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拝啓 答え のち ○○

 人は何故山に登るのだろう、そこに山があるからだ。

 かの有名な登山家ジョージ・マロリーの名言。

 数々のゲームや漫画などで間違った場面で使われる言葉。

 時貞は思う、今がその間違えた使い方じゃないだろうか。

 そう全ては、エイミーのお風呂を覗くチャンスじゃないかと。

 ベスの大きい山は犯罪でも、エイミーの小高い山なら犯罪じゃないじゃないか?

 扉に耳を当てて済ましてみる。

 台所のほうではなにやらトントンと音が聞こえる、反対のほうでは鼻歌が聞こえる。

 帰るにしても、残るにしてもこんなチャンスはめったに無い。

 いざ突貫!お父さん行ってきます!

 エイミーなら『もうときさだくんのえっちぃ~』って許してくれるはず。

 ドアのぶを思いっきり掴む

 

 『ガッ!』

 

 …………

 あの魔女!鍵かけていきやかった!

 

 しくしくと扉の前で泣いていると、突然扉が開いた。

 

「あら、何のた打ち回ってるのよ」


 おでこを抑えながらゴロゴロ回る俺を見ながらエイミーが言う。

「いや、ばんでもばい」

「そう?まぁいいけど。ご飯にしましょ?」


 ふと声のほうをみると、そこには美……いや女の子が立っていた。

 心の声が聞こえたのか?ちょっと睨んでくるエイミー。

 

 お風呂上りの良い匂いが部屋に充満する。

 身長は俺より少し小さめ。160cmって所か?

 顔は思っていたよりも若い。クラスメートに似た子がいたかな

 髪はベスとちがって腰までの黒い髪。目は猫の時と同じ金色の瞳。

 自称小高い丘は妹に負けるも、立派な丘だ。

 黒い薄着なはずなのに頂点が見えないのはブラでもあるのだろうか。


 丘の頂点を探していたら、本格的に睨んできた。

「えっちなのはいいけど、また閉じ込めてもらうよ?」

 ふと我に返る俺。

「スミマセン、タベマス」


 エイミーの後に続いてドアを開けて右へ向かう。

 食堂のドアの前に、ふと左を見るとお風呂が見える。

 何気ない視線の先に小さな布が干してある。

 神様ありがとう。心のアルバムに写真をとって食堂へ向かう俺。


 食堂ではベスがもう、食器を並べてる。

 食器に料理を載せながらエイミーが喋る

「今日の料理は赤魚とホワイトスープとパン。質素かもしれないけど私達は普通なので我慢してね」

「お代わりは沢山あるから」

「……たくさんある……」

 

 この蛍光色の赤色の魚はさっき見た奴かな、色の割りに美味しい。

 タラを食べてるような感じだ、このパンも少し固めなんだけど、ホワイトスープと一緒に食べると柔らかくて旨い。

 アルプスの少女になった気分で晩御飯を食べる俺。

 それを見つめるニコニコ顔のエイミー。空になった器をそっとお代わりをいれてくれるベス。


 一家団欒ってこういうことを言うんだろうな~

 

「どどろでさ~」

「食べてから喋りなさいよ」 

「ん、ところでさ~」

「なーに?」

「ここには二人で住んでるの?」

「そ~よ。可愛いからっておそっちゃだめよ」

「鍵かけるくせに」

「もちろん、鍵をかけないとお風呂を覗きに繰る様な狼さんに可愛い可愛い姉妹が食べられちゃうからね」

 

 あ、さっきのバレテル、話を変えなくては。

 

「あ、そうださっきの子供たちは?」

「……近所の子……」

「ああ、あの子たちね、村の子供よ。子によっては両親がいなかったりするんだけど、自分で獲物を取れるようにするのが目的」

「私の事を先生って呼んでるけど、私は基礎を教えてるだけよ。それに獲物以外にも自分自身を守るすべね」

「……ねーさん……本当は私より強い……」

「んーベスは本当可愛い」

   

