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拝啓 今は昔の物語

 ゲオルクとルーペルトが仲間に加わった!

 ゲームなら効果音がなりそうな所だがここは鳴らない。

 焚き火を挟んで、俺とエイミー、ゲオルクとルーペントで座っている。

 襲撃犯の男は、女性の遺体とともに馬車に放り込んである。

「そうだなー」

「僕から話そう」

 ルーペントが眼鏡を直し話し出す。

「冒険者と言っても僕ら3人は結構古くから知り合いどうしでね、過去は割合させてもらうけど。ゲオルク、僕。そして…死んでしまったアガタとは良く組んで仕事をしていたんだ」

「古いといっても、俺達はまだ三十前だし付き合いに関しては十年ほどなんだけどな」

 ゲオルクが補足を入れてくる。

 自分より十年近くの年上を見ると、凄い大人に見えてしまう。

 あれ、そういえばエイミーは幾つなんだろう。

 エイミーのほうは何やら考えた顔をしながら『十年前……』と復唱している。

「今回も酒場で飲んでいた時に、アガタが依頼を持ってきたんだ」

「依頼内容は簡単。調度品や薬を協会まで運ぶだけ」

 ゲオルクがさらに言葉を続けてくる。

「それでなんと前金5枚と成功報酬で金貨40枚よ。3人とも裏はあるとは思っていたけどな」

「合わせて45枚って大金じゃないのよ。よくそんな依頼受けたわね」

「腕には自信があったからな、まっ今回の事で自信はなくなったがな」

「よくいうわよ、貴方達二人だったらあのまま助けなくても切り抜けてたわ」

「ちがいない」

 ゲオルクは豪快な笑いを飛ばす。

「そして、どうするの?」

「私たちは明日にでもラクザッツアのほうへ観光しに行くけど」

「おう、このままラクザッツアまで馬を貸してくれ。行き先も一緒だろ?幸い荷物は奪われてないしな」

「馬は街に行っても使うでしょうに、終ったら門番へ返しておいて」

 そっけなく答えるエイミー。

「すまんな青年。トッキーと言ったか、旅行中にこんな事に巻き込んでしまって」

 眼鏡の奥からすまなそうな目が見える。

「まったくよ。本当なら今頃は恋人達の熱い展開があったのに」

 少しむくれながら俺の代わりに答えるエイミー。

  俺としては苦笑するしかない。

「助けてもらったお礼に、今日の火の番と見張りは俺達がやるってのはどうだ?」

 ルーペントの申し出に、少し伏せ目になって答えるエイミー

「申し出は嬉しいのだけど、あって直ぐの人に寝てる間に殺されたら困るからペアを組んで交代でしましょう」

 答えを予想していたのだろう。ルーペントもゲオルクも『それがいい』と言ってきた。


「とっきー起きて……起きて……」

 うう~ん。後5分……遅刻はしないから大丈夫大丈夫……

「起きなさい!」

 耳を引っ張られ起される俺。

「交代の時間」

 焚き火を挟んだ向こうでは既にゲオルクもルーペントも横になっている。

「あまりに気持ち良さそうだから寝かせておこうかとおもったんだけどね」

「起しちゃった」

 小さく微笑む。

「そうだ!エイミー。俺やっぱかえ……」

 急によって来る顔と唇で俺の言葉は遮られた。

「っ」

 突然過ぎるので固まってしまう。

「エ……エイミー!」

「ほら静かに」

「エイミーは何時も突然すぎる、だいだいこういうのは男からやるべきであって。いや、エイミーが悪いわけじゃなく勇気が無い俺が悪いわけで、あ!」

「話そらしたな」

「あら、良く気付いたわね」

 驚いた顔して此方を見る。

 焚き火はバチバチと燃えている。

「そうねぇ、この世界の未来は暗いわ」

「むかし、むかし、ある所に移転者が現れました。彼は全くの魔力が無い変わりに、この世界にない物を持ってきました。それは知識です。その知識はとてもとても凄い事でした。なんだって今まで魔法が使えなかった人達が鉄の塊を放つ事が出来るのです。それは剣よりも力強く手裏剣よりも早くとても恐ろしい技でした」

