラフ先輩からは言われた。爺さんに稽古付けて欲しいって」

「…らしいわね」

「ああ。無茶振りされなくて良かったよ」


 前将軍だったテオの祖父は現役を退いてこそいるが、いまだ特別顧問として軍部との関わりを持っており、多少の衰えはあれどまだまだ実力は健在と聞く。騎士を志す者としては、手合わせを望みたくもなるのだろう。

 孫のテオは時間が開いたときなどに稽古を付けて貰っているらしいので、そこにアーベントロート先輩を混ぜるくらいは出来るだろう。アーベントロート先輩には得で、テオには大した害もない、良いお願いだ。


 頷いて笑ったテオが私を見る。


「そう言うツェリは?アロンソに、なにを頼んだんだ?」

「エスパルミナについて教えて欲しいってお願いしたのよ」


 ピアへのお願いは合宿中に伝えてあったので、さらりと返す。


「言葉とか、最近の流行とか、風習とか、文字だけじゃわからないことやわかりにくいことがあるでしょう?だから、それを教えてくれるように頼んだの」

「ツェツィーリア嬢らしいね。勉強熱心だ」

「知識は武器だって言うのが、どこかの馬鹿猫の教えなのよ」


 肩をすくめてふと目をやると、明らかにふてくされた顔のオーリィと目が合った。


「やっぱりずるい。楽しそう」

「…楽しかったのは確かだけど、班の顔ぶれが良かったからだと思うわよ?一年全員が顔馴染みだったし、おおむねまともなひとしかいなかったもの」

「おおむねまともって、言い方がひどくないかな?」

「だって、ほぼ全員なにかしら癖があったじゃない。私も含めた班員の中で、はっきりまともだって言えるのはビスマルク先輩とパスカル先輩だけでしょう?」


 自分がまともだと言うつもりはない。けれど同時に、あの班員だってまともじゃないと言えるわ。


「いや、俺は、」

「黙りなさい、この猫馬鹿」

「猫は正義だろう」

「そう言うところが、まともじゃないって言ってるのよ!」


 テオに喰って掛かる私の横からヴィックが立ち上がり、対面のソファに近寄るとそこに座る三人となにやら話し出す。


 小声で会話し笑い合う四人へ、胡乱な目を向ける。


「なに話してるのよ」

「テオとツェリはお似合いよねーって」

「「お似合いじゃない!!」」

「…もう結婚すれば良いと思いますよ、義姉上あねうえ義兄上あにうえ

「誰が義兄上だ!?」「誰が義兄上よ!?」


 からかう気満々のチビふたりに、声をそろえて反論する。ああ、こう言うところが、お似合いとか息ぴったりとか言われてしまうのに…。


「でも父上は乗り気ですよ?自分で確認していたでしょう?」

「ちゃんと嫌だって伝えたわ」

「今は誰とも婚約する気がない、でしょう?はっきり、テオとの結婚が嫌だと言ったわけじゃない」


 アーサーの突っ込みに、ぐっと詰まる。

 現状最良の選択肢であることは、理解しているのだ。そもそもそうでないなら、エリアルがイチ押しするはずがないのだから。


−ツェリ、出られますか?


 返答に迷ったところで折良く、エリアルから通信が入る。


−出られるけれど、少し待って


 これ幸いと、逃げることにする。


「アルから通信が来たわ」


 こんこんとチョーカーを示して、会話からの離脱を宣言した。そのまま目を閉じて、通信に集中する。


 久し振りに連絡して来たと思えば、内容は事務連絡だった。

 導師が私を、呼んでいるらしい。


 恐らくエリアルの目の前にいるのであろう導師と、エリアル越しに段取りを組む。


−時間を取れなくて、申し訳ありません、ツェリ

−あとで、埋め合わせしなさいよ

−必ず


 最後に謝罪を付け加えて、通信は途切れた。目を開ければ、自分に向けて視線が集中砲火されている。…会話が止まっているのには、気付いていたけれど。


「単なる事務連絡よ。導師からの呼び出しを伝えられただけ」

「元気そうなの?」

「通信が来るんだから、生きてはいるでしょう」


 念話だから、声でようすは計り取れない。わかることを端的に答えれば、訊ねたオーリィはぶすっと唇を尖らせた。


「生死じゃなくて、元気かどうかよ。世間話くらい、しなかったの?」

「…しなかったわね」


 言われてみれば失念していた。エリアルからも、訊かれなかった。エリアルのことだから、なにかしら私の安否を知るすべを持っていそうだけれど、それでもいつもなら元気かくらい訊いたはずだ。そんな小さな気遣いも出来ないほど、切羽詰まっているのかしら。


