第1幕 新入り 噂
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Nkingの二人は名古屋市内のとある喫茶店に。モーニングを堪能しながら相手を待つ。
「すいません、鐘井さんと西内さんですか?」
二人に声をかけてきたのは大人びた顔立ちの女子高生。
「須貝さんですか?」
冬也が訪ねる
「はい。須貝朱里です」
一通りの挨拶をし、3人は向かい合って座る。
「須貝さんが角野に出会ったのはいつ頃ですか?」
「比較的最近ですよ。1ヶ月前ぐらいでした。名古屋支部からの依頼で栄付近の結界の点検をしていたんですよ。そうしたら突然魔物に襲われて。気づいたら彼が隣にいた」
思い出すように淡々と話す須貝
「角野はどんな様子でした?」
質問は全て冬也がしている。竜二朗は隣でメモをとっている
「すごい不安な表情でした。いや、怯えてたって感じもするわ。」
「不安。怯えてた」
ボソッとつぶやく竜二朗
「目が覚めるまで私死んだんだと思っていたんですよ。意識薄れていく中でもうダメだと思いました。噂を聞いてからわかったんだけど、角野って人は回復魔法の使い手だったのね」
「そうですね。他でも須貝さんにしたようなこと彼はやっておりますね」
「そうなんですか…」
「須貝さんは角野がどこの軍に所属しているなど聞いたことありますか?」
「それ、情報屋からよくきかれるけど、本当にわからないのよ。自分の名前なのってさよならだったから…」
申し訳なさそうに眉をひそめながら言う須貝
「すいません…」
「謝らなくて大丈夫ですよ!
…ただここ最近名古屋である事件が」
「事件?」
二人は声を揃えて言った
「はい。あまり良くない軍、一応本部の決めた規定にはそってるけけど内部では酷いことをしているっていう軍の方がここ3週間ですかね。殺されているんです。」
「暗殺ですか?」
冬也は驚き声が上ずる
「かもしれないし、魔物かもしれない。でも、私現場に行った事あるんですが人の手によるものだと思えないんですよ。でも魔物の魔力を感じなかった…。もしかしたら伝説の悪魔持ちがここに存在するのではないかと思っていまして」
「悪魔持ち!」
驚いて声をあげ立ち上がってしまった竜二朗
「リュージ!静かにしろや!」
「すまんすまん」
ペコペコとしながら座る竜二朗
「それで、角野と悪魔持ちの話の関係は?」
「角野くんの噂が出たのと悪魔持ちの出現、時期が同じなんです。出現エリアも同じ。だからもしかしたら…」
「リュージ、情報屋に悪魔持ちの事調べるよう頼んできてや」
「…おん。」
竜二朗は外に出て難波忍光組に電話した
「角野くんに聞かれましたか、貴方は術師かって?」
「いえ、僕らは自分から名乗ったので…。スカウトしに来たんです、こっちに」
「そうだったんですね」
「術師ってワードを出したら何故か怒ってしまったんですよね」
と苦笑いする冬也
「もしかしたら、暗殺された軍みたいなのに関わった事あって恨みでもあるかもしれませんね…。そうだとしたらスカウト、やめた方が…」
「…、そうですね…」
冬也は苦い表情を隠すようにコーヒーを飲んだ
須貝朱里にお礼を言い別れ、別の喫茶店にて作戦会議を開いた
「どうする?」
口を開いたのは竜二朗
「悪魔持ちについてがよくわからへん」
冬也の言葉にポカーンとする竜二朗
「え、冬也わかっとると思っとったわ!」
「いやわからへんから情報屋に聞け言うたんや!!」
「あーなるほど」
「理解するの遅いわ!とにかく、どうしたらええねん。悪魔持ちってようは究極の二重人格って事やろ?」
「ちゃうで」
「え?」
冬也は目を丸くする。それに対し落ち着いてコーヒーを飲む竜二朗
「悪魔持ちってのは、悪魔がついてる者の事。悪魔と魔物はちゃうって教わらへんかった?」
「あ、あー。そんな事聞いた記憶が…」
「まあ、忘れてたんならそれでええけどなー。冬也らしくなーいですませるから。」
意地悪そうに笑う竜二朗
「細かいことはわかってへんけど、悪魔が取りついてその人自身の更なる力にもなるし、ただ悪魔の操り人形のもなるしって事や。恐らく角野は操り人形状態やけどな。」
「なるほど…。」
「悪魔に完全に取り込まれればそこらの魔物と同じや。いや、それよりも酷いな、怪物やな。きっと他の術師に怪物とか嫌なこと言われたんやろ。あとはいじめか」
「なんでリュージそんな詳しいん……?」
「ん、全部な、竜太郎から聞いた」
ガクッと崩れる冬也。竜太郎とは竜二朗の兄であり、かつて術師として活躍していた。冬也の指導役でもあった。
「竜太郎くんの受け売りかいな…。どうりで話がきれいにまとめられとるわけか」
「なんやねん!それ俺がアホみたいな言い方やん!」
「じゃあ、リュージ、センターの国語で失敗したって泣いてたのはどうなん?いつも国語だけ点数低かったって泣いてたのは何なん?英語で要約下手くそって先生に呆れられてたのは?」
「すいません。なんでもないです」
一瞬拗ねたが弱いところをついて機嫌を取り戻した
「でも、悪魔持ちの事聞いたら余計どうしたらええかわからなくなったわ」
頭を抱える冬也
「俺もどうしたらええんやー」
午前10時過ぎの喫茶店、二人の少年はそんな事で悩んでいた。
喫茶店のマスターにはどううつっていたのか?そんなの二人が気にする余裕なかった。