第1幕 日常 術師の集会
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大阪市内のとある高級マンションの最上階。
窓の外を寂しげな目で見ているのは階間悠生。不動産マン。影踏み魔法ライフルと大剣使いの術師で軍のリーダー (トップ)
「なあ、悠生くーーん、おつまみ無いん?」
そんな悠生のことはお構いなしにすっとぼけた声でキッチンの棚を荒らしているのは菅村明。ある食品会社の営業部のサラリーマン。怪力魔法ナックル使いの術師。
「明、今日は飲み会ちゃうんやで」
「わかっとるよ、東京出兵のことやろ。」
明は手を止めない
「でもな、俺は大切な話あるときはアルコールの力借りへんと話せん」
悠生は明の発言を聞き大きなため息をついた。
「そんなん借りんでええねん。明は黙っとき」
「でも、」
「でも、ちゃう。フォローは最悪タカちゃんか和彦に頼むわ。せやから明はなんもせんと見守ってけばええねん」
「…。わかったわ」
「そこ、片付けといてな」
「おん。」
悠生はなかなか来ないメンバーに電話をかけるため外に出ようとするとチャイムがなった
出ると和彦と崇、翔の3人が来た
「来てええで」
数分後玄関のドアが開いた
「悠生くーーん!」
笑顔で駆け寄ってくる翔
「服のお下がりはないで、翔」
「えーー、マジかよ」
なんやねん、ケチーなど文句を言い明の方に行く翔
「悠生。今度舞台出んねん。よかったら観に来てな」
招待チケットを手渡しながら宣伝する和彦
「あー、この前チラシ見たわ。来週の火曜の夜公演観に行けるかもしれへんわ」
「ほんま?んじゃ、席取っておくな」
「行けなかったらすまんな」
「ええって。高収入の不動産マンは合コンとかで忙しいんやろ~?」
意地悪そうに言う和彦
「合コンより、地主との付き合いの方が多いな。女よりオッサンの方が多いわ」
残念だったなという顔で言い返す悠生
「ふーん…。あ、まだアイツら来てへんよな?」
「来る気配も無いわ。また学校とか課題を言い訳にバックレるつもりかもな」
どこかから引っ張り出したドライフルーツをつまみながら明は答える
「お前、片付けろ言うたやん!」
「なあ、時間あるなら寝てええ?」
「…。ええよ」
悠生から承諾を得ると和彦は黒い皮張りのソファーに飛び込みそのまま寝息をたてた
「和彦くん、今日エキストラの撮影のあと稽古とバイトで忙しかったんや」
和彦を弁護する崇
「やっぱ大変やな、役者って」
翔もドライフルーツをつまむ
「明も翔も人の家の物を……」
「まあまあ、悠生落ち着けって、な」
必死でなだめる崇だった
その後、手土産を持ってきた知洋、次に7TigersとNkingが来て集会のメンバー=関西冠光軍が揃った。
「これから話すのは、皆も気にしとる東京出兵のことや」
広いリビングルームの床やソファーに座り悠生の話を聞くメンバー。
「やっぱりそうやったか…」
ボソッとつぶやく秋
「今回は2年前の反省も踏まえて行動する。徐々に俺たちの区域内の魔物を退治してから行く。目安としてゴールデンウィーク明けまでに」
「ちょっと早ない?」
和彦が口を挟む
「幸い、区域内に手こずるようなのはいない。もし現れるようやったら他の軍の手を借りる。もちろん他の軍の応援には要請がくれば行くで」
「手伝ってゴールデンウィーク過ぎることになっても?」
秋が質問する
「さっきも言うたけどゴールデンウィークは目安や。まあ、目安やけど他の軍には東京出兵の事伝えてあるから駆け込みのような無茶な要請はしてこないと思うで」
「え?!」
悠生と明以外全員驚いた。
「ま、待って!!それって他の軍に言ってええことなん?!」
と知洋
「せやせや!」
知洋に同意する翔
「落ち着けって!……極秘で行くわけちゃうから事前に伝えたんや。東京から応援要請来てんねん。」
「それほんまですか?」
稜美が言う
「ほんまや。ここの姉妹軍と関東本部からの依頼や」
「でも、東京は術師足りてると思うんやけど…」
と行大
「いや、そんなこと無いで。」
行大の疑問に答えたのは明
「東京は術師と魔物のいたちごっこやねん。増え続ける魔物に対し増えない術師、いくら力あっても手が足りんねん。それで手伝ってほしいと俺たちに声がかかったんや」
「なるほど……」
「関東で術師が増えてへんって嘘みたいな話やな」
と冬也
「残念やけどこれは事実や」
冬也の肩に手を置き言う崇
「それにしてもいったい何が起こってるんや…。術師増えてへんって」
悠生ら兄組の言うことをを疑うように言う秋
「魔物の方が増えるスピードが早いねん。やから術師が増えてへんように見えるだけやと思う。」
悠生が負けじと答える
「魔物のレベルも全体的に上がってるしな…」
と崇
「まだ心の準備も出来てへんと思う。もし出発前に行かへんってのもアリや。今日は未成年もいるし解散!」
解散の号令がかかると7TigersとNkingの6人は早々と部屋を後にした。
そんな若手6人を見送った兄組6人
「なあ、悠生。行かへんってのもアリってほんまに言ってるん?」
知洋が訪ねる
「ほんまは来てほしいけど、どうしてもってなら行けなくてもしゃーないかと…」
「ふーん」
迷ってるような表情の知洋
「え?!サクさん行かないんすか?!」
そんな知洋の様子を見て慌てて訪ねる翔
「いや、まだ決めてへんし!…ただ、オレもつかなってな…。」
知洋は自分の能力の限界が来ていることを口にした。それを聞き全員黙ってしまった。
「もうオレ29やで。ここまで現役で前線にたってるとかウソみたいやわ」
笑いながら言う知洋
「他の軍見てもサクぐらいの術師おるけど、現役ではないな。みんなリーダーとか管理職に就いとるな」
と和彦
「今からリーダーになれと言われてもオレには無理や」
「いや、サクさんリーダーに向いてると思うんやけど…」
申し訳なさそうに言う悠生
「なに言っとん!今のリーダーは悠生や。前のリーダーから直々に言われたんやで。オレより向いてるという何よりの証拠や。」
悠生の肩に手を置き、そう言う知洋
「…そう、ですよね」
少し困り気味に言う悠生だった。