「まあ、導師のところに行けばたぶん会えるでしょう」

「…ずるい」

「ずるくないわよ」


 オーリィには笑って答えたけれど、少し心配になった。

 …導師のところへ行ったときに、会えれば良いんだけど。




     ё    ё    ё    ё    ё




 額に手を当てて、ブルーノが問い掛ける。


「これぇ、班長と副班長の報告会ですよねぇ?」

「ああ、そうだな…」

「その通りだ…」


 今回の演習合宿を取り纏める教員と、次回の演習合宿を取り纏める教員が、視線をそっと逸らしながら頷いた。


 ですよねぇと頷きを返したブルーノが、首を傾げて問いを重ねる。


「それならどうして、僕まで呼ばれているんですかぁ?」


 ブルーノは、班長でも副班長でもない。判断力や統率力はあっても、戦闘力が劣るためだ。加えて有能な治癒魔法使いとして、急遽呼び出しを受ける可能性もあるため、教師側の話し合いで自由に動けなくなる役職には着けないことが決定されている。


 ゆえに、ブルーノがここに呼び出される謂われはないのだ。


 もっともな指摘を受けた教師たちが、気まずげに視線を落とす。


「すまん…」

「だが、この面子を纏めきれる生徒が、ほかに思い付かなくてな…」

「べつに、スーだって大丈夫でしょう」


 隣に座るスタークを示して言う。王太子派ながら第二王子派や中立派の生徒にも一目置かれているスタークがいれば、纏め役としては十分のはずだ。


 公正を期すために中立派や第二王子派の纏め役を加えるならともかく、さらに王子派の纏め役を加える必要性がわからない。

 その気持ちはスタークも同じだったらしく、ブルーノとそろって疑問の眼差しを教師たちに向ける。


「…客観的な意見を増やしたかったんだ。お前らの班の成果が、突出し過ぎているのが悪い」

「それは先生方の人員配置が悪かったのでしょう。僕たちは、与えられた課題を忠実にこなしただけです」

「…そう言う毅然とした意見を、求めているんだよ」


 ぐっと拳を握って、次回の演習合宿を取り纏める教員−バルナバス・パッシェン、学年始めの模擬試合の取り纏めも行った教員だ−が主張する。ほかの生徒たちに比べて交流関係が広く、ときに教員たちからも意見を求められるブルーノは、誰が相手でも忌憚ない意見をはっきり言う。

 話を円滑に進めたいのかと気付いて、ブルーノがため息を吐く。


「…わかりました。ひとまず納得しますから、話を進めて下さい」

「悪いな」


 教員が謝罪し、報告会が始まる。班員、行き先、課題に、課題の達成状況、班員の受講態度、体力、適性などが、それぞれの班長・副班長の口から語られた。やはりブルーノたちの班にとりわけ難易度の高い課題が割り当てられていたらしく、ほかの班の課題にそこまで難しいものはなかったが、それでも独力で完全に達成出来た班は半数程度のようだ。


「班員は、俺、ラフ、ブルーノ、パスカル、クラウス、ヴィクトリカ殿下、テオドア、エリアルに、普通科からツェツィーリア・ミュラーと留学生のピア・アロンソ。行き先はツァボルスト高地。課題はアストリットの眠り薬の解毒に必要な材料、クマル草、ククルクの地下茎、光水草ヒカリミズクサ、レスベルの種、ギャド、鷹山羊鹿タカヤギシカのオスの血液を採集することだった」


 意図的に最後に回されたのだろう。トリを飾るスタークの言葉は、班員を並べた時点でざわめきが生じた。その後ざわめきも収まらぬ中、課題の羅列でまたざわめく。

 それぞれの学年におけるトップレベルの剣術実力者生徒に加え、学院屈指の魔法持ちが並べられたのだ。これまでの班構成で気付いていた者も、はっきり聞けば驚かずにいられない。特に一年に関しては、誰が演習合宿に参加するかもはっきりしていないから余計だろう。

 その上で、課題の採集対象が六種だ。いままで多い班でも採集対象は四種で、班によっては一種だったり単なるお遣いだったりだったりしたことを鑑みても、驚きの難易度だろう。なにせ、一種類の採集対象すら見つけられずに戻った班すらあるのだ。


 ざわめきが収まるのを待って、ラファエルが報告を続ける。


「採集は全種成功。期限内に帰還した」


 三度目のざわめきは、最大になった。顔をしかめたラファエルが、腕を振る。


 ばちっ


 ひとの肉が叩き合わされる音に、ざわめきが収まる。


「俺に八つ当たるな」

「静かになっただろう」


 頬を殴らんと振るわれた腕を手のひらで受け止めたスタークが文句を言い、鼻で笑ったラファエルがほかの面々を睨み伏せる。


「意見があるならあとで聞く。まずは黙って、聞け」


 先の二度の時点で腹に据えかねていたのだろう。明らかに不機嫌なラファエルの肩を、ブルーノが叩く。


「こぉら、ラフ?みんな驚いちゃっただけなんだから、そんなに睨まないのぉ。みんなも、驚くのはわかるけど、報告中は静かにしてねぇ?」


 ふんわりとした話し方を崩さないブルーノの態度に、張り詰めかけた空気が和らぐ。ラファエルも不機嫌さは残ったが威圧は減らして、言葉を続けた。


「三年の評価は割愛。二年は相変わらずだ。パスカルは補佐に適性。ほかの部分も問題なく、他者との交流もそつなくこなす。ただし、ときおり注意力散漫になることがあるのでそこが改善点だ。クラウスも実力に問題なし。言動は調子の良過ぎるところもあるが、それが周囲の雰囲気を良くしたり交流を円滑に進める役に立つから、直すべき点ではないだろう。使い方次第だ。それから、クラウスの呼び名はこれからクララに統一するようにと、ブルーノからのお達しだ。この件は、本人の承諾も得ている」


