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取り巻きCと初合宿 よっかめーそのに

本日二回目の更新です

前話を読んだ記憶のない方はそちらを先にどうぞ


公爵子息テオドア視点/悪役令嬢ツェツィーリア視点


前話別視点→その後


後半R15です

ガチのグロです真っ赤です

苦手な方は本当にご注意下さい


短めです

そして再度のぶった切れ注意報です<(_ _)>

 

 

 

「クロ?どうかした?」

「いえ」


 西の洞窟へ向かい始めてからのアルのようすは、どこかおかしかった。


 険しい顔で、しきりに周囲を警戒している。魔力も使って広く周囲を、探っているようだった。


 なにか気配でも感じているのかと俺も周囲を探ってみるが、特になにがいると言うわけでもない。天気が崩れそうなようすもないし、足元が崩れそうだったりもしない。


 これと言って問題の見つからない、平穏な光景が広がっている。


 だと言うのに、アルだけが、毛を逆立ててなにかに、怯えている?いや、気を高ぶらせている、か?


 とにかくなにか、異常なのは確かだ。


「大丈夫?具合、悪い?」

「大丈夫です。少し、眩しいなって」

「そうだねぇ、良い天気。疲れたら、言ってねぇ?」

「はい。ありがとうございます…」


 しかし、アルはなにも言わない。なにかあるならスーにいにでもブルーノ先輩にでも伝えれば良いのに、なんでもないと首を振る。


 明らかに、ようすはおかしいのに。


 危険があれば言うだろう。具合が悪くても、言うはずだ。

 それなのに、言わないのはなぜだ。


 本人も、理由がわかっていない?


 理由がわからないながらなにかは感じていて、だからその原因を、探しているのか?


 進むにつれて、アルの異常さは増して行った。歩きながら、全員が、アルを意識している。


 前を進むラフ先輩が、ちらりと後ろを見た。

 最後尾を歩くスー兄の、意見を確認したのだろう。


「少し休もう」


 ツェリやアロンソも疲れて来ていたからだろう。スー兄が、休憩を指示する。

 アルの緊張が、周囲まで疲れさせていた。


「…」


 座り込んだアルが、ぺたりと地面に触れる。地面を、調べているのか?


「クロ、なにか異常があるなら言え」

「いえ。なにも、異常はないです」

「本当に?具合が悪いとかじゃない?」

「大丈夫です。元気です」


 スー兄に問われても、ブルーノ先輩に案じられても、アルは頑なに異常を否定し続けた。

 自分がいま普通でないことは、自分でも理解しているだろうに。


「クロ、あなた変よ?」

「申し訳ありません。ですが、本当に、大丈夫、ですから」


 ツェリが指摘しても首を振る。こうなったら、きっとなにも聞き出せない。


 スー兄も追求は諦めたのか、休憩を終わらせる。


 出発してからも相変わらず、アルはおかしいままだった。


 どんどん気配を尖らせ、足取りも重たげになって行く。


 洞窟まで、残り三分の一を過ぎた頃だろうか。ついに、アルの足が止まった。


「クロ?」


 アルに合わせて、全員が立ち止まる。うつむいたアルの顔は見えず、ブルーノ先輩の呼び掛けに答える代わりに、


−ちりん


 澄んだ鈴の音が響く。


 俺とヴィック、それにツェリが、はっとしてアルに近付く。

 アルの首輪の鈴の意味。それは、感情の揺れを示す警告装置だ。


「アル」


 ツェリの呼び掛けに、アルが顔を上げる。顔に浮かんでいるのは、凍り付いたかのような無表情だった。


「…合宿のあいだは、わたしの言うことを聞く、と言う、約束でしたよね?」


 表情こそ固いものの、出た声は穏やかだった。鈴の音も、鳴らない。


「そうね。そう言う約束だったわ」


 アルに心を揺らさせないためだろう。ツェリが静かな声を心掛けて、肯定の言葉を返した。


 身体には、触れない。それが、グローデ導師からの指示だからだ。


 アルは頷いて、口を開く。


「戻りましょう。洞窟へ向かっては、いけません」

「…え?」


 声を上げたのはツェリ。しかし、目を見開いたのは恐らく全員だろう。


「それ、どう言う、」


 ツェリの問い掛けの途中で、アルは空を指差した。その瞬間、日が陰る。


 雲か?と思い見上げた先にいたのは、


飛蜥蜴トビトカゲ!?」

「飛蜥蜴じゃない。あれは、劣翼竜レツヨクリュウ…いや、亜翼竜アヨクリュウか!?」

「どうしてこんなところに、しかも、あんな大群…!」


 空飛ぶ強大な爬虫類。それも、とっさには数え切れないほどの数だ。一方向、俺たちが、目指していた方向へ向けて、飛んで行く。


 混乱する俺たちを叱責するように、アルの声が耳を打つ。


「洞窟は、危険です。ヴァンデルシュナイツ導師を呼びますから、基地に戻って結界と防壁を張りましょう。三人分の壁を張れば、持ち堪えられます。ですから、今すぐ戻りましょう。これは、命令です!!」


