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拝啓 騎士

「て~~~~~~っ」 

 俺の叫びが聞こえたのか、目の前にはアルム爺さんが立っていた。

「ほっほっほ、気分はどうじゃえ」

「気分っても急に石にしようとするんだもん。他に未来に行く方法はないのかよ」

「未来のワシが方法を書かなかったのは、ちょっとしたイタズラ心じゃよ」

「はぁ」

 体を動かしながら会話をする。う~ん関節が痛い。

「んで、他に帰る方法は?」

「ワシの顔を見てもわからんかのー。ここは既にお前さんが最初に来た次代じゃよ」

 アルム爺さんの顔をマジマジとみる。ぜんっぜん代わってない。 

「そうだエイミーは?会いに行きたいんだけど」

「可愛い孫娘を置いて帰るような奴に場所を教えてもな~」

 甘えた声でくねくねうごいてる。きもい。

「そこを何とか!ほら、俺ももう帰りたいとは思わないし。そうだ、俺もそこそこ強くなったんだし出来る事は手伝うし」

 両手を合わせて拝み倒す。土下座か土下座すればいいのか?

「お主、まさかここまで色々してもらって何もしない気だったのかや?」

 アルム爺さんの目が光って見える。

 俺はというと既に土下座をしている。

「ここにくる途中で馬車が襲われたのは覚えておるか?あの荷物の中身は拳銃の製造方法などじゃ」

「去年の夏にな、前回の戦乱があるじゃろ、首謀者が釈放されたんじゃ」

「大人しく監視下の元暮らしていればよかったんだんじゃが、馬車を襲った奴から奴の名が出た」

 前回というと俺が経験してきた事件だろう。

 かばっと体を起してアルム爺さんを見る。

「あの時に死んたんじゃ」

「街に火の手が上がった時に真っ先に逃げたのを見つけ出して捕まえた」

「死刑にしなかったんですか……?あんなに人が死んだのに」

「首謀者はアイツだが、最初に街に火を放ったのは違う奴、モンスターも召喚した奴も違う奴じゃ。それに、気分の問題で殺していたら前と何も変わらん」

「娘夫婦は平等を目指していたからの」

 俺の頭の中にも二人の想いを思い出す。

「しかし。問題もおこる。あの時に始末しなかった代わりにより多くの血が流されてるのも事実じゃ」

 俺の中では数日前に見た景色が蘇る。

 アルム爺さんの目が光る。静に喋っていたのだが大きく息を吸う。

「今の協会は平和ボケをしている奴らで戦えるのが少ない、余分な戦力がないんじゃ」

「奴は……ラズカン=ゼノウは力が、いや自分が支配する時代を作ろうとしている。どうじゃ助けてくれるかな?」

 何処までも選択肢をくれる人達ばっかりだ。ここまで言われて『いいえ』なんて選べるわけがないじゃないか。

 俺はこの世界で初めて頼りにされ、『騎士』になったのであった。

 アルム爺さんと並んで外に出るべく長い廊下を歩く。

「可愛い孫娘にも任務を渡してある。お主はこの街の月の丘亭という宿に他のメンバーがおるから合流してくれ」

「このコインを店主に渡せば部屋を教えてくれるはずだ」

 アルム爺さんの似顔絵が入った金貨を渡される。

「お主、いま趣味わるっておもったじゃろか?」

「イイエ」

 館からでると日の光がまぶしい。

「ワシはお主達が動きやすいように手配をする。あとはたんじゃぞ」

「領主様のお心のままに」

 芝居かかって敬礼してみせる。ニカっと笑い馬で走っていってしまった。

「俺も仕事して速くエイミーの所に帰りますか」

 力があるのが嬉しいのじゃなく、頼りにされてるのが嬉しい。

 頼りにされるのには、力がないとダメなんだけど。

 1階がレストラン2階が宿になってる月の丘亭のドアを開ける。

「いらっしゃーい」

 元気な女性の声が響く。

「何め……あーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーー」

 俺を指を刺して悲鳴を上げる。周りのお客も俺のほうを見る。

「なになに?」

 俺は後ろを振り返るも誰も居ない。俺に指差してる。

「あの時のお兄さん!」

 女性の知り合いとわかったのだろう、回りの客も俺に興味を無くす。

 女性が走ってくる。

「お兄さん以前。タマツナの食堂にきた兄さんだろ?ほら……馬でムルドンに向かった。私だよ。あの小さな少女ナンだよ」

 語尾は少し涙声になってる。

「あの時の!」

「あの時と姿変わらないからさ、幽霊かと思ったよ。よかった生きていたんだね」

 俺の為に泣いてくれる。

「えっと、ナンは変わったね」

 赤毛の髪を後ろでお団子にし色っぽい匂いもする。

「立ち話わるかったね、生きて会えたんだ。お父さんも喜ぶよカウンターにおいでおいで、お金の心配なんてしなくていいからさ」

 他のお客に聞こえないように配慮してくれてる。

「お父さん~ちょっと~」

「店で騒ぐなっていっただろ」

 カウンターの奥から懐かしい親父の顔が見える。少し老けたかな。

「お前は……よし、腕によりをかけて作ってやるからまってろ」

 俺の顔はそんな特徴的だったのだろうか?

 俺の顔を見たとたんに厨房に引っ込んでしまった。

 あのあと何処行っていたなど質問攻めにあったが『記憶が数年抜けてるんだ』で誤魔化した。

 ナンは、俺が歳を取ったように見えないのをみて。どんな美容なのかをしつこく聴いてきた。

「いやー食べた食べた」

 酒は飲まなかったか、肉や魚。果物までご馳走になった。

「俺こんなにしてもらっていいのかな?親父さんってここの店主?」

 少し探りながら親父に聞いてみる。

「おう、あれを経験して生きているんだ。神様もこれぐらいは許してくれるさ。職探しなら雇ってやるぞ」

 よし、店主だ。

「あの時の酒の代金受け取ってくれるかな」

 そっと親父にアルム印の金貨を握らせる。

「おめえ……」

 親父の目が開く。

「なになにどーしたのー?」

 注文を取りにいっていたナンが戻る。

「なーに、この兄ちゃんがここに来たのは待ち合わせの奴が居たって話しだ。宿泊代金を貰った所だ」

「ふーん。サービスすればいいのに」

「宿がつぶれちまうわ、兄ちゃん。216号に行け」

 娘に部屋番を聞こえないように喋る。 

「ほれ、お客だ。注文とってこい!」

「は~い」

 階段を登り言われた部屋を目指す。

 廊下を歩くと声が聞こえる。

「だいだいねーお爺様もチームに増員するっていうけど私達で十分と思うよ」

「ちげえねえ」

「そうは言うが戦力が増えるのは良いことだ」

「でもよ!使えないのが来たらどーすんのよ。尻拭いでこっちが危険になるわ」

「会長が推薦するんだ、弱い奴ではあるまい」

「お姫様には白馬の王子様じゃないとダメだってか」

「もーそうじゃ」

 俺が部屋の前に来ると、笑い声と会話が突然止まる。

 あ、やばい。ドアの向こうから殺気が見える。

 勇気をもってドアのノックしようとする。

 俺がノックをする前に突然ドアが開き部屋に引き込まれ足払いをかけられる。

 俺に馬乗りのなった女の子が驚いた顔をしている。

 筋肉質の男は大剣を構えてる。

「やぁ……ただいま」

 窓際に立っていたロンゲの眼鏡の男は笑いを堪えてる。

「お姫様、白馬の王子様が来たじゃないか」

「お……おかえ……り」

 呆然とするお姫様は俺に答えてくれた。

 


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