 にっこり。

 ラファエルの隣で微笑んだブルーノへ、瞬間視線が集まり、即座に逸らされた。クラウスのクララ呼びが、完全に確定した瞬間だった。


 一年の評価を前にしてラファエルがスタークへ目を向け、続けろと促されて従う。


「ヴィクトリカ殿下も概ね問題なしだが、騎士として見るなら体力は改善の余地ありだな。魔法持ちとしては問題ない。魔法でなまものの保存や結界が可能だ。ただし、食事は受け付けないものもあるようだ。料理はまだ手伝い程度だな。テオドアも実力は問題ないが、注意力や気配りをもう少し鍛えるべきだ。魔法は自己強化のみなので割愛。料理はひとりで任せても大丈夫だが作れる品数は限られる。エリアルは体力、戦闘力、知識、魔法共に騎士として通用する実力だろう。三年間のさらなる伸びに期待する。勘も運も良いようだな。機転も利いて気遣いも出来る。なにより料理の腕が良い。未知の食材を与えてもしっかり料理にして出せる腕だ。まさか演習合宿であれほどのものを食べられるとはな。美味かった。また食べたい」

「ラフ、料理の感想になってるよぉ」


 苦笑したブルーノに目を向けられて、スタークが報告を代わる。


「一年三人とも指示を良く聞くし素直に従う。意見もはっきり述べる。まだ未熟な部分も見られるが、これから学んで行けば申し分ない騎士になれるだろう。ただ、エリアルに関しては独断での行動がたまに出る。必要とあらば危険にも真っ向から突っ込んで行く危うさがあるので、注意と改善が必要だ。頭が回る上に考え方が柔軟で、思い付いたことを単独で実現する能力もあるので、うっかりするととんでもないことをやらかしかねない」


 淡々と語られる内容にいろいろと言いたいことはありそうだが、先ほど怒られた手前みな黙って聞いている。


「ツェツィーリア・ミュラーは水魔法が強力だな。かなり応用も利く。体力も、普通科生としては高い方だ。根性もあるし態度は友好的で指示もきちんと聞く。必要な意見は述べるが不要な文句は言わない。料理も一般的な騎士程度に出来る。魔法使いとして実践に出るのに、理想的な人材だろう。体力面を除けば、足を引っ張ることもない。ピア・アロンソは体力でミュラーに劣るし、少し引っ込み思案だがそれを除けばミュラーとほぼ同評価だ。留学生だが意志疎通に不自由はない。料理も出来る。加えて、アロンソは光魔法が使えるため、夜間や洞窟内の探索には有利だ。以上。なにか質問があれば聞く」


 ぱっと手を挙げたのは、ウルリエ・プロイス伯爵子息。


「なんだ、ウル」

「あー、訊きたいことはいろいろあんだが、とりあえず、殿下が食えないものってなんだ?」


 ウルリエは学年始めの模擬試合で、準優勝した実力者だ。王太子と同じ班になる可能性が十分考えられる。そのための、確認なのだろう。


 答えに迷ったブルーノとスタークが顔を見合わせた隙に、ラファエルがあっけらかんと答える。


「蜥蜴だな」

「…は?」

飛蜥蜴トビトカゲだ。美味いのに、受け付けないらしい」

「…あと、酸っぱいものは、苦手、みたいだよぉ?」


 言ってしまったなら仕方ないと、苦笑いしたブルーノが補足する。


「普通に食卓に上がるものなら食べられるが、食べつけないもの…まあ、爬虫類や昆虫のようなゲテモノ類だな…は、駄目だそうだ」


 こちらは本人に訊いての情報だろう。視線を逸らしつつスタークが言った。


「いや、待てよ」


 今までは報告する班を指名するくらいしかしていなかったバルナバスが、こればかりは聞き捨てならんと声を上げる。


「お前ら、王太子殿下になに食わせてんだ」

「飛蜥蜴だが?」

「飛蜥蜴…です」

「…飛蜥蜴ですね」


 答える側は約一名を除いて思いっきり目を逸らしている。


「飛蜥蜴なんてどこで…あ、いや、それは良い。なんでんなもん食おうと思った」

「毒のない種だった」

「…狩って来られて、内臓まで抜かれていたら、食べるしかないじゃないですかぁ」

「蜥蜴を狩るラフを止められず…申し訳ありません」


 態度と返答でだいたい察したらしいバルナバスが、スタークとブルーノへ憐れみの視線を向ける。


「…調理は、スタークが?」

「いえ、エリアルが。言われなければ蜥蜴だとは気付かない出来で、殿下も普通に食べていたのですが、蜥蜴と聞いた途端食べられなくなってしまって」

「騙し討ちで、食わせたのか…?」

「まあ、はい、そうなりますね」

「あとからちゃんと謝っていたし、殿下には別途で新しく料理を作ってましたよぉ?騙し討ちと言うより、先入観なしで食べて欲しかったらしいです。実際、美味しかったですし」


