第1幕 新入り 角野莉苑
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夜の栄の町
Nkingの二人はとある雑居ビルの屋上から町を眺めてる
心の隅では角野が出てこないかと期待して。
「おらんなー」
愚痴みたいな独り言を呟く竜二朗
「月、綺麗やな」
それに対し夜空の月のことやら街並みの事を言う冬也
「大阪とは風がなんか違うな」
「せやなー」
ふっと笑う合う二人。
すると西の方角から何人か術師が飛んできた。全員顔がこわばっている。
「なんやあれ」
竜二朗が言うと術師の一人が
「おい!どこのどいつか知らないけど逃げろ!殺される!化け物に!!」
と叫んで西から東へと逃げて行った
「化け物に殺される?」
二人は顔を見合せる。
「もしかして、角野?」
「かもしれへんな」
二人はすぐに西へ向かう
ある住宅街の上空を通ると化け物がいた。
黒獅子のような恐ろしい顔立ちの人間より遥かに大きな体の化け物が。しかしそこから感じるのは角野莉苑のオーラだった。
「これ、角野なん?」
驚きのあまり声が震える冬也
「そうやろ。オーラがそうや」
「でもこの状態からどうやって?」
「………。」
唇を噛み締める竜二朗。すると黒獅子は二人に気づき襲いかかる。
鋭い爪でその体を引き裂こうとする。
「冬也!」
「俺は大丈夫や!」
二人は左右に分かれる。痺れ毒が塗ってある矢を射る冬也、痺れ毒の粉末が入ってる銃弾をこめ打つタイミングをうかがう竜二朗
冬也の矢は命中し、黒獅子は動かなくなった
「よっし!」
「冬也、気ぃぬくな!」
「わかっとる!」
「角野くん!苦しいやろ?話し合いたいんや!その変身解いてくれへん?頼む!!」
心からお願いする竜二朗
しかし、その声は届かなかった。
黒獅子の毒は解け、鋭い爪が冬也を襲った。
「と、冬也…?冬也ぁぁぁぁぁ!!!」
冬也の居た方向から飛び散った血、空中に投げたされてる冬也の体
「あ、あ、」
足の力が抜けその場に座り込む竜二朗。
「と、冬也、冬也?」
何度も名前を呼ぶ竜二朗。しかし返事がない。
気づけば黒獅子はいなくなっていて黒獅子が居座ってたマンションの屋上には角野がうつむいて立っていた。
竜二朗は角野の右ももに痺れ毒弾を撃ち込み冬也のもとへ
そこにいたのは変わり果てた姿の冬也だった。
説明するのも苦しいその姿。生きてるか死んでるか、その答えは赤い血溜まりの大きさでわかるだろう。
「冬也、すまへん……」
冬也の色白の肌がさらに白く見えた。
抱き上げると力なくぐったりして、冷たく感じた。
「こんなことに…どうしたら…」
足音が聞こえて振り替えると角野がいた
「角野、くん。………。」
少し憎しみが声に出る竜二朗。角野と竜二朗の間に嫌な間が出来る。
「殺したければ殺せ、俺の事も。」
竜二朗は全てを覚悟していた。角野を睨み付けその顔から覚悟がわかる。
しかし角野は竜二朗の横を通りすぎ冬也の横に。
「お前何するん!」
角野を止めようと立ち上がる竜二朗。
すると冬也の体は黄金の光に包まれた。
「これは…」
血溜まりが消え、冬也の頬に血の気が戻った。
黄金の光が消えると冬也が起き上がった
「と、冬也ぁぁぁぁ!!」
思わず抱きつく竜二朗。受け止められず押し倒される冬也。
「うわっ!何やねん!ってか俺、死んだ気が…」
「冬也ぁ!冬也ぁーー!!」
泣きじゃくる竜二朗
起き上がりながら、何がなんだかわかってない冬也
角野はそんな二人を見て申し訳なさそうな顔をし、その場を立ち去ろうとした
「はっ!角野!くん!」
冬也の体から手を離した竜二朗。角野を呼び止める
「痛ってぇー、急に離すなや!」
手を離した反動でその場に投げ飛ばされた冬也は竜二朗に怒りながらそう言った。竜二朗は聞いてないが
「角野くん、何でこんなことを?」
角野の行く先に立ちたずねる竜二朗
「…。化け物ですから、僕。化け物だって言われて違うって言ってますけど気づいたら化け物になってるんですよね。気づいたら服や手に血が。今だって彼の事、僕が殺してしまいましたよね。」
「でも一瞬やで。すぐに生き返らせてくれた。」
「それは謝罪です。だって彼が血溜まりの中で倒れてるの見て泣いてたじゃないですか。ああいうの見てしまうと治すしかないと思って……。僕の中の化け物は殺人鬼だけど僕は違うんです。でも化け物は勝手に僕の体を借りて暴れる。人たくさん殺してます。たまに僕から力貸してほしいと言って化け物になるときもありますが」
声を震わせながら言う角野
「なあ、角野くん。その力使いこなせるようになりたいやろ。化け物を自分の意思で操れるようになりたいやろ?操り人間卒業しようや」
優しく問いかける竜二朗
「どうやってやるんですか?こんなに、小4の時から僕の事を操ってる化け物を!」
角野の目には涙が貯まっていた。
「誰かの力を借りるんや。最終的には自分の努力が必要やけどな。一人で生きていけるかもしれへんけど、一人では成長出来へん」
そう言い角野の頭をポンポンした。
後ろでその様子を見ていた冬也。すこし感動して目が潤んでいた
「ぼ、僕、僕の化け物を押さえる力貸してください…」
「その言葉、待ってました」
泣き崩れる角野を抱き締める竜二朗。冬也も後ろから走ってきて抱き締め角野をサンドイッチするかたちに。
「大阪に来れるか?」
冬也が問いかける。
「はい。家、出たいってずっと思ってて……」
「詳しいことは、これからじっくり話していこうな?角野くん」
「莉苑でいいです。莉苑って呼んでください。そして化け物扱いしないでください。僕の力悪いことに使わないでください。」
「わかったわかった」
二人は声を揃えて言った
「角野くんはこれから俺たちと力を合わせてNext kingを目指すんや!」
「考えてみると俺たち二人でNext kingって名乗るの辛かったよな?」
「せやなー。痛いな俺ら」
笑う竜二朗。冬也も笑う。角野もそんな二人を見て笑う。
「新生Nkingの誕生や!明日の朝一で大阪帰って報告や!角野くん、いや、莉苑。荷物まとめて新幹線始発出る30分前に名古屋駅集合な!」
「はい!」
はじめて合ったときはなんだか絶望しきった顔をしていた角野だったが、翌朝キャリーバックとトートバックにリュックを背負ったその顔は晴れ晴れとしていた。
竜二朗と冬也はその姿を見てこれからの希望を感じたのだった。