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拝啓 日常

 何時ものように基礎体力の運動後、俺は斉藤さんに連れられて山の中にいた。

「僕の修行はいたって簡単、君にも直ぐできるよ」

 斉藤さんの腰から出した物は案の定、拳銃だった。

「これって、銃ですよね。それもマグナム式?あってます?」

「そうそう、僕がいた頃にゾンビを打つゲームがあって、ロケットランチャーの次に強かったのかな」

「少し血をくれるかな」

 針で小さな穴を指に開ける。

「これで、OK、はい。握って」

「あいにく僕は火薬の作り方とかは解からなかったからね、でも銃の基本的な動作は何となく知ってた」

「グリップを引いて狙いをつけて……」

 説明しながら俺の前で構えてくれる。

「そして、打つ」

 目の前の銃から閃光が走る、そして遥か先にある的に当る。

「凄い……」

「火薬の代わりに魔法を使っているんだ。僕とミラーの合作って所かな」

「人には過ぎた力とは思うけね。でも、これが無いと街を守れないのも事実なんだよ」

「やっと、弾が量産できるようになったんだよ。ガンガン使ってくれ」

「ガンガンって言われても……」

「良いから良いから」

 訓練は剣の修行よりは楽だった。でも、剣よりも一撃が重いので緊張はする。

「銃は後方からしとめる物だから接近戦には弱いし弾数も限られてくる」

「相手の戦意を落とすなら手首を落すように、多人数なら顔かな多分剣でも一緒と思う」

「確実にっていうなら心臓をっと」

 手本を見せながら教えてくれる。

「事件とかってないんですか?誰でも打てるって」

「アメリカの銃社会って知ってるかい」

 突然アメリカの話題を振られても困るので答えに詰る

「誰でも打てるからって常に打ち合いしてるわけじゃでしょ」

「はぁ、イメージ的に常にしてた気がするんですけど」

「そっか、一応最初に血で契約つけたよね、あれで本人以外が打てないようになってるんだよ」

 微笑むも少し悲しそうな顔になる。

「それでも、悲劇は起こる。それをどうカバーするかだ」

「は~い、難しい話は終ったかしら~」

 フライパンにオタマを叩きながら山の中を登ってくるミラー。

 昼食は俺を襲った巨大クマをステーキした物に特製スープで山の中で食べた。

 

「さてさて~、お昼からは私のでばんですね」

 のんびりした空気も引き締まってくる。何処から出したのか既に目の前には二本のロングソードが地面に刺さってる。

「ん~折角銃の練習もしたのなら、それも使いなさい」

 口に指を当てて考えるように喋るミラー。

「いや、流石にダメでしょ」

 何を言ってるんだこの奥様は死にたいのか。

「あら、戦場にダメもなにもないわ。生き残ればいいのよ、そ・れ・に」

「それに?」

「ミラー先生は、こんな所では死にません」

 断言するミラーに思わずふきだす。

「あらあら、笑っちゃって。そうねぇ~、そうだ!私が今日勝ったら一晩良いことしましょう。魔女の名に誓うわ」

 旦那の居る前で不穏な事を喋ってくる。

「それって俺が技と負けたらどーすんだよ、それに勝てねーだろ。そもそも魔女って……」

 俺が喋り終わる前に話しをかぶせて来る。 

「そうでもないわよ、後ろ」

「へ?」

 振り向いた瞬間に足元に銃弾が放たれる。

「時貞君、死ぬ気で戦いなさい」

「それとも君は旦那が居る前で妻を抱きたいのかね?」

 笑顔と言葉が合ってない。分かった事は手を抜いたら旦那に殺されて、手を抜かないと奥さんに殺されると言う事だけだ。

「固まっちゃだめよ~」

「しょうがない。おまけしてあげる。勝たなくても私を納得させればいいの」

「それじゃ行くわよ!」

 声と共に剣を抜き迫ってくる。

 反射的に銃を迫ってくるミラーの足元へ撃つ。

「ちゃんと狙いなさい!」

 それでも一応引いてくれるミラーに追撃するように撃ってみる。

 今度は体を狙ってみたが、剣で起動を外されてしまう。

 その隙に剣を取りにいったのだか。

「チェックメイト」

 剣を掴んだときにはミラーが俺の前に立っていた。

 終った……俺は斉藤さんに殺される。

 チラリとミラーを見てみる。

「私はまだ納得してないわよ?それとも良い子良い子される?」

 どうやら、まだ殺されなくていいようだ。

「やります……」

 全戦全敗な俺だったのだか、少しずつ負けるスピードが遅くなってきた。

 ミラーから『根性だけはいいので合格点をあげましょう』その言葉とともに開放されたときは既に辺りは暗闇だった。

 因みに斉藤さんは途中で家に帰り夕飯を作ってる。結果みないのかよ。

  

 夕食はお昼と同じステーキ。台所から斉藤さんの鼻歌が聞こえる。重すぎませんか?

 顔に出ていたのだろう、ミラーが答える。

「もう、お昼御飯せ~っかく作ったのに吐いちゃったじゃない。それに筋肉をつけるのにもっと食べないと」

 そりゃアレだけしごかれれば吐く。

 料理を作りながら声がかかる。

「そうだ、時貞君。ミラーの実家から湿布が届いたんだ、今日から使うといい」

「湿布ですか?有難うございます」

「もう、湿布ってそんな安いのじゃないのよ。魔力を使って限界値を上げる非売品よ」

「限界値ですか?」 

「どうやらそうらしい」

 台所から鉄板をもった斉藤さんが出てくる。

「内にある魔力を使って見た目以上に力を引き出す。もっとも魔力のない僕には疲労が回復する湿布さ」

「それを使っていくとね、最終的には、その人が持つ力を100%引き出すと言われてるのよ」

「100%ですか」

「そう、でも普通はそこでお終い」

「お終い? まぁそうですよね100%なんだから」

 にへらと笑うミラー。ちょっと不気味だ。

「じつわね、100%じゃなかったのよ。私の推測ではせいぜい15%ぐらいね。現に私がそれを使い終わったのは8歳の頃だもん、あの頃の私と今じゃ天と地よ。だから剣術って面白いわ」

 途中から眼がお星様になってる。

「そんな高価そうな物、俺が使っていいんでしょうか?」

 素朴な疑問に二人とも笑う。

「勿論よ。生きる為にには何でも使いなさい」

「それだけ僕らの信頼があるって事だよ、さぁ冷めないうちに食べてくれ自慢の料理だ」


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