 そうか…と低く呻くように答えたバルナバスは、やったのがサヴァンで良かったと呟いた。


「…やはり殿下は次回もサヴァンと組ませるべきか?しかし…」

「質問の続きをしても?」

「ん、ああ、続けて良い」


 考え込むバルナバスへ、ウルリエが声を掛けた。

 了承を得てスタークたちへ目を戻す。


「なにから訊くか…、あー順番に行こう。六種も良く見つけたな?」

「採集対象のうち、二つはおおよその場所がわかっていたからな。だが、場所のわかる採集対象のひとつ含む五つに関しては、ほぼエリアルのお陰で採集出来たものだ。エリアルなしでは、課題の達成は不可能だっただろう」

「初日で三つ達成、だもんねぇ」

「特に鷹山羊鹿とククルクが無理だろう。私も探したが、見つからなかった。クマル草は、見つけられたんだがな」


 ラファエルの言葉で、やっぱり対抗意識あったんだぁと、ブルーノが苦笑する。


「まぁ、はっきり言って優秀な生徒の鼻っ柱叩き折ってやろうって言う魂胆が透けて見える課題だなぁと、思わなくもなかったよねぇ?」

「…まあ、そうだな」


 ブルーノ、スターク、ラファエルの視線が、今回の合宿を取り纏めた教員−モーリッツ・ボールシャイト、一学年の学年主任だ−に集まった。


 額に汗を浮かべたモーリッツが、はは…と乾いた笑いを漏らす。


「課題こなしちゃって、残念でしたねぇ?」

「いやいや、生徒たちが優秀なのは、喜ばしいことだろう、うん」

「…鼻っ柱は、折りましたが。エリアルが」

「うん。ばっきり行かれたねぇ…」

「ん!?なんだ、それ、詳しく!!」

「…やっぱり、鼻っ柱叩き折ってやろうと思っていたんですねぇ?」


 身を乗り出したモーリッツへ、ブルーノが完璧ににこやかかつ極めて冷ややかな笑顔を向ける。


「え!?あ、いや、ソンナツモリハ…」


 語るに落ちたモーリッツは、だらだらと汗を流しながら首を振った。ため息を吐いたブルーノが視線を落とし、額に手を当てる。


「…彼女の隣に立つには僕やミュラー嬢でも力不足だと」

「…え?」

「言われました。はっきりと、足手まといだと。己を過信しているつもりはありませんでしたが、知らぬ間に、驕っていたみたいですねぇ。これでも強くなったつもりだったんだけどなぁ…。ねぇ、高い鼻を折られましたよぉ?満足ですかぁ?」


 苦く笑っておどけるブルーノに、スタークやラファエルを含めた全員が、瞠目し言葉を失った。


 ブルーノは国内、いや、あるいは世界で比べても、屈指の治癒魔法使いだ。そしてツェツィーリア・ミュラーは、そのブルーノをはるかに越える魔力の持ち主。

 そのふたりをして足手まといと言うならば、誰が隣に立てると言うのか。


「…その言葉、俺も初耳だが?」

「いなかったからねぇ、僕とミュラー嬢と彼しか」

「それ言っちまうなら、騎士には向かねぇだろ?」


 顔をしかめたウルリエが言う。


「真面目で良いやつと思ってたが、それが本音ならとんでもねぇやつじゃねぇか」

「んー…それはどうかなぁ?ねぇ、例えば前回の合宿で、亜翼竜アヨクリュウ討伐に僕が混ざるって言ってたら、ウルはどうしたぁ?」

「止めたな。ブルーノじゃ無理だ」

「そう言うことだよぉ。僕やミュラー嬢は前線に出るべきじゃないって、エリアルは言ったんだ」

「いや、亜翼竜なんてそうそう…って、もしかして、あの噂ガチなのか!?」


 がたっと椅子を蹴立てて、ウルリエが、ばんと机を叩く。


 ブルーノはゆったりと、首を傾げた。


「噂ってぇ?」

「ツァボルスト高地に亜翼竜の大群が出たが、騎士科の演習生が撃退したとか言う、眉唾もんの噂だよ」


 ブルーノが、教員ふたりに目を向ける。


 バルナバスが息を吐いて、ウルリエへ目を向けた。


「ウルリエ、座れ。その件はあとで俺から説明するから」

「あ、ちなみにエリアルが鼻っ柱叩き折ったって、そのことが原因じゃなく、班員全員と腕相撲して勝ったことだからぁ」


 足手まといの件は単なる教員への嫌がらせだったのだろう。沈んだ空気を払拭したブルーノが、しれっと爆弾を投下した。

 先ほどとは別の意味で驚嘆させられ、今度はスタークとラファエルを除いた面々が、ぽかーんと目と口を開ける。


「「…は?」」


 一瞬前の真面目な空気を行方不明にして、バルナバスとウルリエが茫然と問い返す。


「だからぁ、負かされたのぉ。騎士科とは言え、一年の女の子にぃ、騎士科の三年含めた班員全員がぁ、腕相撲でぇ」

「…冗談、だよな?」

「本当だよぉ?スーとか、手も足も出なかったよねぇ?」

「…ああ」


 バルナバスへのスタークの答えで全員が思い浮かべたのは、エリアル・サヴァンの細腕だ。一般的な令嬢に比べれば太いのかもしれないが、騎士科生として見るならば下から数えた方が早い貧弱そうな腕である。