 反対意見を出せる者はいなかった。異常事態とアルの気迫に、全員が完全に飲まれていた。


「あんちゃんが先頭を行って下さい。兄貴はお嬢を、テディはぴいちゃんをおぶって下さい。お嬢とぴいちゃんは、舌を噛まないように口を閉じて。姐さん、殿しんがりを頼みます。全速力で、基地に戻りましょう。さあ、早く!!」


 急かす声に誰も逆らえず、黙って頷く。疑いようのない合理的な案と、有無を言わせぬ拘束力を持った声。ラフ先輩ですら、逆らいはしなかった。


「頭、出来るだけ下げて。しっかり掴まって」


 小柄なアロンソを、背に乗せる。ツェリやアロンソを走らせるよりも、俺やスー兄が背負った方が早いだろう。速度重視の、的確な判断だ。


「行くぞ」

『はい!』


 合図して走り出したラフ先輩に続く。迷いなく走るラフ先輩の背だけを見て、俺は森を駆け抜けた。




 行きの半分近い速度で基地に駆け戻ったときには、みんな息も絶え絶えだった。

 へたり込んだ俺たちとテントを囲うようにツェリが厚く防御壁を張る。荒く呼吸を繰り返しながら、ヴィックも結界を重ねる。


 気付いたのは、ブルーノ先輩だった。


 愕然とした表情で、呟く。


「ねぇ…クロは?」


 ひとことで、心臓を鷲掴みにされた。いくら見回しても、目立つ漆黒の色彩は見当たらない。


 ツェリが首元のチョーカーに触れ、ヴィックが腕輪を耳に当てた。


「反、応、しない、わ…」


 両手で口許を被ったツェリの声は、聞き取るのもやっとなほどに震えていた。

 防御壁を解いて飛び出そうとしたツェリの腕を、とっさに立ち上がって掴む。疲れきった足はもつれて、腕を捕まえたツェリもろとも地面に倒れ込んだ。それでも辛うじて、ツェリの下敷きになって受け身を取る。


「悪い。だが、早まるな。グローデ導師が、避難させただけかもしれない」


 導師はアルを我が子のように大切にしている。危険から遠避けようとさらう可能性は、否定出来ない。そう、思ったのだが、


「いや」


 腕輪から耳を離したヴィックが、暗い顔で首を振った。


「エリアル嬢からグローデウロウス導師へ、連絡は行っていないそうだ」

「なっ!?」


 叫んだきり、言葉を失う。


 アルが逃げろと、指示を出したはずだ。導師に助けを求めるからと。

 そのアルがいなくなった上、導師に連絡もしていない?


