拝啓 ○○○イベント
エイミーとベスと一緒に冒険の準備をするも早六日目。
どうせ戻っても留年確定してる身だ。と思ってからはこの世界が少し楽しくなってきた。
3日目を過ぎたあたりから、剣の扱いは無理と悟られたらしく、もっぱらこの冒険中の注意事項などを教えてもらった。
魔法の練習も試みたけど、火すら起せない始末。情けない……
現在俺のスペックとしては魔力がちょっと多いだけの生きる術が持ち合わせてない一般以下の人間。
この一週間で会得したこと言えば、軽い知識と小型動物のさばき方ぐらいなもんだ。
荷物の準備をしていると、扉がノックされ開かれる。
「……ゆうしょく……」
「おう、今~居間にいく」
ドアを開けたベスが微妙な顔で此方を見ている。
いや、まてそんな顔をするな。偶然だし。
二人そろって夕食を食べに居間へ行く。
居間では既にエイミーが全員分の食事を盛り付けた後だった。
「あらどうしたの?赤い顔してるけど?」
「いや、なんでもない」
手を振りさっきのことを忘れようとする俺。
「まぁいいけど。では、確認しまーす」
「エイミー先生宜しくお願いします」
「……よろ……」
「ベスもトッキーも宜しい。良く聴きなさい」
何処から出したのか眼鏡をかけて、右手は細い棒を持っている。
「私達が居るのは現在ここ。マニホマの町よ」
テーブルに引かれた地図を指示する
「それで魔道協会が町を五つ越えた先のラクザッツア、町から町へは徒歩で約10日前後ね。本当なら馬車で行きたい所なんだけど」
「……うちは……びんぼう……」
しょんぼりする姉妹。
あたりを見回し住まいや調度品を見ても、けしてお金を持っている住まいには見えない。
「そ・の・か・わ・り、今回は馬で行きます~そこ!拍手」
「ぱちぱちぱちぱち」
「……ぱちぱち……」
「宜しい、それでも半月は見たほうがいいかも」
「おお、速い!」
「それもこれも、トッキーの馬術によるんだけど」
「……がん……ばれ……」
「ってな事で今日はおしまい。各自お風呂入って速めに寝るように」
「あーい」
注意事項を受けて部屋に戻る。此方の世界に来た時に来ていた服や小物は既にまとめて縛ってある。
明日から、たとえ帰るための冒険とおもっても心がドキドキする。
冒険というより旅行なだろうけど。それでも興奮は収まらない。
十六才の誕生日の朝から魔王を倒しにいった勇者もこんな気持ちだったんだろうか。
「あ~だめだ、気分変えるために汗を流そう」
「暫くお風呂はないって言っていたし」
タオルと着替えを持ってお風呂場へ行く。
誰も入ってないのを確認すると、素早く衣服を脱ぐ。
「ん~流石に洗濯物は見られると恥ずかしいから端に寄せるか」
タオルを片手に全裸になりいざ扉を開ける。
体を洗い湯船につかる。
『お風呂は命の洗濯よ』誰かかいったセリフか頭に過ぎる。
ここに来てもう7日目の夜が終るのかと思うと、この世界も満更でもないと思えてくる。
こう瞳を閉じて、お湯につかると高校生活が走馬灯のように思い出す、携帯を隠れてみながら受ける授業。昼休みの弁当。女子達の入浴前の会話。入浴前?高校生活にそんな授業なぞ無い。
「ベス~トッキーはいたー?」
「……いない……」
「何処いったのかなーアイツ、まぁいいわ。今日は暫く会えないから一緒に入ろうね~」
「……うん……」
「……ねーさん、トッキーのことすき?」
「う~ん、そうねぇ。割と好きよ。ベスは~?」
「ん……きらいじゃない……」
「お、良い子良い子~」
「ベスの胸見るたびに育ってるわね……」
「……ぶい……」
扉一枚向こうではキャッキャした会話が繰り広げられている。
人間突然びっくりすると思考が停止するようだ。
停止している間にも扉の向こうでは会話が続く。
思わず窓から逃げようと壁を見るが、とても人が通れるスペースはない。
声をかけようと思った時には既に、扉が思いっきり開け放たれた。
「ほら、走るとあぶ……」
「…………」
狭いお風呂。狭いといっても数人は入れるのだが、固まる3人。
別に今の時代おっぱいを見た事がない高校生など居ない。
携帯やパソコンでそこらに見るきかいはあるのだが、こう生でみるのは別問題で。
俺の目の前には小さな体に富士山をもった女の子と、細身な体に綺麗な丘をもった女の子が映ってる。
姉妹なので恥ずかしくないのかタオルなどは一切つけていない。
「やぁ」
気が動転して挨拶をする俺。何か『やぁ』なのか俺自身わかってない。
それに対し別に隠すような事もせず、俺の事を見つめてくる二人。
「ん~こういう世界で生きている分、裸体見られても騒がないけど。どうする?一緒に入る?」
「知らない人間でもないし、北の魔女は情に熱いのよ」
「……とっきー……おおきい……」
叫ぶでもなく、微笑んでるわけでも、普通に聴いてくるエイミー。
ああ、そんなよって来ると見える。丘から下って密林地帯まで見えてしまう。
ベスにいたっては湯船を覗き込んでるし。
十七才健全男子。いきなり予想外の反応に、脳がパンクする。
女の子からお風呂誘われる事がない。
「ソコノ、オケデ、ナグッテ、キゼツサセテクダサイ」
「ん、わかった」
素早くオケをとりエイミーに渡すベス。
フルスイングでオケを振るうエイミー。
ああ、エイミーそんな姿で腕を動かすと丘がゆれてる。
薄れ逝く意識の中で、この後どうやって運んでもらうんだっけと思いつつ、7日目の最後の夜は終ろうとしていた。