 ウルリエが思い付いたように問う。


「あ、魔法アリでか?」

「魔法ナシ。僕が保証するよぉ」

「嘘だろ?」

「だから本当だってばぁ。僕もスーもラフも、負けましたぁ」

「…次は負けない」


 悔しげに吐かれたラファエルの言葉は、どんな説明より明白に事実を物語っていた。


「ちょ、まじかよ、手加減したとかもなく!?」

「しつこいよぉ、ウル。あんまりこの話引き延ばすと、スーやラフの心を抉るから。気になるなら、ウルも挑んでみればぁ?エリアルに、腕相撲」

「…そんなに強ぇのか?」

「強い。下手すると、フリージンガー団長に勝つかも」

「あー…、そう言う」

「そう言う。僕も本気でやったけど、負けたからねぇ」


 最後の会話が理解出来たのは、会話した本人とラファエルのみだろう。

 バルナバスが顔を引きつらせて、生徒たちを見回す。


「ほかにラファエルの班へ質問は」

「サヴァンの独断行動ってのは、どんな?」

「ラフやお前と同じようなものだ」

「…わかりやすい説明どうも。一年の魔法について、テオ以外をもう少し詳しく教えてくれ」


 さんにん顔を見合わせて、ブルーノが代表する。


「殿下は時間。攻撃はなしで防御と特殊利用専門みたいだねぇ。一時的にだけれど、ものの時を止めたり進めたり出来るから、肉の発酵とか生鮮物の保存とかに役立つよぉ。大きさと時間で魔力を消費するから、濫発は出来ないらしいけど。そこはおまけで、主力はやっぱり結界みたいだねぇ」


 王太子の能力をこんなに赤裸々に伝えて良いのかと、途中で教員へ視線で確認を取りつつ説明。


 順当に行くと先に騎士科のエリアルについて話すべきだが、ひとまず飛ばしてツェツィーリアについて話し出す。


「ミュラー嬢は水。彼女も殿下と同じく、防御と特殊利用が主だねぇ。防御壁は、見たことあるよねぇ?本気で張れば模擬試合のものより強く出来るみたいだよ。面白い魔法の使い方としては、動物の血抜きが一瞬で出来ることかなぁ。びしょ濡れの身体を一瞬で乾かしたり、身体を浄化したりも出来るから、便利だねぇ。川がなくても、水を入手出来るし、後方支援向きの能力だろうねぇ。アロンソ嬢は光。この子も攻撃は出来なくて、出せるのは大きいランタンくらいの光。魔力も特出して多くはない。でも、便利だし、このくらいの明かりひとつなら丸一日出していられるみたいだよぉ。少し離れたところに浮かせることも出来るってぇ」


 このくらい、と、ブルーノがバスケットボール大を両手で示して見せる。


 そうしてさんにん分の説明を終えたブルーノは、いちど言葉を止めて教員ふたりを見た。

 続けて良いと言うジェスチャーを受けて、語るのは黒い猫の魔法。


「エリアルの魔法は精神と音だけど、精神については強力ってことしかわからない。だから話すのは音魔法についてだけど、彼女の場合一般的な音魔法は苦手らしいよ。演奏は出来るけど、癒やしはあまり乗せられないらしい。だから、癒しの魔法を期待するのはやめた方が良いねぇ。代わりに、風魔法に近い物理的な利用は得意みたい。防御、攻撃、特殊利用共に可能な万能型で、特に攻撃は…」

「…猪を一撃で気絶させた。鹿もだ。接触する必要があるようだが、ほぼ無傷で獲物を仕留められる。危険なので対人では使わないと言っていたが。…言い忘れていたが、エリアルは動物の忌避剤と誘引剤になるらしい。忌避させるか誘引するかは本人の自由になる。ある意味これも魔法だな」


 魔力のせいだもんねぇと、ブルーノがスタークの説明に頷いて話を続ける。


「防御壁に関しても、強度はわからないけど展開は早いね。特殊利用としては、音の振動を利用していろいろ出来るみたい。地面のようすを探ったり、土や岩を崩したり、木の枝を揺らして実を落としたりねぇ。音魔法の設置も出来るから、準魔道具みたいなものも作れるだろうねぇ」


 準魔道具は魔道具(よう)のものの総称で、魔道具と異なり魔力の充電が出来ないことが特徴だ。サイリウムや使い捨てカイロのように、込められた魔法を使い切ると効力を失ってしまうのが準魔道具、ペンライトやゆたんぽのように、魔力を込めて再利用出来るのが魔道具だ。


