第1幕 日常 朝の風景
3日後の201x.4.10
大阪のとある高校の前の坂道
「眠っ…」
あくびをしながら坂を下っているのは西内冬也高校三年生の17歳
「冬也ー!おはよ!」
「あーいずちゃんおはよ」
冬也の背中を叩いた背の高い少年、大藤稜美同級生で冬也と同じクラス
「昨日、梅田ででかいのやられたらしいな」
「あ、それ俺らやで」
「マジ?!…さすがNkingやな」
Nkingとは後に出てくる鐘井竜二朗、西内冬也の二人組グループの事である
「いずちゃんとこもすごいやん」
「俺らはさっぱりや」
会話からわかるように二人とも術師である。
冬也は弓と氷結魔法使い。いずちゃんこと稜美は長刀と風魔法使い。
そう、僕らは術師歴五年以上のベテランである。…自分で言うなっていうツッコミいらんから!by冬也
「ねえねえ、この前オーキャン行ったんよ!そしたらめっさかっこええ先輩おった~」
「ほんま?!どこの大学なん?」
目の前の女子生徒の話がたまたま二人の耳に入った
「…。大学ねぇ」
「冬也はどうするん?」
「大学行くけどさ、どうなるかわからんからな…」
「まあ、いざとなったら記憶改ざん魔法で!」
「それええけど、受験頑張った意味ある?ってことになるわ」
「…。せやな」
二人の間に嫌な空気が流れる。
「どうするんやろな、東京出兵。」
切り出したのは冬也
「兄組がなに考えとるかわからんわ。…前みたいに一気に魔物倒そうとして被害者出しまくるのだけはやめて欲しいな。」
「あれから2年か…」
空を見上げる冬也
「俺はそうとうな事ではない限り東京には行かんわ」
「俺もや」
二人は話を普通の話に変え正門をくぐっていったのであった。
同じ頃大阪のとある私立大学
「アーキーッ!おはよ!」
「おっはよー!ってリュージか。」
アキこと二岡秋
そして彼を呼んだのは鐘井竜二朗
秋は大学2年生、竜二朗は1年生である
「誰やと思ったん?」
「カノちゃん。」
「ほーん。」
「何やねん!自分から聞いてその興味失せたような反応!」
この二人も術師である。
秋は長刀と火炎竜魔法の使い。竜二朗はライフル・短刀と水を操る魔法の使い。
「この前の梅田やつってリュージと冬也がやったん?」
「せやで!ようわかったな~」
「何で偉そうにしてんねん。ここら辺で氷と水を使う術師って言ったら二人しか思いつかないわ」
笑いながら秋は答えた
「やっぱりそこかー。アキは調子どうなん?」
「この前カノちゃんとサクさんの助っ人行ったぐらいやな。7Tigersとしては活動無し」
7Tigersとは二岡秋、大藤稜美、後に出てくる加野村行大、河内流留の四人組グループの事である
「そうなんや」
「なあ、兄組が言ってる東京出兵、ほんまにするのかな。するんやったらこの辺のでかいの倒さへんとアカンやん。一気に片付けたら…」
「俺もほんまにするか疑問やな。でも!近いうちに俺と冬也は大阪を離れる!」
「何でや?!」
「ちょっと訳ありでなー」
ニヤニヤ笑う竜二朗
「教えてや!」
ブンブンと体を揺すり力ずくで聞こうとする秋
「んあーーーっ!帰ってくるまで秘密!」
秋の手を必死に振り払った竜二朗
「焦らしか…。んじゃ、お土産話楽しみにしとるわー」
ニッコリとえくぼを作りご褒美を約束され楽しみに笑う少年ような笑顔を浮かべた秋
そこに女子学生が駆け込んで来た
「二岡!」
「ん、何や?」
「ねえ、裕美見てへん?広中裕美。ほら経済の講義一緒の!」
「あーあの子。それがとうしたん?」
「1週間も行方不明なんやねん!ほんまどこ行ったんやろ…」
「…。届けは出したん?」
「出したで。そっか、二岡も見てへんか…。ごめんお取り込み中に!それじゃ!」
女子は走り去って行った
「広中裕美。聞き覚えあるな…」
「術師やで。確か此花区の女子グループやったな」
「あー!思い出した!1週間行方不明って事は」
「魔物の餌食になったんやな…」
術師は戦地で命を落とすことがある。その後仲間の手により葬られるが遺体を魔物食らうこともある。
「可愛そうに。あの人ずっと探してるのかな?」
「せやな…記憶消さへん限り。」
必死に聞き込みをする女子大学生を哀れみの目で見る二人だった。
一方とある大阪府内のコンビニエンスストア
飲み物の棚の裏の冷蔵庫で作業する背の高い整った顔立ちの青年。大あくびをしながら作業していると
「作業進んどる~?って眠そうやな。」
彼より背の低い明るい茶髪の青年が声をかけた。彼は倉持翔今年25歳になるフリーター。背の高い方は河内流留。今はフリーターの今年21歳。
共に術師だ。
翔は太刀と炎魔法の使い、流留は三節棍とレーザー魔法使い。
「なんでオレが朝弱いの知ってるのに朝に入れたんですか?」
「しゃーないねん。今夜出動するからや。」
「…。そんならオレ入れてなくてもよかったやん…」
ブツブツと文句を言う流留。
その後レジに二人は入った。まだ文句を言う流留。なだめる翔。そこに登校途中の女子高生の軍団が入ってきた。
「いらっしゃいませー」
はつらつと言う翔とダルそうに言う流留
「朝やとこういうの見れるんやからええやんかっ!」小声で流留に言う翔。
「JKすか」
「せやで!あんなキラキラしてて、若々しくて、なんというかまあ…
んーーなんとも言えへんわ~」
下心丸出しの発言やな
と流留は心の中でため息をついた
そんな女子高生達は新作のお菓子を手に騒いでる。そしてそれを買おうとレジに向かうと流留があまりにもイケメンだったのでまた騒ぐ。
流留も適当にファンサービスを振りまき、女子高生達は喜びながら店を出た。
「相変わらずやな」
「何がですか?」
「流留の顔見て騒いで、レジ打ってほしいから目的以外の物も買って…、この店流がいたら売り上げどんどん伸びるな!」
「そうっすね…」
思わぬ営業効果に面白そうに笑っている翔、それに対してありがた迷惑な流留の朝のバイト風景だった。