月の姫は天に還る
???視点
更新に間が空いてしまってごめんなさい
本編更新までまだ掛かりそうなので
番外と言うかなんと言うか…な投稿するのを迷ったお話なのですが
投稿します
エタってないよ!と言う生存報告くらいの気持ちでお読み下さいませ<(_ _)>
ひとによってはかなり蛇足に感じるお話だと思います(´・ω・`)
母は、いつも笑っているひとだった。
おぼろけな記憶を振り返っても、たくさんあるアルバムをめくっても、見つかるのは穏やかな笑顔ばかり。
少し幼く見える顔に幸せそうな笑みを浮かべて、目の前に立つひとへ慈しみの眼差しを向ける。
あまり、怒ったり泣いたり、しないひとだったそうだ。
もっと、わがままを言って良かったのに。
祖父母もおじおばも、揃って言う。もっと、わがままで良かった。もっと、甘やかしてあげたかったと。
母がわがままで周囲を困らせたのは、たったの二回きり。
わたしの父、つまり、母の夫に対して二回、子供が欲しいとねだっただけ。
一度目も二度目も、家族総出で思い留まらせようとした。
子供なんて、無理だと。
けれど結局、母は自分の意志を通した。
その結果がわたしであり、わたしの弟だ。
大丈夫だから。母はそう言って、我を通した。
まったくわがままを言わないひとだったから、みんな驚いたそうだ。そして、まったくわがままを言わないひとだからこそ、強く駄目だとは言えなかった。
それでも不安を募らせる周囲に、母は笑って心配するなと言った。
そして無事にわたしを産み、大丈夫だったでしょう?と得意げに笑ったと言う。
生まれたばかりのわたしを抱いて笑う写真が何枚も、アルバムに入っている。
わたしを見つめる瞳にも、シャッター音に気付いたか上げた瞳で、ファインダーの先を見つめる瞳にも、溢れんばかりの愛が浮かんでいた。
分娩台に乗せられながら、心配で青ざめる父を笑って励ましたと言う逸話は、未だにわたしが生まれた病院で語り継がれているらしい。
初産でそこまで余裕のあるお母さんなんて普通いない、と。
それは、母が病院にも入院にも苦痛にも、慣れていたからかもしれない。
どんなときでも、母は笑っているひとだった。
わたしが心細そうにすると、大丈夫よと笑って抱き締めてくれた。
父が心配そうにしていても、平気よと笑って抱き締められていた。
きっと幼いわたしは何度も母を困らせたろうに、わたしには母から怒られた記憶と言うものがない。
記憶に遺るのは、頭をなでる優しい手、抱き締めてくれる心地良い腕、そして、慈愛に満ちた微笑み。
まるで、ひとではない、妖精や天使や、天女のようなひとだった。あるいは、女神と言っても過言ではないかもしれない。
誰も彼も、笑顔で受け入れ、愛し慈しんでくれる。
天女のよう、ではなく、実際に天女だったのかもしれない。
だから、連れ帰られてしまったのだ。
愛するひとを忘れて、天へと還った月の姫みたいに。
不死の薬の代わりに、忘れ形見をふたり、父に遺して。
だいすきだよ、みーちゃん。あいしている。
あなたとであえて、わたしはしあわせだよ。
母の遺した言葉は、今でもわたしの宝物だ。
なぜ、と涙することも、勝手だ、と憤ることも、あるけれど。
さくちゃん、愛しているよ。
一緒にいられて、わたしは幸せだよ。ありがとう、大好き。
たくさんたくさん、幸せな思い出をお土産に持って来てね。
ゆっくり、待っているから、いっぱいいっぱい、集めて来てね。
楽しみに、ずっと、待っているから。どんなに時間が掛かっても、絶対に、待っているから。
だから、急がないで、幸せに過ごしてね。
父を独りで遺せない。
そう思い、行動した母を、わたしは責められない。
そのやり方を、肯定も出来ないけれど。
でも、ねぇ、ママ?
写真の中で笑う母に、そっと問い掛ける。
誰もを等しく愛するなんて、誰も愛していないのと、同じじゃないのかな。
つたないお話をお読み頂きありがとうございます
わけわからんお話を投下してしまって申し訳ありませんーっm(__)m
きちんとエリアルさんが活躍するお話を
鋭意作成中でございますので
変な話入れやがってと見限らず続きをお待ち頂けると嬉しいです
今年中にもうひとつは新しいお話を投稿できるように頑張ります(`・ω・´)o