 んー、と唸って首を傾げ、ブルーノがこれくらいかなぁと呟く。


「なにか疑問とか、ある?」

「サヴァンが主に使うのは音魔法、ってことか?」

「うん。実際使っているところを見られたのは、音魔法だけだねぇ」

「動物を誘引ってのは、どんな風に」


 こちらの質問には、スタークが答える。


「普通ひとがいれば姿を見せない野生動物が、現れて襲い掛かって来る。と言っても、ある程度の大きさのものだけだろうが」

「具体的には?」

「猪一頭と鷹山羊鹿のつがいだな。誘引してたのは一時間くらいだから、来たのはそれだけだった」


 スタークの答えを聞いたウルリエが、少し呆れた顔になる。


「猪と鹿二頭あって、なんで蜥蜴まで食おうと思ったんだよ」

「ブルーノが食い過ぎたからだな」

「えっ?ラフとスーだっていっぱい食べてたでしょう?」

「…アルの料理が、美味いのが悪い」

「いっぱい食べても、にこにこ笑って許してくれるからぁ…」


 えへ、と笑ってごまかすブルーノに、目を怒らせたウルリエが机をぐーで殴る。


「ずりぃぞお前ら!おれたちが寂しく携帯食糧食ってるときに、可愛い後輩の手料理で肉三昧か!!くぅっ、爆ぜろ!!」

「…うちの班、まともに料理出来るやつがぼくとウルリエしかいなかったんだよなぁ」


 ウルリエの班の副班長が、遠い目でぼやく。ほかにもそこかしこで、遠い目をした生徒の姿が見られた。


 騎士科も三年で班長に指名されるような生徒ならば、たいていが野営で食べられるものを作れる技術を持っている。しかし、食べられるものを作れることと、美味しい料理を作れるかは、べつものなのだ。


「スーの班、ラフが地雷で殿下が苦手な以外、全員料理出来るじゃねぇか。しかも、三年二年それぞれ屈指の料理上手がふたりずつ!班分け偏り過ぎだろ!!」

「…しかも、主に料理してたのエリアルだからねぇ」

「もっと均等に料理人を配置しろよ…!!」


 ウルリエの魂の叫びに、うんうんと賛同する生徒が多数。班分けを取り仕切ったモーリッツが、無言で視線を逸らした。戦力や派閥で班分けをしたため、料理の腕まで考えていなかったのである。


 そんな阿鼻叫喚を眺めていたラファエルが、ああ、と頷く。


「エリアルは毎朝早起きして、朝食を用意してくれていたな。弁当まで用意してくれた日もあった」

「それは自慢かこの野郎ぉ…!!」


 羨ましいぞ畜生っと、ウルリエが歯を喰い縛る。


「…話が脱線して来たから止めるぞ。引き続き、各班の課題点について伝える。モーリッツ」


 殺気立ち始めた場をバルナバスが仕切り直し、モーリッツに話を振る。頷いたモーリッツが、各班の課題に対する点数を発表し始めた。


 絶対評価の点数は、課題だけだと及第が七割。ここからさらに班長副班長の報告や、彼らが持っていた記録の魔道具を元に加点や減点が行われる。課題をこなせなくても真面目に取り組んでいれば加点されて及第になるし、他者の力を借りて課題を達成した場合は、もちろん減点だ。


 課題点で満点をマークした班は、全体の二割に届かない程度だった。そんな中で伝えられる、


「スターク・ビスマルク班、満点、と、加点二十」


 課題点に、加点付きの評価。そんな班はほかに存在しなかったし、百点で満点の課題点に、二十点もプラスされるのは異常な加点だ。


 教師の話のため黙って聞いていた生徒たちが、堪えきれず驚きの声を上げる。


 評価を受けたスタークやラファエルも、さすがに驚きをあらわにしていた。

 ひとり採集したものの価値を正確に理解していたブルーノだけが、涼しい顔だ。


「さすがにそれは、おかしいのでは?」

「王太子殿下だからと、媚でも売っているのですか?」


 疑いの声を上げたのは第二王子派の生徒。三年二年には第二王子派の生徒は少ないが、いないわけではない。


 不正など疑ってもいなかったのだろう、ウルリエが明らかに不快そうな表情を浮かべた。


「おい、言い掛かりは、」

「ウル」


 反論しようとしたウルリエを、静かな声で止めたのはブルーノ。


「…確かに、この加点はずるいよ」


 すうっと目を細めて、言い掛かりを是と認める。

 思わぬ言葉に、声を上げた第二王子派の生徒すら驚いていた。


「僕らの班の課題の採集対象は六種だもんねぇ。一種類しか採集対象を与えられていない班に比べて、加点を受けられる対象が多いことになる。たとえ、加点を受けるには六種類全てについて満点になる品質と量を確保した上で、さらに加点されるような品質のものを採集しなくちゃいけないとしても、ねぇ」