「どこからいなかった。誰か覚えていないのか」

「ごめん」


 スー兄の問いに、ブルーノ先輩が顔を歪める。


「基地に着くまで、いると感じていたんだ。僕が、殿だったのに、」


 ブルーノ先輩の言葉の途中で、魔力の渦が巻き起こった。ぎょっとして、全員立ち上がる。


「エリアルっ」


 怒鳴り声と共に現れたのは、灰色斑の髪の人影。ヴァンデルシュナイツ・グローデウロウス。我が国の筆頭にして、唯一の宮廷魔導師。


「導師っ!?」


 驚く俺たちに見向きもせずに辺りを見渡した導師が、舌打ちをする。


「っの、クソガキ…はめやがった…」

「導師、いったい、なにが?」


 殺気立った導師が指を鳴らすと、なにもいなかったはずの場所から灰色斑の蝙蝠が現れた。


「それは…」

「エリアルに付けてた監視だ。あの馬鹿、無理やり撒きやがった」

「どう言うことです?」


 ヴィックの問い掛けに、蝙蝠を手に留まらせた導師が答える。


「認識阻害だよ。精神を操って、自分はこっちにいるって思い込ませた」

「それじゃあ、アルは最初から私たちを騙してたってこと?」

「…そうらしいな。通信も丸無視してやがるし、首輪の位置も隠匿してやがる」

「でも、エリアル嬢の精神魔法は」

「完全に封じられてるわけじゃねぇ。そもそもあんな首輪、アイツがその気になりゃあいつでも外せんだよ」


 国一番の魔法使いからの衝撃的な言葉に、意味を理解出来るものは唖然とした。


「そんなに、強い、と?」

「精神系なら、世界中探しても並べる人間なんざいねぇよ。クソっ、洞窟周辺へ飛ぶことすら、邪魔してやがる。地道に進むしかねぇのか」


 魔法を発動させようとした導師の腕を、ツェリが掴む。


「行くなら、連れて行って下さい」

「やめとけ。危険だ」

「だからよ」


 導師が腕を掴むツェリを、そして、前に出たブルーノ先輩を見下ろす。


「…下手打ちゃ、殺される。トカゲにじゃねぇ、エリアルにだ。こんだけやってひとを遠避けた以上、本気でる気だぞ、あの馬鹿は」

「その、本気のアルを止められる人間が、私とあなたでなくて誰だと?歯止めは、多いに越したことはないでしょう?」

「…サヴァンの魔法はときに、術者をも傷付けるのでしょう?僕がいれば、いざと言うとき役立ちますよ?」


 導師は思いっきり顔をしかめると舌打ちし、ツェリとブルーノ先輩の腕を掴んだ。


「どいつもこいつも、クソガキどもが」

「待っ、」


 さらなる呼び掛けは無視して、導師は消えた。ツェリとブルーノ先輩を連れて。


 ぱっと振り向いて張られた壁に触れたヴィックが、顔をしかめる。息を吐いて、その場に座り込んだ。


「導師が結界を重ねて行った。彼が解かない限り、私たちはここから出られない」


 ヴィックの言葉はまるで、死刑判決のように聞こえた。




     ё    ё    ё    ё    ё




 導師が降り立ったのは、山の中だった。


 そこに広がる光景に、絶句する。


「なに…これ」


 まるで、血の川。


 一直線の太い道を示すかのように、おびただしい数の多種多様な獣が、喀血して倒れ伏していた。


「…これが、“国殺しのサヴァン”だ。恐れるなら、ここで止まれ」

「「誰が」」


 返答は、メーベルト先輩と揃った。


 導師が鼻を鳴らして、クソガキが、と呟く。


「なら行くぞ」


 私たちを省みもせずに、歩き出す。


 行くべき道は、わかりやすかった。真っ赤に染まった地面を目印に、歩む。


「…わざわざ呼び寄せて殺してやがるか」


 導師がぼそりと吐き捨てる。


 エリアルがあえて動物を殺す?


 思いがけない言葉に、目を瞬く。


「アルはそんなこと、しません」

「理由なくはな。だが、理由があればやる。そう言うヤツだろ」


 エリアルを理解していると言いたげな導師の言葉に、こんなときにもかかわらず苛立つ。導師が私とメーベルト先輩を振り向いた。


「…心を揺らすな。まだ魔法が残留してる。囚われれば、死ぬぞ」


 はったりではない。直感で理解した。一歩進むたびに、心が重くなる気がする。


 ふいに、とん、とメーベルト先輩が私の背中を叩いた。


 すうっと、心が晴れる。


「え…?」

「僕ね、」


 背負って運ばれた私と違い森を駆け抜けたにもかかわらずしっかりした足取りで歩くメーベルト先輩が、静かに言う。


「身体治癒以上に精神治癒の適性があるんだぁ。だから、大丈夫」


 こちらを向いて、ふわり、と微笑む。笑っている場合じゃないだろうとは、思わなかった。


 精神治癒。比較的使い手の多い身体治癒魔法とは対照的に、適性を持つ者が極めて珍しい魔法だ。


 メーベルト先輩を聖女と評するひとの気持ちが、よく理解出来た。


「…あなたが同じ班で、良かったわ」

「間に合わせよう、ねぇ」


 そこからは三人無言で歩き続け、洞窟の入り口に辿り着いた。魔法で明かりを作った導師が、唸るように言う。


「覚悟して入れ。逃げ場のない空間は、淀む」


 洞窟の中は、ひどいありさまだった。今まで過ぎた通り道以上の死体が山になり、空気が赤く感じるほどの濃い血臭が漂っている。


 これだけの、力を、ひとりで?


 今さらながら、エリアルの抱えたものの大きさを思い知る。私だったら、これほどの力を持って、笑えるだろうか。振るわず、傲らず、壊れず、いられるだろうか。


 エリアル、どうか、無事で。


 祈りながら、進む。


 折り重なる死骸で足の踏み場などなく、死体の山を踏み締め、よじ登りながら進む。手も足も血に濡れ、服は余すところなく真っ赤に染まった。魔法で血を払うことも出来たけれど、やらなかった。エリアルの抱えるものの重さを、少しでも理解したかった。


 導師の警告通り、洞窟内では恐ろしいほど心が揺れた。

 暗い淵に心が落ちそうになるたび、メーベルト先輩がそっと引き戻してくれた。


 この手を、アルのところに。その一心で、折れかける心を奮い立たせる。


 どれほど、進み続けただろうか。


「地図が正しいなら、そろそろ最奥のはずだよ」


 メーベルト先輩が言ってからしばらく、細く長くそして暗く続いていた洞窟に、突然光があふれ、ぽっかりと広い空間に出た。


 はるか頭上に、明るい空が見える。洞窟の一部が崩れて、外が見えているようだ。


 その光に、照らされて。


「アルっ」


 眠るように目を閉じたエリアルが、横たわっていた。






拙いお話をお読み頂きありがとうございます


な ぜ そ こ で 切 っ た ?


ごめんなさい(ノД`)

そして本日更新はここまでです

続きは極力急ぎますとしか言えないです申し訳ありません


さらにレート変えたとたんのこの真っ赤さ

ほんとにもお…orz

これでもわたしの作品的にはまだマイルドな方ですとかね

ほんとにね…(--;)


見捨てず続きも読んで頂けると嬉しいです(T-T)

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