第1幕 日常 昼の風景
201x. 4.10
大阪府内にてとあるテレビドラマの撮影が行われていた。
「お疲れ様でした!」
スタッフに挨拶をし現場を後にする青年。
彼は仲和彦このドラマにはエキストラとして出演していた。
この撮影現場から近いラーメン屋に向かうと
「和彦くん!撮影終わったん?」
後ろからスーツ姿の男に声をかけられた。
「あ、タカちゃん!そうそう、さっき終わったところやねん。」
タカちゃんこと海野崇
一見接点がないように見える二人だが二人とも術師である。
普段は和彦は駆け出しの俳優 、崇はサラリーマンとして仕事をしている。
「いやーでもこんなところでタカちゃんに会うとはな~」
すごく嬉しそうに崇の顔を覗きこむように言う和彦。目からタカちゃん好きやでビームを放っている。
「奇遇やな~」
和彦からの好きやでビームをさらっと受け流す崇
「ところで、和彦くんもラーメン屋行くん?」
「タカちゃんも?」
「おん。仕事で近くに来たし、外山くんに相談したいことがあってな…」
外山くんとは彼らの術師の先輩で、現在は術師を引退しラーメン屋にて修行中。
「何を相談するん?髪型?」
「ちゃうちゃう!……これからのことや。」
少し影のある言い方をした崇
「あーなるほどね。そのパターンか」
「え、他にどんなパターンあんねん」
湿っぽい空気にしたくなく少しズレた発言をする和彦。崇も思わずクスっと笑ってしまう。
「色々あるで~。恋とか恋とか恋とか!」
「なんでそんなに恋を推すんや!女子か」
「ん、そんな話してたら…。あれ、サクやん」
和彦の目線の先には公園。そこのベンチに座る灰色のスーツの男とカジュアルな服のOLのカップル。仲良さそうに弁当を食べている
「イチャイチャしとるなー」
「サクに触発されたのかと思ったわ…」
「理由それなん?恋なー、恋する余裕ないわ」
「そうなん?まあ、俺もやけどな」
少し重たい空気が流れる
「今夜どうなるんやろうな…」
「また、ゴチャゴチャにならへんとええけどな」
二人はラーメン屋ののれんをくぐり店内へ入っていった。
和彦と崇にプチデート現場を目撃されてるなんて知らないサクこと桜宮知洋は恋人の葉菜丘ミサキと別れ、食後のコーヒーを飲むのと昼休みの残り時間をつぶすため近くのファストフード店へ。
席を探しているとノートパソコンを開いている派手な柄のパーカーを着た青年を見つける
「カノちゃんやん!レポートか?」
「うわ!!…サクさんか、ビックリした~」
集中しているところを声かけられ驚いた彼は加野村行大。20歳の大学生である
「はぁー懐かしいな~。もう俺が大学出て…、7年か。」
「なんか7年ってあっという間ですね」
知洋は行大の隣に座る。
「そういや、カノちゃんがここに来たのもその頃か。」
「そうですよ。あの頃は俺とがってましたよね」
「うんうん。同世代の子で一番大変やったわ~」
「すいません。あのときは…」
「いやいや、謝らんでええよ!もう昔のことなんやしさっ!」
二人は少し話し、知洋は注文をしに行き戻ってきた
「あの、サクさん。東京出兵の事なんですが…。ほんまに行くんですか?」
「まだわからんけどな。でも実行する方向でいるようやでアイツらは。」
「やっぱり…」
行大は拳を握りしめ下を向いた
「いや、まだ方向でいるってアイツらが言うとるだけで、他のメンバーはどうとかまだ言ってへんし!それに、仮に実行するとしても無謀なことは絶対にさせへんよ」
「ホンマですか!」
食い気味に知洋に寄る行大
「ホンマホンマ!」
「信じますよ?!」
「おん。信じて大丈夫やで!
…とにかく東京行きを決めるのは意見をまとめて最終的には悠生が決めるからな…」
少し興奮している行大をなだめるように言う。
「…………、そうですね……」
二人は机の上の少し冷めたハンバーガーを口にしたのであった。
ここまできてわかっていると思うがこの二人も術師である。細かいことは後に。