 ここにいる中で、最も薬の材料に詳しいのはブルーノだ。自分たちの採集したものに対する絶対の自信を、ブルーノは持っていた。


 だからこそゆったりと微笑んで、鷹揚な態度が取れる。


「ずるいって言われても仕方ないよねぇ。スーの班には僕がいたんだからぁ。どんなものが薬効が高いのか、どう採集すれば品質の高いものが得られるのか、熟知して助言したし、保存方法も最高のものを選んだ。いくら、助言通りに採集するなんて初心者にはほぼ不可能だとしても、僕の助言がないことに比べれば有利だからずるいって言われても、否定は出来ないなぁ」


 立て板に水とばかりに話す内容は、優秀過ぎてごめんねぇ☆とでも言いたげなもの。


 ああ、これは相当怒ってるな、ブルーノ。


 気付いたブルーノと親しい生徒たちが、悟りを開いたような目になった。


 バルナバスが、余計なこと言いやがってと言う目で、言い掛かりを付けた生徒を睨んだ。


 そんな周囲などものともせず、ブルーノが話を続ける。


「しかもうちの班には、ミュラー嬢とエリアルがいたもんねぇ。内出血のひとつも起こさせずに牡鹿を気絶させるなんてエリアルでもなきゃ出来ないだろうし、その鹿の血をいちども空気に触れさせずに抜き取って密閉の袋に入れるなんて、ミュラー嬢ほどの精密な魔法使いでなきゃ無理だよねぇ。ククルクの地下茎を傷ひとつ付けずに掘り起こせたのも、根の一本も千切らずクマル草を採集出来たのもエリアルのお陰だし、完璧に熟したレスベルだけを、木に登りもせず大量に採集出来たのも、奇跡みたいな大きさのギャドを採集出来たのもエリアルのお陰だから、ミュラー嬢とエリアルが班にいたのがずるいって言われても、そうだねぇとしか言えないやぁ」


 にこにこと微笑みながらブルーノが語る、ここまでやったら加点されて当然だと思わせる証拠たち。


 駄目押しとばかりに、畳み掛けて行く。


「光水草なんて水深五メートルはある地底湖の底に生える草で、潜れる人間がいなきゃ採れないところを、うちの班はふたりも潜れる人間がいたからねぇ。全部品質保存の魔道袋に入れて持ち帰ったし、特にククルクと鷹山羊鹿の血は最高品質のものを提出した自信があるけど、これだけ班員に恵まれていたら、そのくらい出来て当然だよねぇ。その程度で加点なんておかしいって、言われても反論出来ないなぁ。なにせうちの班員は、王太子殿下のために編成された、実力者しかいなかったんだからねぇ」


 班員が優秀過ぎたことに対する考慮は、するべきですよねぇ?

 にこやかなブルーノの問い掛けに、モーリッツが答える。


「そのハンデとして、課題の難度を上げてある。お前たちの班だけ課題が、春期の演習合宿相当のものだ。と言うかそもそも、鷹山羊鹿の捕獲なんて本職でも一ヶ月かけてこなす業務だぞ?五日で仕留められるなんて、思っていなかったさ。お前らには伝えていなかったが、六つのうち四つで満点のものを持って来れたら、及第をやるつもりだったんだよ」

「…それはまた、ずいぶんと難易度を下げてますねぇ」

「五日で洞窟二つだぞ?それでも学生にやらせることじゃない。お前ら以外の班をツァボルスト高地に行かせてたなら、課題はレスベルの採集のみだ」


 んー…、と唸りつつスタークやラファエルと視線を合わせたあとで、ブルーノが苦笑した。


「それ、下手すると死人が出てましたよねぇ?」

「そうだな。行ったのがお前らの班で良かったよ」

「死人って」


 ぎょっとするウルリエに、ブルーノが肩をすくめて見せる。


「ちょうど僕らがレスベルを見つけた付近でね、洞窟が崩落して大穴が空いていたんだぁ。かなり大きな穴だけど、下草や灌木で見えにくくなっていて、パスカルとテオドアくんが落ちかけた。エリアルのお陰でふたりとも無事だったけど、穴の深さが十メートルはあったから、エリアルがいなかったら死んでただろうねぇ」

「またサヴァンか!」

「いやほんとに、エリアルが優秀過ぎるんだよ。ウルも、一緒に演習合宿行ってみたらわかるってぇ」


 その分、危険も多いみたいだけどねぇ。


 ブルーノが小さく続けた言葉についてウルリエが追求する前に、モーリッツがぱんと手を叩いて話を切った。


「スターク班の評価については教員の中でも揉めたが、しっかり話し合った上でこれが妥当と判断された。ブルーノが言ったククルクと鷹山羊鹿だけじゃなく、クマル草とギャドについても最高品質のものが提出されたし、レスベルと光水草だって高品質だったんだ。さらに多くの加点すら考えられていたんだぞ?もし文句があるなら、薬学の教員に直談判しろ、ぶん殴られるから。あのババ…ハーゲンドルフ先生が発狂寸前まで興奮してて、こっちだって大変だったんだからな」

