第1幕 新入り 情報屋の報告
新入りから説明が入るため文が長くなります。
集会が開かれる前の201x.4.7
冬也と稜美の高校
新しいクラスの様子をボーッと観察している冬也。
すると後ろから誰かに薄い冊子のような物で頭をひっぱたかれた。その衝撃で机をガタッという音をたててしまいクラス全員から変な注目を集めてしまった
「あ、あははは」
乾いた笑い声をあげ、ひっぱたいた正体を見るため振り替えるとそこにいたのは、冬也より背が少し低い男子生徒。手には家庭科の副読本を持っていた。
「呼んでくれればええやん。叩かんでもさ」
冬也は相手にそうちょっと怒りながら言う
「呼んだで!でも冬也反応してくれへんもんっ!」
口をとがらせそう答えるのは向田瑞貴。冬也達の仲間である。
術師ではないが術師を補佐する情報屋として暗躍している。
「それで用はなんなん?」
二人は居心地の悪い冬也のホームルーム教室から出て廊下を歩きながら話す
「東京、行くんやって」
「やっぱり…」
この時点で冬也は東京出兵の事を知っていた
「でもまだ確定とは言えへんけどな」
「それどういうことやねん」
「ま、そのうちわかるって」
ニヤリと笑って答える向田
「そういやなNkingに持ってこいな話を聞いたんや」
「俺たちに持ってこいな話?」
「それはな」
向田は周りを確認し
「名古屋にすごい術師おんねんって。フリーで!それと近距離攻撃タイプで回復魔法使えるという奴や」
耳元で囁いた
「フリー?」
フリーとはどこの軍にも所属していない術師のことである。術師はたいがい大小様々あるが軍に所属して仲間と協力し魔物退治をしている。
それを取りまとめる本部も各地方ごとに存在する
「でもフリーっては何か人間的に問題あるってことちゃうん?」
「いや、そんな事ないで。色々と動向探ってみたけど特にこれといった事はなかったで。まあ、気になる点はいくつかあるけどな」
「そうなんか…。とりあえずリュージと考えてみるわ」
「なんか他にも知りたいことあったら言ってな。すぐ調べて報告するわ」
「おん!その時は頼むで!」
集会から2日後の201x.4.12
大阪市内のとある若者向けマンションの一室
Nkingの二人と8人の少年 (青年?)達がローテーブルを囲うようにすわっている。机には2種類の宅配のピザがある。
「では、人も揃ったところなので、例の名古屋の術師についての報告会の始まりです!
なんやねん、じっとしてへんで拍手してや!!」
そうつっこんだのは情報屋、難波忍光組のリーダー梅村陽尚。アパレルブランドのオンラインショッピングの仕事をしている。
「よし、まずは健也から!」
「はい!」
健也こと木内健也、高校2年生。冬也と向田、7Tigersの稜美と同じ高校に通っているこの8人の情報屋の中では最年少
「まず僕からは名前を報告します!」
健也は小さいホワイトボードをテーブルの下からだし文字を書く
「こう書いて、すみのりおん、って読みます!」
ホワイトボードには『角野莉苑』と書かれていた
「女みたいな名前やな」
竜二朗はつぶやく
「でもれっきとした男の子やで」
向田が竜二朗に言う
「男の子って言う言い方………」
「何、冬也?」
「いえ、なんでもありません」
向田に威圧かけられそれ以上は言えなくなった冬也
「ちなみに彼のお母さん、めっちゃ若くて美人さんやで!」
「おい太郎、お前の番ちゃうから口挟まへんの」
「へへっ、さーせーん」
梅村に注意されヘラヘラと謝ったのは九坂太郎。19歳で経済学部の大学生
「太郎くんのことは置いといて、僕からは以上です!」
「うんじゃあ次はベン!」
「O.K.~!」
ベンこと太橋ベンジャミン。英語が苦手なハーフの19歳で国文学を学ぶ大学生
「…ベン、ほんま申し訳ないんやけどO.K.の発音、オレのほうが上手いわ」
と竜二朗
「あー」
その場にいた全員納得
「あー、ちゃうわ!そんなんことは今はええねん!!俺からは角野の能力についてです。目撃情報によると角野は回復魔法の使い手、武器は不明やけど刀ではないことは確か。実際に戦場での姿は見れへんかったんやけど、ひどい戦場にふらっと表れて瀕死の術師を多数助けてるそうや。」
「仲間でない人を助けてる?!」
驚く冬也
「不思議な奴やなー。俺なら見放すわ。知らん奴に魔力を無駄に使いたない」
太郎は冬也に同意しそう言った
「太郎が言ったような事、皆も思ったよな…」
と梅村。全員静かに頷く
「そういう噂のある奴や。能力としては申し分ないけどな。俺からは以上」
「うん、次はミヤ!」
「ん!…………ゴッホゴホ、は、はい…」
「タイミング悪すぎやろ」
ピザを食べていたので急いで水で流し込んでいるのは、ミヤこと森宮雅。ホテルのレストランにてコック修業をしている20歳
「僕からは角野の見た目についてです。身長170cmほど。体格はがっちりしてる…ように見える。戦いの時はかなりスピード出してる。ってところです」
「続けて角野の学校や行動について」
森宮に続いて報告を始めたのは環場嵐。社会学部の大学生、21歳
「現在通信制の高校に通っていて、学校にスクーリングとかで行ってないときはテレビ搭前の広場にいる。あと実家暮らし、母さんめっちゃ美人!お父さんには残念ながら調査中には会えへんかったからわからんけどな」
「せやから、母さん美人情報は今要らんわ」
その件には興味が無い冬也
「っていうか通信制の高校ってことは不登校の経験あるってこと?それとも他の理由?」
「リュージの疑問、俺も思ったけど調べきれなかった。なんせ角野は表に出てることしかわからへんねん。心のなかや友人関係はわからへんかったや」
残念そうに言う環場
「あと言うてへんのは角野のプロフィールやな」
書記を務めていた向田が言う
「誰?担当したん?」
「ハイハイ!俺や、俺!」
「あー!照り焼きチキンピザいっぱい食べてる!ズルい!」
狙っていたピザを取られ怒る健也
「健也、ごめんって!」
と謝っているのは正口実康。被服の専門学校に通い放課後は心斎橋のアメリカ村でカリスマアパレル店員として活躍している20歳
「角野は冬也と同い年。O型で愛知県出身。ちなみに親や遡れた限りのご先祖様には術師はいなかった。以上」
「瑞貴まとめて!」
「はーい!角野莉苑、高3。愛知県出身、O型。回復魔法の使い手で近距離攻撃タイプ。身長は170cmほど。体格は良い方。ってところやな」
まとめたレポート用紙を竜二朗に手渡す向田
「……しかし、仲間になってくれるかな?」
不安な竜二朗
「声かけてくれたら案外安心するもんやで」
と正口。梅村も頷く
「でもそれやったら既に名古屋の軍に入ってるんじゃ?」
と冬也
「まあまあ、それはなんかあったんやろ!」
と太郎
「まあ、とりあえず行って見ないとわからんからな。行くか」
「せやな」
Nking二人は互いに向き合い頷く
「どうなるか、楽しみやな!」
と梅村。ほかの7人もウズウズしている。
報告会後は夕食会になりお腹いっぱい食べまくったのであった。