「エイミ……」

「それに驚いたのは貴族や協会です。だって、今までは力で抑えていたのにその力が破られるのですから。いくら魔法といっても万能ではありません、火の魔法一つ唱えるのでも強大な魔力がいるからです」

「この世界には魔法という力、協会という権力を使って民を守ると言いながら、好き勝手に生きる貴族もいたのです。彼は言いました『この力さえあれば貴族、協会に頼らず自分達で生きていける』と」

「協会は彼らにはとても親切でした。それはそうでしょう。だって歯向かって来られたら大変ですもの。しかし貴族のほうは安心できません。今まで出来た事が出来なくなるからです」

「最初は小さな小さな言い争いでした、どちらか先かは関係ありません。貴族と彼らの仲間がとうとう死んでしまったのです」

「そこからはもう泥沼です。魔物や傭兵、時には自分自身の魔法で皆殺しにしようとする貴族。武器を作り対抗する彼ら」

「協会は困りました。どちらの味方でもあり敵でしたのですから。協会は神様に祈る事にしたのです。この戦いが速く終るようにと」

「戦いが四つの街に拡大したころでしょうか、祈りは天に通じたのです」

「偶然にも、そう偶然にも貴族が古代竜を召喚したのです。古代竜は見るもの全てを焼き尽くしてくれました、貴族も彼らも女子供すら竜には関係ありません。4つの町すべてを焼き尽くした頃でしょうか、何を思ったのが古代竜は空に高く羽ばたき天に帰っていったのです」


 最初は、ただの昔話と思ったが重い話にかける言葉を捜す。

「そ……それからは?」

「それからは簡単。協会は彼かもたらした知識を禁術に指定し、貴族の居る町にも監視として魔道士、魔女などを配置。自警団の配置、移転者を見つけ次第報告、世界に残るものには能力に応じて協会の力になるように育成。世界は協会の力で安定を取り戻しました」

 最後は投げやりのように答える。

「どうして、今そんな話を……?」

「私のカンが正しければ、遅かれ速かれ戦いが起こるわ。だからそれが起きる前に時貞は帰る事」

「帰る場所があるのはとても良い事なのよ」

「戦いってもなんで突然」

 焚き火の向かいに横になっている二人の後ろにある馬車を見詰める。

「だって、あの荷馬車に積んであったもの。昔私の家に合った物だもん」

「ほら、そこの二人もこれで私達の素性と襲われた事も納得した?」

 微笑、焚き火の向こうを見る。

「ありゃ、ばれてたか。なるほどな~そりゃ危険な依頼だったわけだ」

「もう少し寝たフリをしていれば、男女の営みがみれるとおもってよ」

 声のほうをみるといつの間にかゲオルクが起きている。

「ほら、おめーも寝たフリなんかしてるんじゃねーよ」

「僕は何時空気を壊さず離れるか考えていた所だ、お前と一緒にするな。しかし」 

「どこかで荷の情報が漏れていたってわけなのか」

 むすっとした顔で眼鏡をかけなおすルーペント

 一人事情がいまいち読み込めてない俺にゲオルクが教えてくれる

「さっきの昔話にはちょっと続きがあってだな、その知識を持ってきた男にはこっちで生まれた2人の娘が居たのよ。もう兄ちゃんもわかるだろ」

「あ……」

「ここに禁術の箱があるって事、それを見つけた私。偶然かそれもとも、彼の怨念が居るのかもね」

「おんねんがおん……ぐふ!」

 わき腹に鋭いパンチを喰らい危うく火に突っ込みそうな俺と、それをみて笑うゲオルクとルーペント。

 東の空は明るくなりかけていた。


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