「…その被害は、僕らも受けましたからぁ」

「ああ…疲れてる時に、悪かったな」

「いいえぇ?」


 ブルーノがゆったりと首を振り、モーリッツが話を切り上げさせたので、第二王子派の生徒は不服げだったものの話は終えられた。


 モーリッツに代わって、バルナバスが話し出す。


「さて、報告会としてはここまでなんだが、伝えておくことがある。ウルリエが出した、亜翼竜の話だ」


 スターク、ラファエル、ブルーノの顔に、緊張が走る。それを視線でなだめて、バルナバスは続けた。


「ツァボルスト高地での亜翼竜の出現、これは事実だ。スタークたちが演習中にツァボルスト高地上空で亜翼竜の群れが確認された。これはスタークたちも、見ているな?」

「…はい」

「このため一時演習を中断し、ヴィクトリカ殿下からグローデウロウス導師に通信を入れた。そうだな?」

「その通りです。通信を入れた直後グローデウロウス導師が私たちの許へ来て下さり、ここで待機するようにと伝えたのち状況の確認に行かれました」


 スタークは、嘘を吐いていない。ただ、言わないことがあるだけで。


 頷いたバルナバスが、生徒たちを見渡す。


「グローデウロウス導師は即座に状況を確認し、しかるべき対応を取って下さった。ツァボルスト高地の安全はすぐに確保され、以降スタークたちは問題なく演習を続けた。合っているな?」

「ええ。導師から不用意に動くなとの警告は頂きましたが、幸いにも亜翼竜を目撃したのは四日目で、課題の採集は終わっていたため、その警告に従い以降は大人しく過ごし、五日目に無事帰還しました」

「なぜ亜翼竜が出現したかについては、現在調査中だ」


 バルナバスの説明で、生徒たちが納得の表情を浮かべる。

 亜翼竜を撃退したのは筆頭宮廷魔導師ヴァンデルシュナイツ・グローデウロウス。学生が倒したと聞くよりも、よほど納得の行く話だ。


 たとえそんなことは、誰も言っていないとしても。


 バルナバスの意図を酌んだのだろう。スタークもブルーノも、ラファエルさえも、バルナバスの説明に異を唱えることはしなかった。

 そもそも、語らない部分が多いだけで、嘘は言っていないのだ。ヴァンデルシュナイツがツァボルスト高地に来て、事後処理をして、安全を保証し警告ののち去った。このことは、紛れもない事実なのだから。


「ついでに言っておくと、グローデウロウス導師は課題に関してなにも手伝っていないぞ?そこは、導師本人からも班員からも確認を取ったし、記録も確かめた。グローデウロウス導師を疑うってんならまあ、疑っても構わないが、責任は自分で取れよ?」


 いくら第二王子派生徒と言えど、天下の筆頭宮廷魔導師さまに喧嘩を売ろうとは思わないのだろう。バルナバスのその言葉に反論する者はいなかった。


「俺からは以上だな。モーリッツ、なにかあるか?」

「いや」

「お前らから、なにか言いたいことは?」


 挙手するものはいなかった。


 目を細めて頷いたバルナバスが、立ち上がる。


「んじゃ、今日の報告会はこれで終わりだな。休暇中に集まって貰って悪かった。ご苦労さん。次の演習合宿でも、よろしく頼む。解散」

『ありがとうございました』


 声をそろえての挨拶に、バルナバスがひらひらと手を振って答える。

 モーリッツも追うように立ち上がり、ふたり並んで立ち去った。


「なぁ、時間あるか?」


 教員ふたりが去るのを待って立ち上がったウルリエが、スタークたちに歩み寄った。スタークとラファエルの首に腕を回して、にかっと微笑む。


「昼飯食い行かねぇ?合宿中の話、聞かせろよ!」

「ああ。良いな」

「…自ら悔しい思いをしたがるか。さすがウル。酔狂だな。付き合おう」

「んだよラフ。うちの班だってなぁ、飯以外は問題なかったんだぜ?飯、以外はな…」


 遠い目になったウルリエに、副班長が近付く。


「ぼくも行って良いかい?ブルーノも、付き合ってくれるだろう?」

「あ、ごめん、僕は…」

「ん?行けないのかい?」

「このあと、王都に行かなきゃいけないんだぁ」

「おや、忙しいね」


 ブルーノは学生ながらすでに貴族たちのあいだでは名の通った治癒魔法使いだ。なんやかやと、王都に呼ばれることもある。


 特に疑問も持たずに納得した副班長に、ブルーノがごめん、と言うジェスチャーを見せる。

 副班長は少し残念そうながらも、気にするなと微笑んだ。


「なら、また今度。次はブルーノかスタークと同じ班が良いな」

「そうだねぇ。じゃあ、もう行くから。またねぇ」


 ぱたぱたと手を振って部屋を出たブルーノは、ひと気がないところまで来てから呟いた。


「…なんなんだろうねぇ、グローデウロウス導師からの、呼び出しってぇ」


 班長副班長の報告会への召集と同時に手渡された、筆頭宮廷魔導師からの召喚状。

 ただ約束の時間が記されただけのそれを見下ろして、ブルーノは小さく首を傾げた。






拙いお話をお読み頂きありがとうございました


3/1の活動報告にて番外の小話を挙げておりますので

よろしければそちらもどうぞ(*´`*)


続きも読んで頂けると嬉しいです

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