 重い話なのにエミリーの話し片がうまくてすんなり心に通る。

 特番でみる海外の子供たちと姿がかぶる、ノホホンと暮らしてた自分が自己嫌悪になりそうになる。


「そこ、深くは考えない。人には人の行き方があるのよ」


 その目は優しく包み込むような微笑みで答えてくれるエイミー。


「さ、沢山食べたと思うし今日はお開き。私たちは左の扉。トッキーは右の扉、窓は開けておくけど外には出れないわよ」

「トイレはお風呂場の横。ベッドは好きに使って~っても生臭くしたらダメよ」

「しないよ!」

「……生臭い……?」


 露骨なセクハラで俺が赤面するのをみて笑うエイミー。

 よくわかってないベスを尻目にあてがわれた部屋に向かう俺。


 部屋に入るとベッドと椅子とテーブル、それに大きな窓が開いている。

 転移してからかなりの時間がたったのか空には星が出始めてる


「この世界にも星はあるのか…、あ。太陽もあるのかな。月はまだみえないなー」

「あの星のどれかか地球かもしれないのか…」


 一人になると寂しく一人事をつぶやく。

 窓の外に首を出そうとするも見えないガラスに遮られ首が出ない。

 取りあえずベッドに座り横になる。

 枕の匂いを嗅いでみるも無臭。

 ロクに女の子と接した事の無い俺にも優しくしてくれる姉妹

 半日過ごしただけで彼女達の事が少し好きになるも、帰りたいと思う気持ち。

 

「だーーー! もう寝よう!二人とは住む世界が違う。一生もてないかも知れないけど帰ろう…」

 

 別にもててるわけでもないけど、女の子に優しくされると、そう思い込んでしまう。

 ごそごそと布団に潜り込む、ふと携帯を見るとこちらに来てから8時間。深夜2時、流石に眠い。

 

 コンコン。コンコンコン。ガチャ。カッコーン。


 何か硬い物で頭を叩かれ飛び起きる。

 

「いったああああ」

「はい、おはよう。気持ちい朝ね」

「ノックで起きないから部屋に入らせてもらったわよ」

「あ、はい…」


 寝起きで頭が回らないが、横のエイミーを見ると夢じゃなかったんだなと思い出す。

 今日は残るか帰るかで返答しないといけない。


「気持ちは決まった?」


 エイミーが聞いてくる。

 

「うん。一応ね」

「ここで言ったほうがいいの?」

 

「いえ、どの部屋でもいいんだけど、魔方陣を書いて、対となる書類があるからそれにベスがサインをするのよ。残るのなら、その場で住民登録と、帰る、にサインをするとトッキーが転移する前の場所に戻るわね」

「一度登録されると解約まで大変だからそのように」

「そんな大変なのか」

「そりゃ、ちょっと魔力持った人がポンポン転移で飛ばしたら人が居なくなっちゃうじゃないよ」

 微笑ながら説明してくれるエイミー。俺が帰るってのが解かっているかのように見つめてくれる。


「せんせーおはようございます」

「おねーちゃんせんせいおはよー」

「げ、あのおっさんまだ居る。ここに住むの?」 


 げ、って子供に言われると本気でへこみそう。

 は~い、おはようと返事をするエイミーは笑っている

 

「おじさんはこれから試練だからねー静にしてねー」

「はーい」

「それじゃ早速で悪いけど、気持ちも決まったみたいだしベス呼んじゃうね」

「この部屋でしようと思うから顔でも洗ってきたら?」


 部屋から出て顔を洗いに行く。

 顔を洗っていると早速子供達の稽古の音が聞こえる。

 部屋に戻ると既に魔法陣が書き込んである。


「……おはよう……」

「おはよう、ベス昨日はありがとう」


 餓鬼…もといお子様達が窓から覗いてくる。

 何人かの子供は興味ないのか昨日見たときと変わらず訓練をしている。


「それじゃ、答えは決まってると思うけど、そこの魔方陣の真ん中に立って」

「おう! ここでいい?」

「威勢がいいんだか、悪いんだか…」

「やっぱ…答えは?」

「うん」

「俺、急にこんな世界にきて何も知らないで居たら死んでたと思うし、助けてくれた事感謝してる」

「あ、あとベスのご飯美味しかった」

「あ……あと」


 手をかざして言葉を遮るエイミー。書類とこっちを見ながらうなずくベス。

 

「戻るのならこちらの思い出は少ないほうが良いわ」

「公言してもいいけど、どうせ誰に言っても信じて貰えないと思うからほどほどにね」


 エイミーが立ちなおして良くわからない呪文みたいなのを唱える。

 俺の周りの魔方陣が白から青に変わっていく。

  

「魔女、エイミーとベスの姉妹が汝に問う」

「汝、我が世界へ誘う者か?」


 その言葉とともに魔方陣の色が変わっていく。

 エイミーの顔はとても美しく見えたし、ベスは震えながら書類の上でペンを握っている。

 俺は微笑みながら答えを言おうとした。


「帰りた…」

 

 ビュン!

 鼻筋を掠めて壁に刺さる物に一瞬目が行った!

 

「クナイ?」


 ベスが書類にマルを付ける。驚いた顔のエイミー。

 虹色から白色に戻る魔法陣


「せんせー しゅりけん飛んでったー」


 窓から顔出す子供。


 こうして俺の異世界生活は2日目に入った。

  

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